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ソーシャルスキルトレーニング(SST)をやってみた。記録と感想まとめ【就労継続支援B型事業所】

こんにちは、ちばまき(@chibamaki_)です!
2023年11月より株式会社パパゲーノにジョインし、現在は就労継続支援B型事業所パパゲーノ Work & Recovery)の運営をしています。

先日、そのパパゲーノW&Rの利用者さん向けにソーシャルスキルトレーニング(SST)のワークショップを開催しました。
SSTは、簡単に言うと職場や日常生活でのコミュニケーション能力を高めるためのトレーニングプログラムです。
パパゲーノとして初の試み&私自身も入社して最初の企画ということで、今回のSSTについて振り返ってみたいと思います。

  • SSTとはどんなものか知りたい人

  • これからSSTをやってみようと思っている人

  • パパゲーノ Work & Recovery に興味がある人

などに読んでいただけると嬉しいです!


SSTとは何か?

ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、日常生活でのコミュニケーションや感情のコントロール、問題解決の方法を、ロールプレイや意見交換などから学ぶことを目的として行われるプログラムです。

社会の中で,相手から自分の望むような反応(望むような回答,理解など)を得るためには,一定の認知や行動(言動)のスキルが必要である。たとえば,親しくなりたいと思うクラスメートへ話しかけたときに,相手も同じように自分と親しくなりたいと思い,それを表現してくれるような結果が得られる話しかけ方などは,人によっては何の苦もなくできることであるが,一部の若者にとっては,一定の知識を得て,訓練をして,初めてできるようになることである。そのようなときに,必要な知識(どのような言動が望ましいかなどの情報)を与え,練習(行動リハーサルなど,ロールプレイなどを通して実際にやってみる体験)できるように支援の順序とコツを定め,構造化した支援の方法がSSTである。

内閣府:「SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)とは」

参加者は、

  • 言いたいことがうまく伝えられない

  • 自分から話しかけたり、質問したりすることができない

  • 電話に出ることが苦手

などの「困りごと」をテーマに設定し、プログラムを通して他の人の意見や解釈を聞いて学ぶことで、ご自身の日常生活に活かしていきます。

実施したきっかけと目的

地域生活支援センターでの体験会に参加

私もパパゲーノに入る前はSSTというものについて知らなかったのですが、入社してすぐの時に近隣の地域生活支援センター(障害のある方向けに地域交流の場の提供や、相談支援などをする施設)にご挨拶に行った際、体験会に参加させていただきました。

そこで初めてSSTに触れ、コミュニケーションに苦手意識がある人はもちろん、誰にとってもためになる場だなと感じ、パパゲーノでもやってみたいと思いました。

就労BにおけるSSTのメリットと今回の目的

実際にやってみた感覚と参考資料などから、就労Bの利用者さんとSSTを行うメリットとして以下のような点が挙げられると思います。

  • 複数人のグループの中で発言する、意見を述べることに慣れる場にできる

  • あくまで「練習」なので、自分では思いつかない表現や話し方などを試すことができる

  • 自分のコミュニケーションについて、第三者からの客観的な「良かった点」を聞くことで自信がつく

  • (交流的なカリキュラムがない場合は特に)利用者間での心理的安全性が高まることで、通所へのモチベーションが上がる

もちろん、ロールプレイなどを通して参加者の困りごとを直接解決する手段が見つかればと思いますが、上記のようなポイントを意識して場をつくるだけでも大きな価値があると思います。

1回参加したとはいえ主催は初心者のため、まずは安心してコミュニケーションできる場を提供すること、それを利用者さんに体感してもらうことを目的としてパパゲーノでのプログラムをやってみることにしました。

具体的な流れと内容

下記の流れで実施しました。

  1. あいさつ・自己紹介

  2. ウォーミングアップ(アイスブレイク)

  3. SSTについてのオリエンテーション・ルール確認

  4. 練習したい場面の共有

  5. 練習(ロールプレイ)

  6. まとめ・感想共有

ウォーミングアップで、その日集まったメンバーで話すことに慣れていきながら、オリエンテーションではSSTのルールを順番に読み上げていくことで場の一体感をつくっていきます。

練習したい場面の共有については、事前に参加者からご自身の課題を出していただき、当日にグループ内で具体的に掘り下げていきました。

事前に出してもらった課題の場面を、その場で具体化しながら共有

その後、実際にその場面を想像し、ロールプレイをします。
現実にある場面になるべく近い立ち位置や姿勢で行うのがポイントです。
このケースでは、席に座って仕事をしているスタッフに向け、メンバーさんから「質問していいですか」と話しかける場面を再現しました。

相手に迷惑なタイミングで話しかけてしまっていないか気になるということで、その時のスタッフの状況や、具体的にどんなふうに話しかけ始めるかを明確にしながらロールプレイをしていきます。

終わった後は見ていた他のメンバーから良かった点を共有してもらいながら、本人がやってみての感想や、もっと良くするにはどうしたらいいかを意見交換していきます。

メンバーさんからの意見を聞きながら、ポイントをまとめていく

意見交換の場では、ロールプレイで話しかけられた相手側から「まったく嫌な気分にはならないし、丁寧なコミュニケーションでよかった」と感想をもらったことで、自分が少し気にしすぎていたこと、これでいいんだという安心感を感じられたようでした。

上記は1つのケースですが、他の方のケースも含めて、実際に当日使用したスライドを載せておきますので、よかったら見てみてください。

参加した利用者さんの感想

終了後に参加したメンバーの方からいただいた感想を一部抜粋・編集して紹介させていただきます。

他の人の意見が聞けて新しい発見がありました。

50代男性

他の利用者さんとコミュニケーションできる機会になってよかった。

20代男性

相手は特に気にしないかもしれないのに、(言いたいことを言わずに)黙っているのはそっちの方が相手も傷つけてしまうかもしれないことに気がつきました。

20代女性

自分の困りごとを解決できました。第三者から見たら自分が思っているほど大したことではないということがわかってよかった。

20代女性

実際に起きたことと自分の傾向、考え方の癖を照らし合わせた上で、自分がリラックスしてやっていける方法を考えたいです。

40代女性

気づきや改善点

今回やってみての気づき、次回に向けての改善点は下記です。

  • 運営側が慣れるまでは、練習したいテーマについては事前に回収しておき、練習しやすい流れを準備しておくとよい(今回はそうした)

  • 個別のテーマとなるため、都度「このテーマで同じような気持ちの方はいますか?」と問いかけをすると他のメンバーにも当事者感覚がもてそう

  • テーマを共有するときのヒアリングポイントを頭の中にいれておき、場面の具体化とロールプレイはより現実に近いところまでできるとよかった

  • 時間配分や人数はちょうどよい〜少しギリギリくらい

    • ウォーミングアップやルール確認までで15分、個別のテーマを15分×3

    • 参加者:メンバー3人+スタッフ2人

  • ファシリテーター次第で場の雰囲気が決まる。明るく、和やかな空気感を出せるよう、安心できる声掛けやトーンなどを研究していきたい。

まとめ

結論として、まずは「やってみてよかった」です。
こういったものは回数を重ねることで、ファシリテーター側も参加者側も場に慣れていき、よりよいプログラムとなると思います。
来月以降も定期的に開催したいと思います。

またSSTに限らず、利用者の皆さんの支援につながるプログラムは随時検討していきたいと思っていますので、今後も勉強と実践を続けていきます。
ぜひご経験のある方はご連絡いただき、情報交換できればありがたいです!

以上、SSTを実践してみた記録と感想でした。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

参考にした資料等

SST(ソーシャル・スキル・トレーニング)とは? ~ソーシャル・スキルを効果的に身につけるために

SSTを活用した精神障害者等に対する職業指導(1)~職業レディネス指導事業の実践から~


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