妻という生きもの
【食】
01. 「大好物」
一輪の花の香りを愛でるようにアメリカンドッグの匂いを嗅ぐ。
02. 「禁断の」
懲りずにまた密会している。「もう二度と食べない」と縁を切ったはずのピーナッツバターとキッチンで。
03. 「食材」
こいのぼりを「おいしそう」と見上げる。
04. 「おにぎり」
炊飯器に残ったごはんを冷凍するためにラップで包むと、そのまま食べはじめた。
05. 「胸やけ」
ワクチンを打ちおえた翌日に吐き気を訴えたので「副反応かも」と夫が心配していたら「カップ麺ふたつも食べちゃった」と気まずそうに告げた。
06. 「諦める選択肢はないらしい」
「身体が冷えきってアイスが食べられない」と背中にカイロを貼りだした。
【買う】
07. 「おやつタイム」
大型の台風が近づくなかスーパーで買いだめを急ぐ人たちのとなりで、妻のカゴには「プッチンプリン」と「まるごとバナナ」だけが入れられていた。
08. 「おやつタイム 2」
「最近は地震が多いから」と非常食用に買ってきた「パイの実」をおもむろにあけて食べはじめた。
09. 「泣いた」
楽しそうにネットショッピングをしていたので「なに買うの?」と聞いてみたら「なにも買わないよ。カートに入れて買った気分を味わってるだけ」と笑う。
【表現】
10. 「サバサバな」
なかよしのママ友のことを「パサパサしてていい人なの」と称賛する。
11. 「どうかそんな人が見つかりますように」
きょうの占いで最下位だったようで「ラッキーパーソンはローストビーフだって」と目をぎらつかせている。
12. 「香ばしく焼けそう」
思ったよりも強い日差しに「日焼け止めのソース塗らなきゃ」と慌てて探しはじめる。
13. 「ワイルド」
息子がぐずりだすまえにと二人で夕飯の準備を急いでいたら「レンジでニワトリあたためて!」とお惣菜の唐揚げを渡してきた。
14. 「あこがれ」
ホットカーペットを「うちの床暖」と呼ぶ。
15. 「パンティ」
ベランダで風に揺れる夫のトランクスたちを「パンティ干しといたよ」と指さす。
16. 「大丈夫じゃなさそう」
夫婦ともどもなんだかひどく忙しい日々を送るなかで「大丈夫?」と夫が声をかけると親指を立てて力強く答える。「ノープレブラム」
17. 「放屁の効果音」
先行きが不透明な未来をまえに「きっとなにもかもバフッとうまくいくよ」と笑う。
18. 「見つけて」
夫が「どうもやる気が出ない」と弱音を吐くと「見つめーてあげるよ〜♩ きみだけのーやる気スイッチ〜♩」と熱唱してくれた。
【行動】
19. 「味で選ぶ」
ドラッグストアで「このフレッシュソープ味にしてみようかな」とトイレの洗剤を選ぶ。
20. 「あやしすぎる」
エコバッグを忘れた日は買った商品たちを服のなかに抱えてお店から飛びだしていく。
21. 「よい一日になりますように」
朝起きるとなにやらスマホで調べごとをはじめた。その検索欄には「口からうんち 夢占い」との文字が。
22. 「おやすみなさい」
夫「おはよう。きょうはなにしようか」
妻「果報を寝て待つ」
23. 「ファンキー」
自宅の仕事部屋でウェブ会議をしていると外からいきなり「フォー!」という妻の叫び声が。部屋のまえを通るときにくしゃみが出そうになってとっさに我慢したら変な声が出てしまったらしい。とりあえず何事もなくてよかったよ。「ファンキーな奥さんだな」とは思われただろうけれど。
24. 「まつり」
くしゃみが「ワッショイ!」
25. 「マクドナルド」
家でフライドポテトを揚げるときは「トゥルル♪ トゥルル♪ トゥルル♪」という効果音を口ずさみながらノリノリで塩を振る。
26. 「罠」
「振らずにあけてください」と書かれた缶コーヒーを「かたいからあけて」と毎回よく振ってから渡してくる。
27. 「守護神」
ボールがゴールネットへ突きささる歓喜の瞬間、ダンボールを持って目のまえに立ちはだかる。「ちょっとこれ、つぶしてくれる?」
28. 「効きそう」
息子のためにクレーンゲームでとった『マイクラ』のネザライトの剣を眉間に突きたてて目のツボを押す。
29. 「AI見知り」
新築祝いに友人から届いた『アレクサ』へ声をかけられずに恥ずかしがる。
30. 「慣れすぎ」
でも、すぐに慣れたようで「アレクサ、エアコンつけて」と夫にまで言いはじめる。
31. 「アレクサ、助けて」
疲れはてた一日がようやく終わりを迎え、ともにリビングで死んだように寝ころがっていると『アレクサ、ダンシング・ヒーローかけて!』と不意に叫び、全力で熱唱しながら踊りだした。
【感覚】
32. 「絶対音感」
おならをしたあとで「いまのはレだな」と得意げにつぶやく。
33. 「湘南にて」
夫「お。海の匂いがしてきたね!」
妻「え。油淋鶏の匂いじゃない?」
34. 「独特な痛覚」
テーブルに足の小指をぶつけた瞬間「おっぱい!」と叫んだ。
【認識】
35. 「それフクロウ」
新しいパジャマを着て「これどう? かわいいでしょ! ペンギン柄にしてみたの」と嬉しそうに見せてくる。
36. 「それいけ! タイパンマン」
家族でアンパンマンを見ていたら、カバオくんが現れた瞬間、そっとつぶやいた。「お、ガパオくんだ」
37. 「さっきの涙はいったい」
映画『アナと雪の女王2』を見たあと、クライマックスで涙を流していた妻に「いい作品だったね」と告げると「ストーリーがよくわからなかった」と微笑みながら「とりあえず、かなりの危機だったね」と大雑把すぎる感想で締めくくった。
38. 「なにを見ていたのだろう」
ちなみに実写版の映画『美女と野獣』を見終えたときは「怪獣がリアルだったね!」と感動していた。
【記憶】
39. 「たぶん?」
妻「むかしニャンちゅうって友だちがいてさ」
夫「へえ。すごい名前だね」
妻「うん。たぶん本名ではないと思うんだけど」
40. 「逆でもない」
夫「なんか音楽でも流そうか」
妻「さっきの目白って歌、聴きたい」
夫「白日ね。目白は山手線の駅」
妻「あ、逆に覚えてた」
41. 「いや、車は」
ひさしぶりに二人でドライブがてら焼肉食べ放題のお店へ。ついつい食べすぎてしまってお会計を済ませると苦しそうな表情で夫に提案する。「腹ごなしに歩いて帰ろうか」
【夫婦】
42. 「妻です」
さっき妻から届いたLINEを読んでいると「そのLINE、だれ?」ときびしく問い詰めてくる。
43. 「帽子姿しか浮かばない」
美容院から帰ってきた夫へ妻がひとこと。
妻「ルイージみたいでいいね」
夫「ルイージ……?」
44. 「夫婦のキズナとは」
美容院から帰ってきた妻へ夫がひとこと。
夫「その髪型いいね」
妻「それセクハラだよ」
45. 「夫婦のキズナとは 2」
服についたホコリを取ってあげたら「鼻くそつけられたのかと思った」と驚いている。
46. 「甘い生活」
めずらしく「なんて書いたか当ててみて」と背中へ文字を書いてきたので、どんなロマンティックな言葉が書かれるのだろうと待っていたら、完全に「あんこ」。
47. 「いただきます」
ハトにフンを落とされた夫が「ティッシュある?」と慌てて聞くと、とっさにカバンから「歌舞伎揚ならあるよ!」と渡してくれた。
48. 「マッサージ」
ついつい仕事の愚痴を漏らした夫に背を向けて告げる。「そのイライラをさ、わたしの肩にすべてぶつけていいよ」
49. 「追い討ち」
「なんか集団のなかでものすごく孤立する夢見たわ」と目を覚ました夫へ励ますように告げる。「夢じゃないやん」
50. 「異性」
ひさしぶりに二人で街を歩いていると「よく考えたらさ、わたしたちって異性なんだよね」といきなりニヤニヤしはじめた。
51. 「日常」
「結婚記念日だし、たまには特別なことしようか」と提案すると、しばらく悩んだ末に「ちょうどお酢がきれてたから買いに行きたい」との答えが返ってきた。
【育児】
52. 「おつかれさまです 1」
真顔のまま「オムレツかえようね」と息子にオムツをはかせている。
53. 「おつかれさまです 2」
家に帰ると全裸でスイカを切っていた。
夫「ど、どうしたの?」
妻「なんかバタバタしてたらこうなってた」
54. 「おつかれさまです 3」
息子を寝かしつけると「やっとこっさ やっすめっるー♩ すっこしの あいだっだけー♩」とオリジナルの鼻歌まじりに踊る。
【怒り】
55. 「聞いておいて」
「この漢字、なんて読むの?」と聞かれたので「羊羹の『かん』だよ」と答えたら「なにをえらそうに!」と怒りだした。
56. 「あなたのものはわたしのもの」
自分のスリッパが見当たらないので妻のスリッパを借りると「なんでわたしのスリッパを履いてるわけ」とのクレームがわたしのスリッパを履いている妻から即座に入った。
57. 「いや、言ってない。絶対に」
義実家からの帰り道。「お義父さん、相変わらず元気そうだったね」と告げると「お父さん、頭ツルツルになっちゃってたね」と言った。そして「でも仕事がんばってるしさ。そんなこと言わないであげてよ。かわいそうだから」と不満げに続ける。
58. 「さしすしゃとは」
夫「ちがうよ」
妻「なにがよ」
夫「シャだよ」
妻「あってるじゃん!」
夫「いや『シャ』だよ」
妻「はあ? 滑舌わるいねん(怒)」
夫「チャじゃなくてシャ」
妻「さしすしゃのシャ??(激怒)」
59. 「どうかこのまま忘れてください」
朝起きると「コーヒー飲もう」とにこやかに誘ってきた。「いいね」とキッチンへ淹れにいこうとしたら「いっしょに行く」と腕を組んでついてくる。そして「あ、まちがえた。ケンカしてたんだ」といきなり怒りはじめた。
【理論】
60. 「斬新な理論」
ダイエット中にもかかわらず「どうせ痩せないから食べても大丈夫でしょ」とアイスを食べている。
61. 「いままではいったいなんだったのだろう」
旅先からの帰り道。家族の気を引きしめなおすように告げる。「旅は家に着いてからが旅だからね」
62. 「毎日がサバイバル」
ある日のこと。
夫「しまった。爪、切りわすれた」
妻「そんなの山で遭難してると思ったら気にならない」
またある日のこと。
夫「しまった。手、切っちゃった」
妻「そんなの山で遭難してると思ったらたいしたことない」
【信念】
63. 「究極のポジティブ」
リビングのソファで「前向きになんてならないーどうでもどうでもどうでもいいー♩」と口ずさみながらアタリメをかじっている。
64. 「沈む気なし」
「まあ人生には浮き弾みがあるからね」と神妙な顔つきでつぶやく。
65. 「叶いますように」
「ミニマリストになるんだ」と何度もつぶやきながらIKEAのサイトで食い入るように新商品をチェックしている。
【クイズ】
66. 「問 1」
夫「アイシャドウ変わった色だね」
妻「何色だと思う?」
夫「うーん、みどり?」
妻「ぶーー。ミッドナイトドライブ」
67. 「問 2」
「目玉焼き何個焼く?」と聞かれたので「二個でお願いします」と答えたら「二個って二つ?」と不思議そうに首をかしげる。え。うん。二個は二つ。たぶん。
68. 「問 3」
息子のおもちゃの電池を手に「ねえねえ、これって何4かな?」と聞いてきた。そっちを答える日がやってくるとは思わなかった。
【発想】
69. 「優雅な食卓」
ダイニングテーブルのとなりへ高さがまったく合わないソファを動かしてくると「憧れのソファダイニング」と目を輝かせて夕飯を食べはじめた。背筋をピンと伸ばして無理やり顔だけを出しながら。
70. 「ナイスアイデア」
メッセージアプリの背景が息子のほっぺたのどアップ写真になっていた。「どうしたのそれ」と夫が苦笑すると、とても気持ちよさそうにメッセージをスクロールする。ぷっくりとしたほっぺたを指で何度も撫でるように。
71. 「その発想は永遠になかった」
「はやく海外旅行したいねえ」と嘆く夫に人差し指を立ててドヤ顔で告げる。「シャワーの温度を不安定に上げ下げしながら浴びると、海外のホテルにいる気分が味わえておすすめだよ」
【おなら】
72. 「きみの残り香」
おならをしてしばらくすると「え、おならした?」と夫に顔をしかめる。
73. 「ゲップです」
ゲップをした瞬間「あ、屁でちゃった。いや、ちがうわ。オナラか」とひとりで笑っている。
74. 「プーどころじゃなかった」
妻「プーしてもいい?」
夫「うん、いいよ」
"ブブブブリリリリリィィィ!!!"
【カニ】
75. 「単位がカニ」
夫「いいこともあったし、おもいきってこれ買っちゃおうか」
妻「いやいや、そのお金でカニ何匹食べられると思ってるわけ?」
【週末】
76. 「妻原ピストル」
土曜日の朝に起きてくると「よー! そこのわけぇの! たのしいとこつれてってくれぇ〜!」とリビングで熱唱する。
77. 「ブランチさせて」
そして「とりあえず、王様のキングでも見ますか」とあくびをしながらテレビのリモコンを探す。
78. 「その歌、ギターないよ」
雨で外出できない日曜日には鬱憤を晴らすようにエアギターをかき鳴らしながらゴスペラーズを熱唱する。
79. 「ごめん、窓あけてたわ」
そして「ピーヤ! ピーヤ! ピーヤ!」とシャウトしはじめる。
【クリスマス】
80. 「面が多い」
「今年のクリスマスは八面鳥でも食べようね」と楽しみにしている。
81. 「サプライズ」
「まさかクリスマスにサプライズのプレゼントなんて買ってくれてたりして」と聞かれたので「それは秘密でしょ」と笑って答えたら「いや、なに買ったの」と事実を吐くまで問い詰めてきた。
82. 「ごめんなさい」
クリスマスなのですこし早めに帰宅してみたら最寄駅でたまたま遭遇。なにやら怪しげな紙袋を持っていたので「それなに」と聞くと「サプライズで渡すつもりだった夫へのプレゼント」と言いづらそうに答える。
83. 「おめでとう」
クリスマスプレゼントで嬉しそうに遊ぶ息子へ「サンタさん、センスあるね! すごくない!?」と何度も聞いては返ってくる「うん、すごすぎ!!」との絶賛にグッと満足げな表情を浮かべている。
【年末年始】
84. 「よくわからない理論」
年末ジャンボ宝くじを買ったら「窓口のおばちゃんが無愛想だったからハズレだな。無駄金だったわ」とはやくもへこんでいる。
85. 「嘘だと言ってくれ」
「個人的な今年の漢字はなに?」とたずねると「屁かな」と答えた。「なんだそれ」と夫が笑うと「屁みたいな一年だったから」と真顔で続ける。
86. 「メリークリスマス」
元日の陽が沈みゆく道を家族で歩いていると「きーよしー こーのよーるー♪」と口ずさみはじめた。
【冬】
87. 「みかんがススムくん」
冬になると「みかんが みかんが ススムくん」と歌いながら、みかんを食べつづける。
88. 「ぬくもり」
仕事ですっかり遅くに帰宅すると、息子と眠る寝室とは別の部屋に布団を敷いてくれていた。布団には妻がさっきまで寝ころがっていたぬくもりが。寝ずに待っていてくれたのだろうか。その跡をなぞるようにして眠りにつく。
翌朝の妻談「敷いてあげたわけじゃなくて、寒かったから自分で布団にくるまってそのままにしておいただけ」
89. 「夏草」
「なーつくさっがぁぁぁー♪」 とCHEMISTRYの『Point of No Return』を熱唱しながら絶賛する。「いやあ、冬にぴったりの歌やな!」
90. 「潮干狩り」
降りしきる雪に「雪かき用のスコップを買っておけばよかった」と夫が悔やむと、なにか閃いたように「あるよ!」と物置きから熊手を出してきた。
【バレンタイン】
91. 「完成しますように」
「まずは卵白を泡立ててゲレンデをつくりましょう」とひとりで実況しながらバレンタインのチョコレートをつくりはじめた。
92. 「取りもどせますように」
バレンタインの翌日。「あ、しまった! きのう歌うの忘れてた!」と慌てた様子で「バレンタインデイ・キッス♪」を歌いながら踊りはじめた。なにかを取りもどすように。
【おまけ:写真】
93. 「なぜ」
はじめてキャラ弁(?)のようなものを息子につくった。テーマは「大阪のおばちゃん」らしい。
94. 「ありがとうございます」
二人で『バチェラー』を見ていたら「受けとっていただけますか」と見たことないローズを渡された。
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