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「能力があるけど評価されない人たち」の人的資本を高めると何が起こるのか――Reelu今野珠優氏が描くビジョン

こんにちは、千葉道場ファンドです。

千葉道場ファンドは、新卒向け就職活動のためのスマホアプリ「Reelu(リール)」の開発・運営を行う株式会社Reeluに出資を行いました。Reeluは、TikTokなどのSNSで利用が広がる「タテ型・短尺動画」をダイレクトリクルーティングに活用したサービスです。

Reelu代表取締役CEOの今野珠優しゅうさんに、千葉道場ファンドのベンチャーキャピタリスト木村拓哉がお話を聞くこの対談。後編の今回は、Reeluのサービス内容、今野さんと千葉道場ファンドとの関わり、今後の展望について語っていただきました。

(前編はこちら)


書類ではわからない、カルチャーフィットを感じ取れる

木村拓哉(以下、木村):Reeluのサービスについてもう少し聞かせてください。対象ユーザーを新卒者に特定したのはどのような理由からでしょうか?

今野珠優(以下、今野):そもそもこのプロダクトの着想は、私の友人が転職活動で困っていたことがきっかけでした。彼女は共感性や人間関係構築能力が高いのに、書類選考での評価が低いために、なかなか思うような転職ができていませんでした。彼女のような求職者が評価されるように、書類で表出されない人の能力や可能性を見える化する手段はないかという発想で、動画を活用するサービスを考えつきました。

ですから最初は、ホスピタリティ産業向けの中途採用でやろうと思っていたんです。ただ、スマホを使いこなし、インカメラでの動画の使い方に慣れているのは、やはり若い世代、Z世代です。そう考えると新卒向けのサービスにまずは特化した方がいいだろうと判断しました。したがってプロダクトの設計も、若い世代の行動様式にバチバチにはめていく必要があると思っています。Webサイトはなくアプリのみで展開するのもそういった理由からです。

木村:学生が動画内で語る内容を、「#最近うれしかったこと」「#最近ハマってること」などに指定している理由は何でしょうか?

今野:学生と企業、両者の関係性をちょっとずつ温めながら面接までたどり着けば、より本質的な面接ができると思っています。その前提に立つと、関係の起点となる動画は、対話のアイスブレイクの役割を果たす必要があります。ではどんなアイスブレイクがいいんだろうと考えて、これらの質問を設定しました。ただ、質問内容はもう少し詰める余地はあるのかなと思っています。

木村:β版の導入企業からはどのような評価を得ていますか?

今野:動画を見ることで、学生の雰囲気や、自社とカルチャーフィットしそうかどうかがわかるというお声をいただいています。

私は前職で採用担当をしていた時、書類では相性が良さそうと思って面接に呼んだのに、対面で話すと1分で「なんか違う……」と感じてしまうことがよくありました。それなのに面談は残り25分も残っている。きっと相手の求職者も同じように「なんか違う……」と思いつつ、面談時間が過ぎるのを待っていたと思います。そんなムダを15秒の動画でなくすことができると思っています。

木村:もし求職者がカルチャーフィットしそうなふりを装って面接を受け、その結果入社できたとしても、後々不幸なことになりますよね。それよりも、15秒の動画で自分をさらけ出して、そんな自分と本当にカルチャーフィットする企業に就職した方が本人の幸せにつながると思います。

今野:本当にその通りです。それにエンジニアやデザイナーの力量は、これまでの実績や作品ポートフォリオを確認すればある程度は判断できます。しかし、新卒をはじめとしたポテンシャル層はそのような手段がありません。だからこそカルチャーフィットするかどうかが大事なんです。ポテンシャル層の人柄を知るには動画が最適だと考えています。

特定技能外国人の採用にも動画が役立つ

木村:Reeluでは、企業が動画を見て学生をスカウトしたら、その後はチャットでやりとりできる仕組みになっていますね。このチャットに「120文字以内」の制限を設けた理由は?

今野:これは学生インターンから出てきたアイディアです。彼らが言うには、「長すぎるメッセージが長すぎると読まない」とのこと。他のスカウトアプリも調べてみたのですが、スクロールしなければ読めないくらいのメッセージが送られてくるのが普通です。長いメッセージが来ると、かしこまってしまい、学生も返信しにくいんです。だからテンポ良くやりとりできるよう、120文字に制限しました。

木村:チャットをチャットらしく使うことで、会話のキャッチボールが生まれるようにしたんですね。リクルーティングでは定番の「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)を、記入項目に含めなかった点も教えてください。

今野:現在の3年生、つまり24年卒の人たちは、入学と同時にコロナ禍に見舞われて、授業はオンライン、課外活動はできない、サークルできない、留学も行けないという学生時代を過ごしてきました。だからガクチカがないんです。そんなに彼らに使ってもらうためにはガクチカは不要と考えました。

そもそも、ガクチカは必要なのかという疑問もあります。ガクチカをつくるために、みんな留学に行ったりインターンに行ったりしますが、自分のアイデンティティを伝える手段は、そのような立派なものである必要はないんです。15秒の動画の方がよほど伝えられます。

木村:新卒向けに以外では、外国人採用向けにも展開するとのことですね。

今野:日本で働きたい特定技能外国人の領域のうち、介護や宿泊関係の企業で働く方を想定して、サービスを提供しようとしています。国籍は主にベトナムやインドネシアを想定しています。東南アジアは若い世代が多くスマホを使いこなしているので、スマホを活用したリクルーティングサービスのほうが求職者を集めやすいといえます。

外国人の採用にハードルの高さを感じている企業も、まずは動画を見てもらえば、心理的な距離が少し縮まるのではと考えています。書類ではわからない日本語能力も、動画ならある程度は判断できるはずです。

千葉道場というコミュニティの価値

木村:今回、Reeluは千葉道場ファンドから資金調達をされました。今野さんは前職の時にも千葉道場に関わっていましたね。どういう経緯だったのでしょうか?

今野:Fun Group時代の元CEOが、諸事情で千葉道場の合宿幹事を務められなくなり、それでCOOだった私も参加して、合宿幹事をやらせていただいたんです。合宿に参加した時はすごく衝撃的でした。「こんなに自己開示できる場があるんだ!」と感動して、めちゃくちゃ泣いちゃったくらいです。

木村:そうだったんですね。資金調達のプレスリリースにいろいろな投資家が応援メッセージを寄せていたように、今野さんは多くの方にサポートされている印象があります。そういったコネクションも千葉道場で培ったものでしょうか?

今野:もちろんです! 千葉道場のコミュニティに入り、多くの経営者とお付き合いしたことでネットワークが広がりました。会社を経営していたら、人に言いにくいこと、迷うことがたくさんありますよね。そんなことを何でも気兼ねなく相談できる人たちばかりが集まっているのが千葉道場だと思っています。

リリースを出した時、知人に「千葉道場ってどこが良かったの?」と聞かれて「コミュニティだよ!」って答えました。私は起業したら一番に千葉道場ファンドにお声掛けすると決めていたのですが、それもコミュニティに入りたかったからです。

木村:前職で参画した時の満足度が高かったから、起業後にもまたお声をかけていただけたんですね。僕たちもとてもうれしいです。

日本の人的資本の底上げに貢献したい

木村:Reeluで今野さんが成し遂げたいことは何でしょうか?

今野:ちょっと話は飛躍しますが、私はシンガポールを作ったリー・クアンユー(同国の元首相)をすごく尊敬しているんです。シンガポールはすごく小さい国ですが、教育に力を入れ、人的資本の価値を高めることに努めました。だからシンガポールのビジネスパーソンは、英語や中国語でのコミュニケーションができて、非常に優秀で信頼できる人たちばかりです。

そうやって人的資本を向上した結果、企業誘致に成功し、アジアの経済的なハブになって、結果的に国力が上がっていったのだと理解しています。国力を上げるために、人って大事な要素なんです。

一方で日本では、転職活動に苦労した私の友人のように、すごく優秀なのに、既存の書類選考のフォーマットに乗ると評価されづらい人たちがいます。そういった人の人的資本を上げる役に立ちたい。それができれば結果として、日本の国力を上げることにつながると思っています。

木村:能力があるのに機会がない人たちがフル活用される状況になれば、すごく良い社会になりそうという期待があります。

今野:そうだと思います。将来的にはReeluのグローバル展開も考えています。私は前職でインドネシアの事業をした時に、現地人のガイドを30、40人採用して、彼らにとても助けられたことがあります。一方、特定技能外国人を積極的に受け入れる政策がある中、日本で働きたいという東南アジアの方々もいます。かつてお世話になった東南アジアの人たちにお返ししたいという思いもどこかにあり、そのためにReeluができることはあると考えています。

木村:Reeluの海外展開も楽しみですね。本日はありがとうございました!

文:平 行男
編集:斉尾 俊和


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