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キーワードは「I’m OK. You’re OK」——稲葉俊郎『いのちは のちの いのちへ』を読んで

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。

今回は、医師である稲葉俊郎さんの『いのちは のちの いのちへ』という本を読んで考えたことをお届けします。
この本では、稲葉さんの考える「いのち」について、自然とのかかわり、安らぎの感じ方、こころの健康などさまざまな角度から書かれています。
私たちもウシノヒロバを通じて、訪れる人たちのこころの健康に貢献したいと考えています。そういった点で、この本にはたくさんのヒントがありました。

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一度、立ち止まってみる

著書である稲葉さんは、序文のなかで、

この新しい世界を生き延びていくうえで、私たちの暮らしすべての面において、一度立ち止まり、深呼吸をして、まったく新しい価値観で考え直す必要性に迫られている。

と語っています。
この本では、単に病気を治すとか、怪我を治すとか、そういったことではなく、「めまぐるしく代わる現代において、どうすれば豊かに暮らすことができるのか。そして、豊かさとはいったい何なのか」ということについて、ひたすら書かれています。

たしかに大切なことのような気がします。お金があるだけでは幸せになれない、とはいえ格差も確実に存在し、お金に困って不幸せな人も多い。これではいったいどうしたらいいのかわかりません。このまま社会を走り続けても同じことの繰り返しになりそうです。稲葉さんの言うように、私たちは一度立ち止まる必要がありそうです。

「避難場」を持つということ

第一章のなかで、

人はひとりでは生きられない。だからこそ、人と人とが集い合う場において、「優しさ」や「思いやり」のような善意が循環するような場の中で助け合い、補い合い、支え合うことで社会や共同体をつくってきた。

とあるように、稲葉さんは「場」——それも優しさが循環する場——を大切にしています。この本のなかでは、たびたび「場」に関する記述が登場します。
象徴的なのは第二章の、

例えば、疲れた時、ふと気持ちを切り替えたい時に思わず立ち寄る場所。趣味であったり、好きなもの、熱中するものであったり、童心に帰れる場所であったりもするだろう。そういう場所を求めて旅に行く場合もある。その人にとって特別な場はそれぞれ個別に異なるだろう。
もし、今現在の生活の場、職場、人間関係の場、そうした場の中で息苦しいと感じられることがあれば、そうした一時的な「避難場」は誰しも必要だ。

という箇所です。

社会学者の宮台真司さんも、ことあるたびに「社会にはホームベースが必要である」というようなことを言っています。これは安心する場所、いつでも帰ることができる場所のことです。
社会のなかで生きていると、どうしてもつらいことや悲しいことがあります。そんなときに、ずっとそこにいてはこころが壊れてしまいます。だからこそ「避難場」が必要です。それは決して敗北ではありません。健全な休憩、気持ちの切り替えです。
ひとつの場所で一生懸命にがんばることは美しいことだと思います。しかし、それは同時に、危ないことでもあります。そこで何かあったときに、どうしようもなくなってしまうからです。だから、多くの人間には、避難場が必要なのです。

また、稲葉さんは同じ章のなかで「安心」ということの重要性も説いています。仏教では「幸せ」のことを「安心(あんじん)」と言うそうです。このように、安心と幸せには密接なつながりがあります。
避難場やホームベースは、もちろん安心が前提です。そういった安心する場を持つことが、それぞれの幸せのヒントになるのかもしれません。

「I’m OK. You’re OK」

お互いが存在を肯定し合える「I’m OK. You’re OK」の対話の場を基礎として、新しい場はきっと芽吹いてくる。どんな人でも、ただ生きているだけで肯定される場。生きているだけでよかったと思える場。私もあなたも無条件に存在を肯定される場。そうした場は、「I’m OK. You’re OK」というあなたの態度を”種”として、いつでも、どこでも、どんな時でも芽吹いてくるのである。

最後に紹介したいのは、上記の一文です。この文章のなかで言われている「I’m OK. You’re OK」は、ウシノヒロバも大切にしたいと思っている考え方のひとつです。
ウシノヒロバには、「訪れる一人ひとりの自律性を尊重する」という約束があります。まだまだ足りない部分もたくさんありますが、いつ、どんな人が訪れても、「I’m OK. You’re OK」と言える場を目指して、日々さまざまな改善を続けています。
世の中にはいろんな人がいます。そして、いろんな人がいるからこそ、世界は素晴らしい。お互いがお互いを尊重し、そのままを肯定し合える世界、そんな世界の実現に少しでも貢献したいと思っています。

稲葉さんは医師、ウシノヒロバは牛が暮らすキャンプ場、まるで違うと思うかもしれません。ですが、「場」と「場の持つ力」を大切にしたいという考えは同じです。そして、「豊かさ」に貢献したいという目的も同じです。だから、この本の中にはウシノヒロバにとってたくさんのヒントがありました。

優しさが感じられ、その優しさが感染するような場所になれば、きっとそこは安心する場所になるはずです。安心する場所は、人々に安らぎを与え、幸せの実感を運んでくれるかもしれません。

ウシノヒロバがそんな施設になるように、これからも勉強と改善を続けていきたいと思います。

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『いのちは のちの いのちへ ―新しい医療のかたち―』稲葉俊郎
https://www.amazon.co.jp/dp/4877588086

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(執筆・編集:山本文弥)