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ねこの気持ち ②

2月22日の猫の日が近づいてきたので、もう一つ猫の話を書こうと思う。

まだ実家に居たころのこと、いつも我が家に「ご近所猫」のリリーが遊びに来ていた。

私が毎日仕事から帰って来ると玄関先で待っていてニャーニャーと足元にまとわりついて離れない。

そのうち私の姿が見えなくても帰って来る足音が分かるのか、家に近付くに連れてリリーの大きな鳴き声が聞こえてくるようになった。

私は玄関でひとしきり一緒に遊んでから「さぁ、もうお家に帰りなさい」とリリーを残して家の中に入るのだが、しばらくはドアの前で鳴いていて困ってしまった。

休みの日などは、ほぼ一日中我が家の庭で過ごしているのでペットフードも用意してみたが、リリーは食べることより構ってもらう方が嬉しそうだった。

だからたまに飼い主さんと道で会うと「うちのリリーはお宅の子みたいになってしまって。。」と苦笑されるのであった。

ある日私はいつものように仕事から帰って来たが、珍しくリリーのお迎えがなかった。

どうしたのかと思いながら玄関の鍵を開けていると、どこからともなくリリーがフラッと現れた。

「あら、リリちゃん」と声をかけたがリリーは弱々しく「ニャア」と返事をするだけで、明らかにいつもと様子が違う。

何だか落ち着きがなく何かを訴えるように二度鳴いた後、吐きそうな仕草を見せてそのまま隣家との間に消えていった。

それから翌日になっても翌々日になってもリリーは姿を見せない。

心配しながらリリーが来るのを一週間ほど待ったが、もうじっとしていられず飼い主さんのお宅を訪ねてみた。

すると飼い主さんは「お知らせしようか、迷ったのだけれど・・・」と口ごもりながら、リリーが交通事故にあって死んでしまったことを話してくれた。

驚いて詳しく事情を聞くと、どうやら最後に我が家に来た時は事故に合った直後だったらしく、その後自分の寝床でグッタリしているのを飼い主さんが見つけ、病院に連れていったがもうダメだったそうだ。

あの時リリーは私に助けを求めて来たのだろうか、それならどうしてすぐに行ってしまったのか、いつものように抱っこさせてくれれば異変に気づいたかもしれないのに。。

あるいは自分の死を予期して最後の力を振り絞り、私に別れを告げに来たのだろうか。

あの時のリリーの気持ちは今も分からないが、思い出す度に涙がこぼれそうになる。

                      イラスト(粘土.アクリル)






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