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プロジェクトのはじまり

山田さんとの出会い パーマカルチャーデザインコース

「ちっちゃい辻堂」プロジェクトの建築を依頼している、建築家の山田さん(ビオフォルム環境デザイン室)との出会いは2016年8月。藤野で行われたパーマカルチャーデザインコースでした。

山田プロフィール

山田貴宏さん

パーマカルチャーという言葉を知ったのは、ロンドンに滞在している時に、「生物多様性保全」と山崎亮さんの「コミュニティデザイン」に興味があるという話を友人にしていたところ、「パーマカルチャーって知ってる?」と教えてくれました。その時はピンと来ていなかったのですが、日本に戻ってから調べてみるとなんだか面白そう。デザインコースというのが10泊11日である。でもちょっと宗教っぽかったらやだなとびびっていたので、ひとまず前半後半に分けて前半の5泊6日だけ受講しました。半年後、後半の5泊6日を宮古島で受けました。宗教っぽいこともなく、むしろ僕の人生に大きな影響を与えてくれました。


そのデザインコースの中で、山田さんが建築の話をしに来てくださりました。不動産を持っていて、今後活用を考えなくてはならないので、今度お話しに行って良いですか?ということを話したのが、きっかけです。プロジェクトを実際にお願いしてからも、想いや考え方、根底の考え方が近いことと、物腰が柔らかい山田さんの人柄のおかげで、コミュニケーションがとてもスムーズでした。

パーマカルチャーデザインコース2

パーマカルチャーデザインコース18期

ここでちょっと、パーマカルチャーってなに?という方もいると思うので、簡単に。
パーマカルチャーとは、Permanent Agriculture or Culture の略です。
オーストラリアの生態学者、ビル・モリソンが提唱した考え方で、日本語だと「持続可能な農のある暮らし」や「活かし合う関係性のデザイン手法」などと訳されたりします。昔のお百姓さんのように、小さな循環のある暮らしがイメージとしては近いと思います。それが世界各地、暑いところ、寒いところ、湿ったところ、乾燥したところ、その地域ごとに暮らしの知恵・工夫のようなものがあったはずで、それを体系的にまとめ、さらに新しい技術も取り入れたものです。
また、暮らし方なので、畑に関することだけでも、農業、生態学、土壌、風向き、地形、太陽の向き、湿り気などが関わるし、建物の方も建築、エネルギー、林業、さらに村の単位になればコミュニティ、経済、文化、哲学など、いろいろなものが相互に関わり合っています。細分化していく現代科学の考え方において失いがちな、全体性を伴った考え方だと思います。僕はこの考え方がとても好きです。細分化していく考え方に、限界を感じていたからかもしれません。生物多様性保全においても、保護区の中で守っていれば、僕らは暮らしをなに一つ変えなくて良いということではなく、遠いところのことでも僕らの暮らしがなにかしら関わって問題(気候変動や森林破壊など)が起こっていると思っていたからです。

里山長屋

山田さん設計の里山長屋(藤野)

その土地ごとに気候、風土、土壌、地形、風、湿度など環境条件があり、そこにあった無理なく続く暮らしをデザインする(適材適所)ことだと思っています。もっというと、同じ地域でもどんな資源にアクセスできるか、また人によっても誰が行うかによって変わってくるものだと思います。

キーホールガーデン

キーホールガーデン(真ん中にも手が届きやすい)

なので、個人的な理解としては、パーマカルチャー農法というものはないと思っています。キーホールガーデン(かぎ型にデザインされた菜園)をしたらパーマカルチャーなのか。スパイラルガーデン(らせん状の菜園)があったらパーマカルチャーなのか。そういうことではないように思っています。たしかにパーマカルチャーの考え方を伝えるには、わかりやすく、かたちがかわいいのは事実ですが(笑

スパイラルガーデン

スパイラルガーデン

(上下で環境が微妙に異なることで、そこに合った植物が育つ)

そしてパーマカルチャーとは「メガネ」のようなものだなと思っています。それを身につけることで、今まで見えなかったつながりに気づくことができる。農的なことをやっていると自然と身につくことだと思いますが、現代の土から離れた暮らしをしていると見落としがちですよね。環境問題が広く認識されている現代において、必要な考え方だと思います。

まことのメガネ

任天堂のゲーム『ゼルダの伝説』に出てくる「まことのメガネ」

それまでに大手ハウスメーカーさんから提案をいくつか受けていましたが、どれもしっくりきませんでした。パーマカルチャーとの、そして山田さんとの出会いで、「これだ!」と思いました。ちっちゃい辻堂でもパーマカルチャーをやんわり意識しながら、でも頭でっかちになってしまわないように気を付けて、暮らしの場をつくっていきたいと思います。



石井 光

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