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1.伝わるデザインには良い問いがある 2/5話

よいデザインには良い問いが含まれているということです。
ここでいう良い問いとは何か?相手にとって「解決すべき本質的な問題」と言い換えてもいいと思います。先ほどのゲームには「ドラえもんを知らない人がいる」といった小さな問題が含まれています。例えではありますが、この問題は「ドラえもんのグッズの売上があがらない」「藤子F不二雄ミュージアムの来場者が増えない」など副次的な問題に関連していきます。
世の中は小さな問題が複雑に絡み合っています。「自分のブランドが広まらない」「原価が高い」「上司に評価してもらえない」といった一つの会社に関わる問題から「環境問題など社会的な取り組みを実践してくれる人が増えない」「日本からイノベーターが生まれない」など社会全体に関わるもの、「自分が何をしたいかわからない」といった個人的なものまで様々です。そういう問題がひとつずつ私たちのような課題解決型の人材のもとに持ち込まれてきます。たとえば。

ドラえもんのグッズの売上が下がっているからパッケージを刷新したいです

実は、デザイナーとして働く時に、持ち込まれた問いを必ず解決する必要はありません。
驚かれると思いますが、ここからが重要です。
私はまず疑います。

この問題の本質はなんだろうか

実は、「売上が下がっている」というのは問題ではなく、ただの事実であり、ただの結果です。
多くの人はネガティブなことを問題と捉えがちですが、大切なのは結果が変わる分岐点、つまり、本質的な問題を見出すことです。

(現在の結果)
ドラえもんグッズの売上が上がらない

(原因)
ドラえもんを知っている人が減っている(マーケット)
客単価が悪い(商品・サービス)
店頭スタッフの接客が悪い(オペレーション)

(本質的な問題)
なぜ、知っている人が減っているのか?
なぜ、客単価が悪いのか?
なぜ、店頭スタッフのモチベーションがあがらないのか?

(本質的な原因)
高い商品しかないため、一人あたりの購入点数が少ない

(仮説)
安価な商品があれば複販が増えるのではないか

(デザイン的解決)
レジ前に500円程度の複販商材とそれを勧める店頭POPをつくる
レジのオペレーションにも複販を勧める声かけをしてもらう

(想定する結果)
複販が成功し、客単価が平均して500円上がる
=ドラえもんグッズの売上が上がる

パッケージを刷新したいという発注に行き着くまでにクライアント側でこういった議論がされていれば、これらの本質的な問題や原因、仮説はヒアリングするだけでぽんぽん相手の中から出てきます。そのため、仮にパッケージを刷新するという仮説を実行した結果、売上があがらなくても、それは仮説が間違っていた、仮説を変えよう、という次の仮説検証につながります。
ですが、往々にして、ここまで議論が行われていないケースも多く、これらの過程を蔑ろにしてパッケージを刷新した結果、売上があがらず、原因もわからず、あげく、パッケージデザインが悪いからまたやり直そう、なんて堂々巡りをしているケースもあるのです。

おさらいですが、
(現在の結果)(原因)(本質的な問題)(本質的な原因)(仮説)(デザイン的解決)(想定する結果)
これらを明瞭化・言語化すること。
この方法は問題解決のプロセスにおいて非常に基本的なことなので、あらゆる分野に転用できます。
新規事業を立ち上げる時も同じプロセスを辿る瞬間が必ずあるはずです。

すべての物事に因果関係があります。そして、生涯で解ける問いの数には限りがあります。
デザインは「問題を解決する手段」と伝えましたが、問題だと思われているあらゆる事柄の中から、この本質的な問題にたどり着くプロセスこそが、問題解決にとって、つまり、デザインにとって一番重要であることが理解いただけたでしょうか。
良いデザインは本質的な問いを導き出し解決するプロセスを含んでいるという話でした。


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