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・滑稽な男たちと私(1~20話) ・ふさわしい不倫(1~30話) 書き上げました!読ん…

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・滑稽な男たちと私(1~20話) ・ふさわしい不倫(1~30話) 書き上げました!読んでみてね! 滑稽な男たちが教えてくれる40代独身・子なし女性の恋愛論。

最近の記事

魔女の薬局(2)~卒業

大きな通りを若い女の子たちが、跳ねるように歩いていく。 明るく大きな笑い声にビックリして、思わずうつむいた。 ふぅ、と小さなため息をつく。 今日で長い長い高校生活が終わった。 卒業式のあと、みんなはパーティに出かけるようだ。 彼女たちの後ろ姿を横目でそっと見る。 この日のために準備した明るいブルーやピンクのドレスが可愛い。 フワフワとした透ける素材のスカートが、蝶々の羽みたいに揺れている。 通りの先にある白いレンガの建物から、ピアノ、ギター、ドラムなどの不規則な音楽

    • 魔女の薬局(1)~赤いアザと私

      私の左頬には、赤く、大きなアザがある。 全体はボコボコと盛り上がり、表面はザラザラとしていて、皮膚が細かく剥がれ落ちたりするのだ。 枕に白い粉がつくため、毎朝、枕カバーを換えるのが日課だ。だから、私は枕カバーを20枚も持っている。 幸いなことに、そのアザに痛みはないが、しばしば突っ張りを感じる。 保湿クリームを塗れば、一時的に突っ張りは治まるのだが、ぐちゅぐちゅとしてきて不快だ。 そして、保湿クリームを塗ることをやめれば、前よりも強く突っ張るような気がする。 そのアザ

      • 43歳の遺書(1)

        死にたいと思うことが、たびたびあります。 15歳の頃から、何のために生きているのかわからないという気持ちがありました。 でも、そんなに悪い日々ではなかったし、まだ若く未経験に溢れていたので、将来に希望があったというか、当時私は新潟県の田舎に住んでいたので、東京で暮らすことを楽しみにしていたと思います。 私は毒親育ちではありません。 自分で言うのもあれですが、私の両親はとても良い人たちです。 YouTubeで毒親に育てられた人のインタビューをよく見かけるようになりました。

        • あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(4)

          「ごめん、そうだよね。 私、ひどいよね。」 嘉久は私と顔を合わせず、ソファーに座ってしまった。 私だって夕飯を食べていない。 理久にご飯を食べさせ、お風呂に入れて、歯みがきして、寝かしつけたら一緒に寝落ちしていた。 嘉久と夕飯を一緒に食べようと思っていたけど、疲れて寝てしまったんだ。 それって、そんなにダメなことなの? ソファーに腰を下ろし、テレビをつけた嘉久の背中からピリピリとした空気が出ている。 私が悪いのか分からないけど、嘉久を怒らせたことは悲しい。 だから

        魔女の薬局(2)~卒業

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(3)

          嘉久は飲料メーカーの営業部にいた。もともと商品開発部を希望して入社していて、食べることや飲むことに興味があった。 いつか営業部から商品開発部に異動したいとよく話していた。 結婚する前は、仕事の勉強にもなるからと言って、嘉久はよく外食デートに誘ってくれた。外食デートは一日に2、3件お店をはしごすることもある。 安くて人気のあるお店だけでなく、焼肉やお鮨の高級店に行くことも多かったため、外食代は月15万を超えることもあった。 私は薬剤師で、妊娠を機に退職したけど、当時は嘉久と

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(3)

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(2)

          3年後、理久の見た目はすっかり人間の可愛い子どもに成長していた。 理久とはほぼ毎日、近所の公園に出かけた。理久は一人で公園まで、ものすごいスピードで走って行ってしまう。理久は周りの同じ歳の子に比べても異様に足が速かった。私は理久が車に引かれるのではないかと心配で心配で、必死に走って追いかけた。だけど、私はいつも理久を見失った。 公園に着くと理久は突然目の前に現れ、私の手を引いて「一緒に遊ぼーよー!」と大きな声で何度も言う。 私は「少し休ませてね。」と言って、ベンチに腰を下

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(2)

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(1)

          理久は片目をくり抜かれ、所々、毛を焼かれた小さな子猫のようだった。 その顔は透明のプラスチックケースの中で、口を一生懸命開けてはいるけど、まるで綿を噛んでいるように小さな小さな泣き声だった。 超未熟児だった。 先ほど、先生から脳などに障害が残るかもしれないと言われたばかりだ。 喉から胸にかけて小石が降りていくように、痛い。 私が痩せすぎているからだ。 嘉久が「繭は頑張ったんだ。病室に戻って休もう。」と優しく言った。 私は返事をせず、嘉久に肩を抱かれてNICUを出る。

          あの日、私は子ども連れて、逃げて、逃げて、逃げた(1)

          【短編】今夜はオイスター

          大食い系YouTuberぷにこ。 ぷにこが大量の生牡蠣を食べている。 するん、くちゅ、くちゅ、 するん、くちゅ、くちゅ、 大皿に盛った100個はある生牡蠣を一つ一つ箸で上手に掴んで、端から見事に美しく、幸せそうに食べていくのだ。 動画に見入ってしまい、あっという間の7分間だった。 さっそく紹介していた生牡蠣むき身のパック詰めを一つ、通販サイトで購入した。 数日後の土曜日、クール便で生牡蠣のパックが届く。 発泡スチロールの箱の蓋を開けると、中にザクザクと砕いた氷と生牡

          【短編】今夜はオイスター

          ふさわしい不倫(30・最終話)

          大地は弁護士の名刺を置いて部屋を出た。 示談交渉はこの弁護士としなければいけないのね。 これじゃ、まるで、私たちは敵みたいだよ。 加害者と被害者。 私は弁護士事務所に勤務しているから、弁護士に依頼できない。 弁護士業界は狭いもので、守秘義務があると言っても、どこでどう伝わるか分からない。 示談金の相場はいくらなんだろう。 手術代は払ってくれたから、今後入院、退院後の通院費、仕事を休んだ分の給与、精神的苦痛、後遺症あたりだろうか。 感覚的には高めで500万、低めで200

          ふさわしい不倫(30・最終話)

          ふさわしい不倫(29)

          翌朝、上司にラインをした。 突然入院することになって、大事には至らず2週間後には退院できます。ご迷惑をおかけして申し訳ございません。今はバタバタしていて、詳しくは改めて電話しますと。 勤務先では、コロナのピーク時には、部署の事務8人中、常に1、2人休んでいたが、仕事はどうにか回っていた。小さい子どもを持つ母親も多く、日頃から子どもの風邪などで頻繁に休んでいる人もいて、ありがたいことに休みやすい環境だ。 そんなに迷惑はかからないけど、ある程度詳しく話さなければいけないよね。

          ふさわしい不倫(29)

          ふさわしい不倫(28)

          「あんたさ、増田大地と不倫してんだろ。 クズ女が。 死ねよ。」 青年が私の左腹を刺した。 恐怖で頭が真っ白になって、 目の前は真っ暗で、 痛い、 怖い、 痛い、 痛いよ、 怖い… 助けて… 目を覚ますと病院のベッドに寝ていた。 白い天井。 部屋の右の角、カーテン、窓の枠、 少しずつ首を傾けると、大地がいた。 こんな顔だったっけ。 目の下に深いシワがある。 「良かった。 目が覚めて。」 「私、死んでない。」 「うん。」 「男の子…」 「ごめんね。 あれは俺

          ふさわしい不倫(28)

          ふさわしい不倫(27)

          美瑛、富良野の2泊3日旅行は草原をドライブして、夜は森の中のホテルでゆっくり過ごした。 あゆみも最近気になる男性がいることや息子の将来のこと、老後のことなど、思いつく限りに話してくれた。 北海道の自然も良かったけど、何でも話せる友達と旅ができたことが本当に良かった。 千歳空港でたっぷりお土産を買って、東京駅であゆみと別れた。 次に会うのは、半年か、一年後かもしれない。 中央線に乗ると、平日の昼は空いていて座れた。 YouTubeで適当にニュースを観る。 ひき逃げ、強盗、詐

          ふさわしい不倫(27)

          ふさわしい不倫(26)

          「あゆみと出会う前だよ。 小学校3年生のときのクラスメイトで、嫌いな子がいたんだよ。 表向きは仲良くしてたよ。その子のお家にも泊まりに行ったこともあるし。 その子って、すごい可愛い顔してるって感じでもないけど、明るくて、元気で、笑顔が可愛い。 転校生の私を気に掛けてくれたみたいで、その子から声掛けてきて、仲良くなったよ。 でも、嫉妬っていうのかな。私、転勤族だったから、幼なじみっていなくて。 その子には幼なじみの男の子がいたの。 私、その男の子のことけっこう好きで。 だから、

          ふさわしい不倫(26)

          ふさわしい不倫(25)

          美瑛に着いた。 あゆみと縦に並んで、白樺の小道を散歩する。すると、その先の森の中に濃い緑のペンキで塗られた小屋があった。少し空いた窓からスパイスで煮込んだような匂いがする。 小屋の前には、ダイニングテーブルが4つあり、木漏れ日が差すテーブルの上には、枯れ葉が数枚落ちていて、小さな花瓶に小さな赤いバラが生けてあった。 白雪姫と7人の小人が食事を楽しむような雰囲気だ。 なんて素敵な場所なんだろう。 世の中の人は素敵な場所を見つけるのがうまい。 もちろん予約は必須だった。

          ふさわしい不倫(25)

          ふさわしい不倫(24)

          つまり、私は恋愛に安らぎを求めているのに、一緒にいたい男性はクズ男。 なぜなら、クズ男の前では、必死で隠している自分のクズ女がバレても許してくそうだから。 「許し」は「安らぎ」なんだ。 今日出会った男と酒を何杯も飲んで、酔っぱって、絡んでみて、人目も気にせずお店でキスをした後、ホテルに行って、その男のエッチがいまいちだったからとラインをブロックしても、許して欲しいのです。 あはは、 私こんな、あばずれだったっけ。 ちがう、ちがう。 ちょっと想像してみただけです。 し

          ふさわしい不倫(24)

          ふさわしい不倫(23)

          秘密や刺激的な体験を共有した相手を好きになっているだけかもしれない。 ジェットコースターに乗ったとき、その恐怖のドキドキと、恋愛のドキドキを混同して、隣に乗った異性を好きになってしまう現象があると聞いたことがある。 大地にも、そういう錯覚を起こしているのかもしれない。 そんな単純なもの? 衝動的な初恋みたい。 40歳にもなってそれはないか。 誠実で優しい人を好きになる人は、恋愛に安らぎを求めていて、 予想外のことをする人を好きになる人は、恋愛に刺激を求めている。 私

          ふさわしい不倫(23)