日記:ニルヴァーナ・コミューン
インドに、ニルヴァーナ・コミューンというふしぎな門があるという。そこをぬけると、またふつうの木や虫がいる荒野。そこに、こんな言葉が書かれているという。
わたしは あなた
あなたは 彼
彼は かのじょ
かのじょは 水や鳥
水や鳥は 空や谷
ここすぎて
目をつむり
泣け
6時54分の電車にのるため早起きして、自転車をこぎだす。うつ気味退職してから一年たつ。繊細で、はたらけない息子とふたり。明日のパンのために、今日は仕事の初日。
犬をつれた男とすれちがう。思いきって挨拶してみる。
「おはようございます」
応答なし。柴犬だけが、わたしをみてシッポをふる。
線路沿いに自転車をとめる。足元に、なにか虫が死んで、アリが集まっているものをよける。改札口に向かうヒトの波。大縄跳びに入るタイミングで。
ホームに白と黒のヒトたち。わたしは右へ左へよろけながら、優先席の車両にのる。優しそうなヒトがいる気がして。つり革につかまって流れる景色をみる。
ヒトを意識するとアレがやってくる。なんか怖くなるアレ。文通している女性がくれた、文字アイテムをとりだす。『鈍感力』『ぼぉーっとする』呪文のようにいいきかせる。みんなをカボチャと思ったら逆効果だった経験あり。武井武雄のやさしい童画をイメージして波乗り。会社の最寄り駅についた。
?!☆?!!!□♡☆???♡
帰りの電車はへとへとで、アレを怖がる余裕もなかった。空席をさがすおじさん。スマホをみせて笑いあう高校生。ぐずる赤ちゃんをあやす若いお母さん。抱きしめたいヒトたちがいた。
ニルヴァーナ・コミューン
荒野の門は抜けられたか
どうか
柴犬のお兄さんに
明日、挨拶してみようか。
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