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魔女の薬局(2)~卒業

大きな通りを若い女の子たちが、跳ねるように歩いていく。
明るく大きな笑い声にビックリして、思わずうつむいた。

ふぅ、と小さなため息をつく。
今日で長い長い高校生活が終わった。

卒業式のあと、みんなはパーティに出かけるようだ。

彼女たちの後ろ姿を横目でそっと見る。

この日のために準備した明るいブルーやピンクのドレスが可愛い。
フワフワとした透ける素材のスカートが、蝶々の羽みたいに揺れている。

通りの先にある白いレンガの建物から、ピアノ、ギター、ドラムなどの不規則な音楽と、花火を打ち上げる音が聞こえてくる。

私はスーパーの帰り道、想像してみる。

大きな部屋の入口には、いくつかテーブルがあるだろう。
サーモンや生ハム、カットフルーツ、フィッシュアンドチップ、フライドポテト。
南国風の盛りつけだ。

バタークリームたっぷりのカップケーキ、チョコクッキー、フレッシュなフルーツジュース、カラフルなカクテル、泡のこぼれたビール。
こんな素晴らしい日に、お酒を飲まない人はいないだろう。

みんな笑顔で、おしゃべりが止まらない。
ピンク色にツヤツヤ光る頬が若いプラムのようだ。

部屋の奥にはステージがあり、バンドの演奏が始まる。
バンドのメンバーが放課後集まって作った、高校生活の思い出が詰まった曲だ。

演奏が終わり、みんなは思いっきり拍手をする。腕を上げて喜んでいる人もいる。

それから、バンドはみんながリクエストした曲を演奏してくれる。

部屋のライトは明るい白から、落ち着いたオレンジに変わるだろう。

約束をした2人は、この日をどんなに待ちわびていただろう。
2人は、はにかみながら手を取り合いダンスをする。
お互いを心の底から愛おしいと思うだろう。

味わうことのない気持ち。

私はこの先、恋愛はできないだろう。

もう何年も前に一人で生きていくと決めていたはずなのに、今日もまだ胸が痛い。


(つづく)



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