土地遣い 4 泥棒

 シェパードと車庫のある彫山家の土地では数多くの事件、事故が起きているが初めに発生したのは窃盗事件だった。
 この事件については、父がよく知っていた。
 「最初に起こったのは、今から5年くれぇ前に車庫のガラス割らっち、車庫の中さ泥棒入らっちゃだ。泥棒はそん時、エリさ車のガラス割っち、中すっちゃかめっちゃかに荒らしでからバッグだか盗んでったんだど」
 あの土地が現在の形に整備されたのは五年ほど前。
 この時系列については後に整理するが、最初の窃盗はそれから少しした後だという。泥棒はまず車庫の南側のガラスを割って車庫内に侵入し、車庫の中で最も南側に駐車していたエリさんの車の助手席窓ガラスを割って鍵を開け、中を物色した後にバッグを盗み、逃走した。
 翌日、彫山家の人々が発見し、警察に届け出た。
 父は当時まだ退職しておらず地元で仕事をしていたため、話が住民たちの噂話とエリさんから直接の話と両方が耳に入っていた。

 「そんじ、その後もっかい泥棒入らっちゃんだ。次はシェパードのガラス割って入らっちゃんだ。これは割りど最近だな。トラクター突っ込んだ後だがんな。正面のガラス割らっち、また中荒さっちゃ後さ、レジ持ってったんだな」
 正面のガラスを割って侵入した泥棒は、中を物色してレジスターごと持ち去ったという。
 実は、この時レジスターを持ち去った方の泥棒は既に逮捕されている。
 山形県において別件の窃盗事件で逮捕された男が、余罪としてシェパードに侵入してレジスターを持ち去った事を認めたため、彫山家に連絡が入り、事情を聴かれた、とエリさんが父に話している。
 しかし、一件目の車上狙い事件については否認しており、警察から手口から見ても同一人物とは思えないため、違う人物が犯人であろうと連絡があったとも話している。

 「エリがよ、俺さ『おかしくないですか、いくら山の方とはいえ表通りに面したところに二回も泥棒入られるなんて、ほかにお金持ってそうなところとか、入りやすそうな見つかりにくそうなところ一杯あるのに、泥棒にあってるのウチのあそこだけなんですよ』つってたんだ。俺もちょっとおかしいなとは思う」
 そう父は話していた。
 たしかに、現場に行った僕が見てもあそこは非常に目立つ。
 また、民家からも近いためはっきり言ってよくあんなところのガラスを割ったな、と思う。
 ここは駐在所からもほど近いし、見通しが良すぎる。
 泥棒に向いている場所とはとても思えない。
 二件目の方の犯人は、エリさんが父に「全国渡り歩いて泥棒してた人なんですって」と話している。
 広域で窃盗を行っていることから、いわゆるプロの泥棒なのだろうなと思うが、何故そこまでの泥棒がこれほど盗みにくい場所に目を付けたのだろうか。
 素人目にはわからない事情があるのかもしれないが、何故こんなところが二回も狙われることになったのか、と疑問に思うのが正直なところである。

 最初の事件、そして二回目の窃盗事件についてはこのような状況で発生していた。

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