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The Violin Conspiracy バイオリンをめぐる陰謀

2023年1月9日

今年は「読みかけの本を(できるだけ)減らそう!」と言うヘタレな目標を掲げ、以前読んであと少しのところで、ほったらかしにしていた、この本を読了。

読み始めたきっかけは、よく聞いていたニューヨーク・タイムズの書評ポッドキャストだと思うのですが、まず、著者が実際にヴァイオリニストであること。そしてブラックであること。そしてポッドキャストのインタビューで、半フィクションというか、実際に著者に起こったことが元になっている、という話を聞いたからだったと思います。

本の中では、盗まれるヴァイオリンはストラディヴァリウスですが、著者のヴァイオリンもストラディヴァリウスではないにしろ、そこそこのものだったのが紛失したことがあったそうです。

またコンサートに行く途中、車線変更をしただけで、警察に捕まり、連行され、ヴァイオリンを取り上げられます。自分はヴァイオリニストでそのヴァイオリンは自分のものであり(盗んだと思われていたので)、このままではコンサートに穴を開けることになる!と言っても聞き入れてもらえません。これは本当の話らしく、黒人(ヴァイオリニスト)に対する社会の偏見を知らしめてくれます。

というわけで、主人公に辛いことがたくさん降り掛かり、読むのが辛くなって放っておいてしまったのでした。

実際に盗まれてしまったヴァイオリンについて、著者はポッドキャストでは多くを語っていませんが、本ではミステリー仕立てになっていて、なかなか面白い結末です。

著者です

文章も読みやすく、さすがいつも「届けること」を考えている職業の人ならでは、と思わされます。プロの音楽家でチャリティーなどにも熱心。それなのに、こんな面白いミステリーも書けるなんて!

一つ難を言えば、時々ちょっとした説明がガッツリ省略されています。例えば、飛行機でとある街に飛んだ主人公が車でその街の色々なところに出没します。おそらく飛行場で車をレンタルしたのだろう、と読者としては思うわけですが、そして、実際アメリカでは飛行場での車レンタルはニューヨークやシカゴのような街でない限り「当たり前」だったりするのですが。。。というふうに、ちょっとした描写がガッツリ抜けているので、ちょ、待てよ、というところも無きにしもあらず。でも、それを差し引いても、読みやすく、そして読ませる小説でした。

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