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きんぎょ~♪ え~金魚

金魚売りは夏の風物詩の代表格であるが、私は実際にその姿を見たことがない。

残念ながらサザエさんの漫画の中でしか知らないのである。

しかし子供の頃、夏にやって来る物売りの呼び声と言えば「麦茶に、はったい粉~ ♪」であった。

毎年小学校の夏休みは下町にある親戚の家に遊びに行ったものだが、そこでは麦茶とはったい粉を売り歩いているおばさんをよく見かけた。

はったい粉は麦こがしとも言い大麦を焙煎して粉に挽いたもので、砂糖を加え冷たい麦茶で練ったものをスプーンで頂く夏の定番おやつであった。

金魚売りこそ来なかったが他にも色々なものを売りに来ていたように思う。

チリンチリンと鈴を鳴らして来るところてん売りのおじさんや、生きた明石のタコを売る漁師のおかみさんもいた。

タコは丸々一匹買って大きな鍋で茹でるのだが、鍋の中のタコは「キュ~」と鳴きながらみるみる真っ赤になり、八本の足が反り返って丸まっていく。

それは涼やかな金魚とは程遠い、子供には何とも残酷でグロテスクな夏のひとこまであった。

                       イラスト(パステル)





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