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水車小屋のネネ 津村記久子著

この春に刊行された「水車小屋のネネ」は2021年7月から一年間
毎日新聞朝刊に連載された新聞小説である。

母親と姉妹二人の母子家庭に母親の恋人(婚約者)が
やって来るようになってから、その生活は一変する。
姉の理佐18歳は短大の入学金を母親の恋人に貢がれてしまい
妹の律8歳はその恋人から虐待のような扱いを受けていた。

理佐はそんな家を出て独立する決心をしたが、妹も一緒について来ることになった。
そして理佐は小さな山あいの町で見つけた蕎麦屋に就職し、律も地域の小学校へ通うようになる。
こうして姉妹二人だけの生活が始まる。

物語は理佐と律が周りの大人達に温かく見守られながら暮していく様子と
様々な人達との出会いや出来事を10年刻みで描かれている。

まだ高校を出たばかりの姉と幼い妹が何もないところから
少ないお金で工夫しながら生活する様は健気で心から応援したくなった。

そして何よりも私の心を捕らえたのは水車小屋の「ネネ」の存在である。
ネネはインコの一種でオウムに似たヨウムという鳥であり、
人間の3歳ぐらいの知能を持っていた。
理佐が就職した蕎麦屋は水車小屋の石臼でそば粉を挽いていて
ネネはその石臼が空っぽにならないように見張っているのだった。

理佐は蕎麦屋の店員をしながら、合間に水車小屋でそば粉を曳いてネネの相手をするのも仕事だった。
そして妹の律も水車小屋に来るようになりネネと最も仲良くなったのである。
人間のように会話をする二人がとても微笑ましく、朝刊が来るのが楽しみで
ネネの大ファンになった私はネネのイラストを想像しながら描いてみた。
それが2年前の夏、無関係な記事にアップしたこのイラストであるが
今回本来の目的として再掲載することにした。

ネネは色んな場面で物語を盛り上げたり人々の心を癒したりして
重要な役割を果たしていくのだが、連載が終わった時は
暫く呆然とするぐらい残念で、どうして切り抜きを残しておかなかったのか悔やまれてならなかった。

だから今回単行本として刊行され、また大好きなネネに会えてとても嬉しい。
しかも今月21日「水車小屋のネネ」が谷崎潤一郎賞を受賞したと知って
さらに喜びが倍増した。

ネネ、おめでとう!



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