ちこっち

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パラレルワールド

9歳か10歳の記憶。 自転車で5分ほどの友達の家に遊びに行った帰りの出来事。 いつも通る人通りの多い道ではなく、なぜか裏道から帰ってみたくなり細い道に入った。その裏道は何度も通ったことがあるので見慣れた景色だった。普通の住宅街だ。 だけど、その日は違和感があった。その違和感の正体がなにか分からないまま、ふとあることに気づいた。家は同じなのだが表札が違うのだ。一軒の家の門柱には『死川』とある。とうてい苗字に使われるはずのない漢字だ。こんな苗字の家なかったよな……。じっと表札を見

    • お腹の中の人

      3歳から5歳くらいまでの記憶だ。 私はよく、自分のお腹の中に住む子と話をしていた。 イマジナリーフレンドとは、少し違うような気がしている。 名前は「びーと」と教えてくれ、男の子っぽかった。子どものような声はしていたが、私よりはるかに物知りで考え方も大人びていた。記憶に残っている出来事では、玄関で祖母が近所のおばさんとの会話のなかで「お言葉に甘えて」という言葉を出した時、私はびーとにその言葉の意味を聞いた。するとびーとは「ありがたい申し出をしてくれて、それを受け入れるときに使う

      • 足音

        人によっては怖いと感じる話かもしれない。 私が幼稚園児だったときの記憶。 夜は2階の子供部屋ではなく、両親と一緒に1階の部屋で寝ることが多かった。当時私はまだおねしょをしていたので、母が私を夜中に起こしやすかったためだと思う。 父はいつもラジオを聴きながら推理小説や週刊誌を読み、そのうち、うとうとし始める。 台所の片付けを終えた母が入ってくる。ラジオを消す。 やがて2人とも寝息をたてる。 すると外から足音が聞こえてくる。1人の足音ではなかった。2~3人、もっとかもしれない

        • 神社

          三歳か四歳の頃だったか。 祖母と一緒に近所の神社に行ったときのことだ。 そこには大きなクスノキがあり、上の方には大人でも一人入れそうな穴が開いていた。 わたしは何気なくそのクスノキを見上げた。 すると、深い緑色をした大蛇がゆっくりとクスノキを登っていた。 祖母はわたしのすぐ近くで銀杏を拾っていた。でも、なぜか私は祖母に大蛇のことを知らせてはいけない気がしたから、ただじっと大蛇を見ていた。 大蛇の頭はすでに穴の中にあったが、胴体はまだまだ木の途中だった。 やがて、穴の中にすべて

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