12の春〜親元を離れる君〜
娘は寄宿舎暮らしを選びました。
春から親元を離れます。
小学6年生の娘は、中程度の難聴を抱えています。
手話が必要なレベルではありませんが、人工内耳を装着し特別支援学級に通っています。
小さな町なので、保育所の時代からの友達も多く、普通学級の友達とも分け隔てなく付き合うことができているのです。
そして、多くの友達はエスカレーター式に地元の公立中学校へ進学します。娘も、同じように進学することが当然と思っていたでしょう。
そもそも娘が難聴と分かったのは、保育所に通っていた時期でした。
子育て支援センターという遊び場があり、ハンドベルや木琴、電子ピアノで遊ぶことも多かったのです。
ある日、「聞こえない音がある」というので、耳鼻科を受診。
幼いので詳細な検査はできませんでした。
しかし、難聴を疑うには十分な結果でした。
それから、大学病院の専門医を定期的に受診、地元に来てくださる特別支援学校の先生にもお世話になることになります。
成長するにつれて診断がはっきりすると、難聴に関する情報を集め始めます。
情報自体は整備されているので、入手は難しくはありませんでした。
関連する書籍も読み漁りました。
私の記憶に残っているのは、小学校進学前の特別支援学校の先生の言葉です。
「支援学校は良いですよ、難聴に配慮をした教育ができますし、寄宿舎では自立した生活をできるようになります。これから生きていく上で大切になります」と。
ただ当時は、幼い娘を手放す決断はできず、地元の小学校に初めて特別支援学級を設置してもらい、同じ障害を持つもの同士、児童2人だけの授業がはじまりました。
少人数の恵まれた環境ですくすく育ち、親の私からは似ても似つかない朗らかな性格に。
担任に絶対、他人を攻撃しない性格だと評されるほど優しい性格も身につけました。
最近は、障害をもつことを悲観的にではなく、普通のこととして発信する方が増えてきました。
五体不満足の乙武さんとか、ダウン症の弟さんの話で有名な岸田奈美さんとかインフルエンサーの存在が心強い。
2020東京パラリンピックも記憶に新しいところです。
NHKのバリバラとか意欲的な取り上げ方も増えてきました。
障害者ががんばるから美しいとか、そういう偏った先入観は間違っているし、本人にとっても嬉しいことではない。
そんな主張も珍しくなくなってきました。
これから、娘を含めて彼らの生きる世界も変わってくると思うのです。
障害者自立支援法や手話言語法があろうとなかろうと、確実に変わってきています。
そして中学校進学。
娘は大きな転機を迎えることとなります。
決断を後押ししたのは一冊の本でした。
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