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カラーボール野球の備忘録(始動の巻)
うちの会長は毎回そうだ、いつでも無計画でぶっきらぼうなのだ。
「ちょっと市役所行ってきますわ。」
恋人や伴侶でもあるまいし逐一そんな報告は不要だと思いつつ、生活における必要な手続きや更新の類があるのだろうと思い「はいはい」と生返事をふわりと投げ返した。
「スポーツ推進課の偉い人が5人と館長が来るらしい。」
「はいはい」の後に「はい!!?」を追加して投げ返した。
数日前までカラーボール野球をどこで開催するのか話し合いをしていたのだが、屋外だと風の影響を受けやいすいという事と球技禁止の公園が多いという事実が発覚した。グラウンドを借りるのにも団体登録が必要という慢性的な友人不足に頭を抱えている私達には、大きすぎる壁がそびえ立ち、八方塞がりで話し合いが前に進まなかったのだ。
「体育館なら天気も時間も気にしなくて良いよな?」
うちの会長は毎回そうだ、いつでも無計画でぶっきらぼうなのだが意外と的を得た事をいつも言う。
「まぁたしかにそうだけど。」
怪しいチーム名を引っ提げた謎の男が、よく分からない競技を体育館で行いたいという申請なんぞ大人達が許可する訳も無いだろう。撃沈確定の会長へ「ダメだったとしても誠意を見せてきておいで。終わったら傷心会を開こう。」と送り出した。
ほとんど幼馴染に近い存在なので会長の性分は熟知している。
彼は見た目によらず人見知りで建設的なディスカッションは苦手だ。それに付け加えて人見知りを悟られぬ様、何故か堂々と胸を張る癖がある。動物の威嚇的な物なのであろうと数十年その行動を横目に過ごしてきたが、今回は一人で大人達に囲まれてプレゼンをしなければならない状況なのだ。文字通り絶対絶命だ。
傷心会の会場を抑えるべく行きつけのお店へ電話をして席を確保した。
「まぁよく頑張ったよ」「よく思いついたよ」「とりあえずお疲れ様」「また考えよう」という慰めテンプレートを脳内にインストールしていた矢先、会長から着信が来た。
「よく分かんないけど許可取れたよ。」
若輩者ではありますが、誤解を恐れずに言わせて頂きます。
大人の方々、こんな怪しい人に許可を出してはいけません。ちゃんと話は聞きましたか?見た目も申請内容も書類選考落ちさせないとダメですよ。という心の声が漏れない様に一応会長に状況確認を行う事にした。
どうやら会長なりに、周囲への配慮を行う事と安全性をPRしたらしい。実際にカラーボールとプラスティックバットを使用して頂き、大人の方々にプレーをして頂いたらプレゼンそっちのけで、カラーボール野球という競技を楽しんで頂き、絶賛されたらしい。
多額の賄賂を積んだり、恫喝をしていない事にほっと胸を撫で下ろし傷心会改め、祝勝会会場で合流し、日本松茸なんちゃら同好会の幕開けにグラスを交わした。
「とりあえずやってみないとルールも分からないし、やりながら楽しい事考えようぜ」
うちの会長は毎回そうだ、いつでも無計画でぶっきらぼうなのだが意外と的を得た事をいつも言う。
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