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ミニマル/コンセプチュアル展@DIC川村記念美術館

「ミニマル/コンセプチュアル:ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960–70年代美術」@DIC川村記念美術館(千葉県佐倉市)
https://kawamura-museum.dic.co.jp/art/exhibition/

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今回の展示の主人公は、フィッシャー・ギャラリー。
ドロテ・フィッシャー(1937-2015)とコンラート・フィッシャー(1939-1996)夫妻が、1967年にデュッセルドルフで開設しました。展示では、このフィッシャー・ギャラリーが、1960〜70年代にかけての英米圏の現代美術で果たした役割を史的に再考するコンセプトとなっています。

冷戦下のドイツ、アメリカと現代美術の関係とか、色々と興味深いですが、現代美術のアーティストや作品について、「ギャラリー」「ギャラリスト」の切り口でみなおすと、現代美術史に新たな地平が開かれる、、といった仮説を展示で実証している気がします。ミニマル/コンセプチュアルアート的で、力強い批評性を感じさせる展示でした。

現代美術そのものが批評性を存立基盤としているゆえんでしょうか。ヨーロッパ的モダニズムからアメリカ的なコンテンポラリズムへといたる、作品に対する批評の勝利を高らかに宣言する、静かな意思を感じさせられます。そんな知的で挑戦的なところも、勝手におもしろがりながら、鑑賞できました。カタログもいい感じです。

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個人的に心動かされたのは、会場入口にあったカール・アンドレ先生の「雲と結晶/鉛、身体、悲嘆、歌」1996です。

作品そのものはシンプルですが、実際に作品と対峙すると、鉛の立方体どうしの配置により、シンプルな中に、水の流れやゆらぎ、風の力や波紋の動きが体感される。鉛色の世界に静と動の風景が広がる。そんな奇妙な経験をしました。日本的な「見立て」の感覚を、もうちょっと力強く表現する、感じ、でしょうか。

アンドレ先生は、1967年のフィッシャー・ギャラリー開設時に個展を行った記念すべきアーティスト。コンラート先生は1996年に亡くなりますが、くしくも、アンドレ先生の22回目となる個展をフィッシャー・ギャラリーで準備中であったそうです。「雲と結晶」が発表されたのは、コンラート先生の死の一週間後にオープンしたたフィッシャー美術館での個展でした。

ともあれ、「雲と結晶」は、そんなお涙的なアネクドート抜きにも、心をゆさぶる名作だと思います。鉛という素材の使いかたに、老アンドレ先生の成熟と熟練を感じさせられました。初期作品とくらべ、創作者にとっての30年という時間の重みが感じさせられます。

作品のもつ力は批評の驕慢を乗りこえる。批評家はいつもその瞬間を恐れるべきである。そう思います。

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