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お肉を食べることが当たり前ではなくなる日がやってくる

みなさん、こんにちは。牛ラボマガジンです。牛ラボマガジンでは「牛」を中心としながらも、食や社会、それに環境など、様々な領域を横断して、たくさんのことを考えていきたいと思っています。

今回は、昨今社会課題としてあげられている「2050年のタンパク質危機」について、調べたことや考えたことをお届けします。
人が健康を維持するために必要な栄養素であるタンパク質。人の体は(水分を除外すると)約60%がタンパク質でつくられており、体の基盤となる栄養素となっています。そのタンパク質を多く含む食糧といえば、お肉や魚や卵、また、大豆製品などが思い浮かぶのではないでしょうか。
体の基盤となる栄養素のタンパク質。そしてそのタンパク質を含む代表的な食材の「お肉」。そのお肉が、2050年には当たり前のように食べられなくなると言われています。

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タンパク質の需要と供給のバランスに向き合う

増え続ける人口に対して、限りのある資源。国連の調査によると、地球の人口は2030年に約85億人、2050年には約100億人に到達すると予測されています。そして、人口の増加に加えて、中国、インド、南アフリカといった国が経済的に豊かになることで肉類を食べる人が増えることも影響し、肉類の需要は大きく跳ね上がると言われています。
そういった予測から、GDP増加による食生活の向上(特に肉食化によって)、2050年にはタンパク質の供給が追いつかなくなる「タンパク質危機」がやってくると、社会課題として話にあがるようになりました。

この危機から逃れるためには、持続的に生産量を高めていかなければいけません。しかし、現在の畜産方法では大量の穀物が必要になります。
例えば、牛肉生産では、生産される牛肉の約10倍の量の飼料用穀物を用意しなければいけません。また、牛は健康を維持をするために、食べた分と同じだけの物質を排泄しています。そして、排泄時に必ず生じるのが、「熱」です。この熱には、メタンガスや温室効果ガスが含まれており、地球温暖化を促進する環境問題のひとつと言われています。

また、畜産のための飼料用穀物をつくるには、土地の拡大が必要になります。しかし、土地を増やすと森林が破壊されてしまうという問題もあり、肉の生産量を高めようとすると、土地も資源も追いつかなくなってしまうのが現状です。
このような課題だらけの状況のなかで、どのようにしてタンパク質の生産を増やしていけば良いのか。否定的に考えるのではなく、持続可能性のある畜産のありかたを考える動きが、いま世界中で進んでいます。
そのなかでも、タンパク質危機への対応策として挙げられているのは、消費者の意識と行動の変革と、代替食品の普及です。

新しい食糧を選択するということ

消費者の意識と行動の変革のひとつとして、昨今「菜食主義」や「ビーガン」という言葉をよく目にするようになりました。ビーガンは、卵やチーズ、魚なども含む動物由来のものを一切口にしない人のことで、2017年頃から急増し、日本の飲食店でもビーガン向けのメニューを取り入れるなど、徐々に浸透しはじめています。

ビーガンになるきっかけは、宗教上の理由や健康のためなどさまざまではありますが、環境問題への関心の高まりが理由のケースも多いと言われています。2018年にイギリス・オックスフォード大学が中心となって行った研究では、ベジタリアンの食事にすると63%、ビーガンの食事にすると70%、温室効果ガスを削減できると発表されています(出典: Plant-based diets could save millions of lives and dramatically cut greenhouse gas emissions )。
消費者側も、畜産業が地球温暖化や資源の減少に影響を与えているという事実を理解することで、動物性の食生活から植物性の食生活に変えようと行動に移す人たちも増えたと言えます。

ただし、植物性の食生活は環境にやさしい反面、健康上の問題について専門家の間で議論が続いています。ビーガン向けに作られているフェイクフードには、加工された原材料を多く使用しています。また、動物性食品なしではタンパク質不足になりやすいなど、加工品の摂取量や栄養素のバランスを意識しないといけないことが多いのが現状です。(参考: ヴィーガンの人気YouTuber、動画で魚を食べていたことがバレて炎上

そこで、最近では植物性だけでなく、動物性にとって変わる代替タンパク質の研究や開発も進められています。注目を浴びているのは、昆虫や藻類です。
昆虫を食べる習慣のない国や地域の人たちにとっては、驚きや精神的な障壁が大きいかもしれません。しかし、研究によると、これらは高タンパク質でありながら他の栄養値も高いという結果もでています。
昆虫食に対する精神的な障壁の大きな理由は、見た目にあります。だからこそ、その問題をクリアできるように、日々の食生活に取り入れやすくなるよう製品販売をしている企業も少しずつ増えてきています。
植物性の食糧だけではなく、新しい食糧を選択する日は、もう近くにやってきているのかもしれません。

食糧について、立ち止まり考えてみる

近い将来起こると予測されているタンパク質危機に備えるため、私たちには新しい食生活スタイルの確立を求められています。そのために今できることは、「地球と畜産と人が健康であり続けられる持続可能な食は何か」を考え続けることではないでしょうか。
研究や製品開発が発達し、私たちの食生活の選択肢と自由は広がっています。その中から、最善の選択はなにかを考え、行動に移してみる。いまはまだ唯一の答えがあるわけではありません。だからこそ、これから、世界中の人たちが多角的な視点や自由な発想をもって食の未来を考え、サステナブルなあり方をつくりだしていけると良いと思います。

私たちの食卓に当たり前にならんでいた食糧が、食べられなくなる日がやってくるかもしれない。だからこそ、好きなものを食べる幸せを感じる時間を大切にしながら、食の未来について考えてみる時間を、みなさんと一緒につくっていきたいと思います。

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(執筆:中野 綾子、編集:山本 文弥)