煙鳥

人から聞き集めた話を、実話怪談としてまとめて語ったり、書いたりしています。

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マガジン

  • 実話怪談【土地遣い】

    彫山家の飛び地となっている土地に、車庫と美容室がある。 この土地は侵入窃盗、事故死、交通事故、放火等をわずか5年の間に繰り返す。 この土地は一体何なのか。 実際の現場に赴き、住民や関係者から聞いた話をまとめた実話怪談。

  • 実話怪談【鏡柱】

    怪談という点と点を結んだ線。 その線上に浮かんだ巨大な影。 一つ一つは全く縁もゆかりもない人々の体験が、十年以上の時を超えて一つの像を結んでいく。 「柱に鏡を埋め込んだという話を聞いた事はありますか?」

  • 実話怪談【足を食べる女】

    ある日、僕に届いた一通のメッセージから始まる実話怪談。 【今、メッセージを打つ手が震えています。お知恵を貸してください】 これは僕と体験者、そしてある女との数か月間にも及ぶやりとりの記録である。 「私は、あなたみたいになりたい」

最近の記事

土地遣い 9 彫山家

 ※聞き取りの言葉や様子、表現を再現するため、出来る限り原文のままで書いている。聞き取り対象者の言葉なので、方言が多用されているため、単語レベルで違うものにはカタカナで単語を書いた後、括弧内に※書きでその意味を書くことで補正する。  父に彫山家、そしてシェパードと車庫のあった土地にかつて建っていた廃屋について尋ねたところ、彫山家の歴史について語ってくれた。  「彫山さんの今使ってる土地のとこあっぺ、あそごは前違う彫山さんが住んでたんだ、苗字同じなんだげんじょ、今もういねえ

    • 2021年活動報告(アーカイブリンク付き)

      2021年 活動報告 【イベント出演等】 怪談イベント「吉田祭り」出演 怪談イベント「魔怪都市新宿 オカルト&怪談フェス」出演 virtual market5 デフォルトキューブ内にて「怪談✖︎VR」コンテンツ製作、出展 アシタノホラー展3 360°視点怪談映像作品 「InsideOut,OutsideIn」制作、発表 https://www.youtube.com/watch?v=ZkuiKrMNQTA 【怪談提供】 フジファブリック 加藤慎一トークイベント「wond

      • 【教団三部作】のあとがき

         この実話怪談をどうやって表現するべきか。  僕はこれまで怪談を音声によるインターネット配信で発表してきましたが、とある怪談に触れた時に初めて「これは語りでは全てを表現できない」と思ったのでした。  そこで文章で形にしようと思い、始めたのがnoteだったのです。  この怪談とはnoteによる実話怪談連載の始まり「土地遣い」でした。  土地遣いが僕の想像を超えてTwitterなどSNS上で話題となり、あれよあれよという間にシリーズ累計60万ビューを軽く超え「今週最も読まれた記事

        • 実話怪談「鏡柱」 1 起点A

           ※この話については、場所、人物について仮名や特定を避ける事を目的として多少の虚構を加えている。しかし、それらに差し障りのない部分については全てフィクションではない。  あれは2006年ころだったと思う。  当時大学生だった僕は、友人たちと大学の近くの居酒屋で飲み会をした。  しこたま飲んで、歩いて帰るのがあまりに面倒だった僕は、家が近かった友人とタクシーに乗ることにした。  大学生の身分だったが、アルバイトの給料日を迎えたばかりで財布には余裕があったのだ。  たまにはいい

        土地遣い 9 彫山家

        マガジン

        • 実話怪談【土地遣い】
          16本
        • 実話怪談【鏡柱】
          1本
        • 実話怪談【足を食べる女】
          4本

        記事

          那須塩原のピラミッドで温泉デビューする息子と湯船に浸かってオアシスを考えた話

          那須塩原。 そこに、ピラミッドの中に温泉が存在することを皆様はご存じだろうか。 古代エジプトに伝わるピラミッドパワーなる力を帯びた温泉に体を浸れるのだ。 温泉効能の欄に何と書いてあるのか想像すらつかないであろう。 ご存じない皆様は何を言っているのかさっぱりであろうが、そのとおりなのだ。 これはピラミッドの中で人生初、温泉デビューを果たすことになった息子と湯船でオアシスについて考えたルポである。 2017年、夏。 息子をだっこした妻から「たまにはお洒落なところに行ったり、買い

          那須塩原のピラミッドで温泉デビューする息子と湯船に浸かってオアシスを考えた話

          足を食べる女 4 プレゼント

           2015年8月19日、体験者の方はボイスレコーダーを仕掛けるため、お店へと向かった。  お店を開ける時はフットバス等の準備をするため、開店の三十分くらい前に行く。  お店に近づくと、店の前にすでに誰か立っている。  Hだった。  ボブカットに前とは違うワンピース姿、そしてその手には紙袋を持っている。  何で、こんな早い時間にもういるの……。  普通のお客さんなら絶対にありえない。  まるで私が早く来てボイスレコーダーの仕掛けをしようとしたのを分かっているみたい……。  体験

          足を食べる女 4 プレゼント

          足を食べる女 3 「あしをたべる」考

           体験者の方から話を聞いた後、僕と怪談仲間たちは様々な推理、考察を重ねることになった。  そのメンバーには昔からの怪談仲間であるこたろー、空海、sks、こまつまつこ、その他の仲間たちもいた。  Hは一体何者で何が目的なのか。 「あしをたべる」 「魔女とは違うんですけれど、呪術師になるための修行をしている」  この言葉をはじめ、Hの行動やその他の発言、Hの特徴等について、あの頃の僕らが何を調べ、どうHを考えて行ったのか、追っていこうと思う。  まず「あしを食べる」という行為に

          足を食べる女 3 「あしをたべる」考

          足を食べる女 2 救援

           2015年8月3日。  前回の来店から約一週間後、Hが2度目の来店をした。  最初に来店したときと服が変わっている。  やはり住所不定も言っても路上生活等をしているようではなく、とても綺麗な状態であった。  もう一つ、体験者の方がHについて気付いたことがあった。 「なんだか、前よりも顔色が悪い感じがしたんです。そして、相変わらず体臭が生臭いんですよ」  Hは 「前にマッサージしてもらってすっきりした感じがしました」 と言う。  Hは前回よりも少し、おしゃべりになっていた。

          足を食べる女 2 救援

          足を食べる女 1 発端

           ※この話については、場所、人物について仮名や特定を避ける事を目的として多少の虚構を加えている。しかし、それらに差し障りのない部分については全てフィクションではない。  この話について、僕はいまだに判断ができない。  一体これは怪談であるのか、何だったのかそれすらもわからない。  僕が聴き集めた怪談の中で見ても、相当に特殊な話である。  2015年8月9日18時ちょうど。  僕のところに一つのメッセージが届いた。  送り主は、以前怪談を聞かせていただいた方である。  メッ

          足を食べる女 1 発端

          土地遣い あとがき

           土地遣いを最後までお読み頂き本当にありがとうございました。  最後なので少しだけ自分自身の事について書かせてください。  僕は小さな頃、ドラマXファイルが大好きでモルダーに憧れていました。  僕も大きくなったらモルダーのように真実を求めて世界を揺るがす怪事件を捜査するんだ、と祖母の耕運機に取り付けた荷台で、収穫した夏野菜に埋もれながら思っていました。  何か事件よ起これ!僕が解決してやる!と悶々としている物騒な子供だったんです。  気が付いたら僕はいつの間にか大人になって

          土地遣い あとがき

          土地遣い 最終話 アザミの花

           香山集落での実地取材は丸梅商店への再訪が現時点では最後となった。  その後、僕に娘が5月末に生まれたが、新型コロナウイルスの影響によりいまだに実家に帰ることを見合わせている。  本来であれば実家の家族に娘の顔を見せに行きたいところではあるが、父が基礎疾患を持っていること、祖母が高齢であることから実家に帰るのはいつになるかわからないのが現状であった。  そうこうしているうちに、季節は春になり、気づけば7月になっていた。  あれから、香山へ訪れていない。  しかし、現地には行

          土地遣い 最終話 アザミの花

          土地遣い 14 土地遣い

           色褪せたビニールの暖簾をくぐり、丸梅商店のガラス戸を開ける。  こんにちは、と中にいたサチコばあちゃんにかける声が若干引き攣った。  緊張していることをこの時やっと自覚する。  今までの一件について自分の中で考えた仮説が正しいことを確かめるために、ここへ来たのだ。ここで待っていれば他の老人たちも顔を出す。  仮説を考えたものの、こんな事があるのかという思いもあり相当な数の実話怪談を聞いている僕でもこのようなケースは聞いた事がないため、自分の中で疑っている部分もあったのだと思

          土地遣い 14 土地遣い

          土地遣い 13 地鎮祭、井戸

           電話に出たカンちゃんは驚いていた。  「いきなり、どうした、宗教勧誘じゃねぇべな」  タリサマとなったカンちゃんは笑いながらそう言っていた。  返しが相変わらず上手だなと、となんだか嬉しかった。   「香山のシェパードと車庫建てる時の地鎮祭な、俺も行ってたよ」  やはりカンちゃんは目撃していた。  以前のお守りナイフの件といい、今回もこの男は僕を助けてくれた。  興奮を抑えながら、状況を聞くことにした。  「あれ、変だったぞ」  カンちゃんの父親に、セイジさんからある日

          土地遣い 13 地鎮祭、井戸

          土地遣い 12 一致、行き詰まり

           実際の現場であるシェパードと車庫がある土地、そして香峰神社に訪れた事、そして関係者や周辺の住民から話を聞き取りしてきてだんだんと輪郭が見えてきていた。  トウコさんから聞いた「土地の乗っ取り」に関する疑惑、そして香峰神社に放置された旧彫山家の二つの位牌を目にして、この土地に関する放火、窃盗、転倒事故死、交通事故等の原因と思われるモノは、恐らく現彫山家、というよりも主にセイジさんが、この土地や旧彫山家に対して行ったことであり、それが祟り、呪いのようにしてあの土地ヘ凶事として降

          土地遣い 12 一致、行き詰まり

          土地遣い 11 香峰神社の写真

          土地遣い 11 香峰神社の写真

          土地遣い 10 香峰神社

           旧彫山家の位牌が放置されているという神社は、その名を香峰神社という。香峰神社は集落の北東方に位置し、集落の中心を南北に走る道路からわき道を抜け、50mほど杉林の中を進んだ中にある。  この神社は神主が常駐しているわけではないとても小さな神社で、大晦日の深夜に集落の人が数名集まり、この神社で年を越して二年参りをする時に使う程度である。  つまり、一年の内たった1時間程度しか人が来ない神社である。  僕が香峰神社を訪れた時は、数日前から大粒の雪が降っていた。  今年は暖冬だ、

          土地遣い 10 香峰神社