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たくさんの社会課題の解決に向けて

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。

私たち千葉ウシノヒロバでは、2020年に千葉市から預託事業を引き継ぎ、牛の暮らすキャンプ場として運営してきました。牧場、キャンプ場、物販など、さまざまなビジネスモデルを、社会問題の解決や長期的ビジョンを軸にしながら、確固たるコンセプトで貫いたことが評価され、2022年にはグッドデザイン賞を受賞しました。

ウシノヒロバでも取り組んでいる社会問題の解決は、「ソーシャルデザイン」の言葉で一般的に広まっていて、近年では、大学にソーシャルデザインを専門とした学部が設立されたり、企業や行政でもソーシャルデザインを主としたプロジェクトをよく見かけたりするように、当たり前のように使われようになりました。

では、そもそもソーシャルデザインとはどういうものなのでしょうか。今回の牛ラボマガジンでは、社会課題解決の歴史を紹介するとともに、これからのソーシャルデザインについて考えるヒントを探っていけたらと思っています。

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社会課題解決の歴史

「ソーシャルデザイン」を直訳すると「社会設計」です。「社会」とは何かと考えれば、人間の誕生以降はずっとソーシャルデザインの歴史と言えるかもしれません。ですが、今回の記事ではひとまず18世紀以降の社会課題解決の歴史に焦点を当ててお話したいと思います。

人間社会を大きく変えた「産業革命」は、18世紀後半からはじまりました。しかし、その産業革命では、下水道や衛生施設の整備が十分ではない都市部に人が集中したことにより、非衛生的な労働環境が行われ、結核などの感染症が流行しました。この状況の解決に動いた人々の1人が、ロバート・オウエンです。彼は、紡績工場の経営で富を得ていましたが、労働者の貧困や犯罪を個人の問題とせずに社会の問題としてとらえ、労働者たちと共に理想的な工業村を作りました。住環境の整備はもちろん、9歳未満の労働禁止や16歳以下の少年工の労働時間を12時間に制限する労働法の改正、また、教育施設の建設をするなど、社会問題の解決に精力的に取り組みました。現在その工業村は「ニュー・ラナーク」の名で世界遺産に登録されています。

その後もウィリアム・モリスを中心としたアーツ・アンド・クラフツ運動や、ル・コルビジェによる都市におけるオープンスペースの確保や歩車分離といった理想都市の構想など、産業革命によって発生した社会問題に取り組んだ活動が生まれていきました。

しかし、これらは長年のあいだ一部の人間が取り組んでいたにすぎず、社会問題が一人ひとりの問題意識として変わったのは、1992年の「環境と開発に関する国際連合会議(通称、地球サミット)」でしょう。当時の連合加盟国のほぼ全てが参加し、その後の京都議定書にも繋がったこの会議は、地球の環境問題に対して私たちがどうしていけばいいのか、その課題を身近なものとしました。

日本において大きくそれが一般に広まり、行動するまでに繋がったのは、1995年の阪神淡路大震災です。この震災をきっかけに、ボランティアへの参加が多様な層に広まりました。
1980年代から日本国際ボランティアセンターが設立されたり、「ボランティア休暇」を取り入れる企業が現れたりするなど、その関心が高まっていく中、阪神淡路大震災では地震発生後の13ヵ月間で約140万人が活動したと推計されています。阪神淡路大震災で初めてボランティアに参加する人も多く、炊き出しから情報提供まで多岐にわたる活動内容は注目を浴び、1995年はボランティア元年と呼ばれています。

この震災後、特定非営利活動法(NPO法)ができ、社会課題の解決に取り組む市民活動の法律が日本で初めてできました。現在では5万を超えるNPO法人が活動しています。
また、もう一つ忘れてはいけないのが、2011年の東日本大震災です。この震災は、福島原子力発電所の事故は自分の暮らしが社会の問題と繋がっていることを痛感し、当たり前のように存在していたインフラについても考えるきっかけとなりました。
その年の世相を漢字一字で表す「今年の漢字」では「絆」の一字が選ばれ、人と人とのつながりや地域コミュニティを再認識した人も多かったのではないでしょうか。

その後は日本におけるインターネットの人口普及率も80%を超え、さまざまな情報に触れ、さまざまな人と関わり合うことが簡単になりました。しかしそれにより、多岐にわたる社会課題が浮かび上がってきたようにも思います。
たとえば、女性の社会進出や少子高齢化における問題は従来から言われていることでしたが、心理学的概念である「HSP」や、セクシャルマイノリティーを表す「LGBTQ+」のように、より一人ひとりに対する解像度をあげて、誰もが暮らしやすい社会を目指すようになりました。それと同時に、同じ問題を抱えている人、同じ課題解決をしたい人が知り合い、共に解決へと動くこともできるようになりました。

そして、2020年2月に世界的に流行した新型コロナウイルスも、みなさんご存じの通り、私たちの生活に大きな変化を与えました。都心から地方への移住やテレワーク、ワーケーションなどの考え方も広まり、私たちの生活スタイルの変化からまた新たな課題が生まれつつあります。産業革命がもたらした都市一極集中ですが、現在ターニングポイントを迎えているのかもしれません。

これからのソーシャルデザイン

歴史の一部の簡単なご紹介になってしまいましたが、18世紀後半には環境問題、労働問題が主だった社会課題も、現代では、法整備や災害、ライフスタイルの変化により、多岐にわたるようになりました。
私たちは、課題解決の成功事例を学ぶだけではなく、現代社会のそれぞれの課題と向き合い、それぞれの課題解決に対しての適切なデザインをしていかなければいけません。

社会課題に取り組む市民が増えてきたといっても、課題はまだ多くあります。多くの市民団体は、仕事や家事の合間を縫って活動しているため、その時間もお金も人も足りないことが多いといわれています。課題解決のためのデザインの手法も探りながら見つけていくことになります。しかし、市民による視点やその活動の自由度は、行政にはない大きなパワーです。私たち一人ひとりがその自覚を持って、自分にできることをやっていく必要があります。
一方で行政には、法令や制度を知り尽くしており、組織力や広報力、さまざまな用途の施設を所持しているという、強みがあります。さらに、そこに企業が参加したらどうなるでしょうか?ソーシャルデザインに長けている企業が、市民や行政と協働しながら取り組むことができれば、三者の長所を生かしながら、より良い生活を考えることができそうです。

カリスマ的な社会主義者を主導として課題解決に取り組んできた産業革命以後から、現在では市民一人ひとりが社会課題に向き合う時代になりました。そして、さまざまな課題が散見されるようになった今、その取り組みも多種多様なものが求められます。市民・行政・企業は、自分たちのできることを考える良い時期なのかもしれません。

ウシノヒロバもソーシャルデザインを考える企業のひとつとして、さまざまな関係者の方々と協力し合いながら、自分たちにできることをこれからも続けていきます。

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(執筆:伊藤紀慧、編集:山本文弥)