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【勝手に読書感想部】地球星人:村田沙耶香

[はじめに]
一部内容にネタバレ含みますので、まだ読んでいない方はご注意ください。


この世の中は生きづらい。

当たり前に勉強して労働し、恋愛して結婚、子供を授かって人口を増やしていく。
社会のシステムの一部になるために作られた「当たり前の幸せ」という価値観に、適応できない人間は迫害され、監視対象となる。
周囲に馴染むために、「宇宙人」であることを悟られないようにするために、大人の言うことに素直に従ったり、友人に合わせて喋り方をトレースしたり、世間を欺く結婚生活をしたり。。。
「なにがあってもいきのびる」ために、「人間生産工場」の片隅で息を潜めて、自分を偽ってなんとか生活している主人公の奈月。

ここまで究極じゃなくても、ちょっとした生きづらさを感じながら暮らしている人はリアルでもたくさんいるんだろうと思います。(私も含め。)
・30歳すぎて独身でいると勝手に心配されたり、人間性に問題があると言われたり。
・結婚していたとしても子供がいないと、質問やお節介な言葉を投げかけられたり。
・定職についていないとヤバいやつだと思われたり。

だけど、こんな当たり前のことに疑問を持っちゃいけない。これ以外の価値観を掲げている人を世間は見過ごさない。
そんな規則正しく道を外すことを許さない世の中に問題提起するような、作品だと感じました。
以前読んだ「コンビニ人間」と概念が通じるものを感じました。コンビニ人間の、さらに振り切って突き詰めたストーリーって感じですかね。

後半は振り切りすぎていて、グロい描写もあって、少し気持ち悪かったですが、あまりに語り口が淡々としているので、この非人道的(地球星人じゃないから当然なんですが)で道徳無視の主人公たちの行動をただただ呆然と見守る構図になっている印象です。
盗みや、殺人、カニバニズム・・・ものすごく残酷なことをしているに、怒りや、悍ましさ、怖さと言った感情が置き去りになるというか・・・。
むしろそれらの行動によって、主人公たちは、世間の洗脳から解き放たれて本来の自分を取り戻していく。
読者もこの「宇宙人」的感覚にじんわり洗脳されていく感じです。こわ!笑

読み終わった後の不快感やモヤモヤは拭えないけど、村田先生特有の中毒性がある。気持ちよく終わらせてくれない感じというか・・・。

普通に生きていたら綺麗なハッピーエンドばっかりじゃないですから、そういうストーリーに味わい深さを感じちゃうのかもしれませんね。


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