ななめぎ

ななめぎ

最近の記事

星を描くものたちへ 第三話

 開発部は比較的静かなほうである。  企画などの大人数でチームとして行う仕事は、プロジェクト以外にはほとんどなく、大体は個人プレーで黙々と仕事をすることが多い。そのためイヤフォンをしながら作業したり、会社に来る日もあれば在宅にしたりと、比較的自由な形で仕事ができる。  ただチャットの中は騒がしく、チームチャットや個人チャットも何かしら質問が行き来し、雑談が飛び交っている。  そして椎名のチャットにも晴菜からの個人チャットがきていた。 Haruna 13:10[また嘘ついたっ

    • 星を描くものたちへ 第二話

       彼が言葉の意味を一生懸命理解しようとしている顔を見てはっと椎名は自分の言った言葉の意味に気がついた。  何バカなこと言ったのだろう。編集者という嘘までついて、目の前の彼を騙して、例え罪悪感が勝ったとしてもやってはいけないことだった。でも今更嘘でーすとは声を出せない。そもそもそんなふざけられる関係ではない。    通知が入ったのか、スマホが揺れた。  彼の次の言葉を聞きたくなくて、スマホの画面を見ると、そこには8時30分と画面が指している。椎名の会社の定時は9時出社。フレック

      • 星を描くものたちへ 第一話

        あらすじ  椎名は都内IT企業で働く29歳女性。就活時は好きな漫画を仕事にしようと出版社を志望したが、落ち続けたため夢を諦め今の仕事に邁進し、1人で幸せに過ごしてきた。しかしある日とある理由で社内プロジェクトから外れた椎名は、町中で大泣きしているマンガ家志望の大学生喜陸と出会う。互いに心引き裂かれた状態+酔っ払っていたため2人は一夜を共にしてしまう。好きでもない男とセックスした椎名は罪悪感から言い訳として喜陸が漫画家志望だったことを思い出し、咄嗟に漫画編集者として嘘をつき、喜

      星を描くものたちへ 第三話