小さな足跡


不安から、色んなものに手を伸ばしてしまった。


沢山の人の肩を叩き、振り向いて、助けてほしいと願った。


触手のように一旦伸ばした手はもう止まることなく、伸び続けていく。



後になって、何度後悔しただろうか。


何度、私は同じことをしてきただろうか。


そんなことも、嵐が過ぎ去り、全てをひっくり返してしまった後になって、ようやく気づくのだ。



恥ずかしい、またやってしまったと、私は一人、どこか薄暗い場所にしゃがみこんで、悔いている。



冷静になってから、荒れた野原に戻ってみた。

閑散としたその場所には、あの人がいつもと変わらず暮らしていた。



ごめん、と謝ると、その人は「また派手にやったね」と笑っていた。そして、ポンと軽く、私の肩を叩いた。


その手が優しくて、柔らかくて、緩む身体とは反対に、目の奥がきゅっとした。



何も変わらず、その場所はいつもの朝を迎えている。

私が世界中に撒き散らしたと思っていた色んな思い達は、とても、ちっぽけだった。



その人の笑顔が温かくて、眩しくて、私はまた一歩を踏み出すことができた。



小さな、小さな一歩を。



どうして、世界はこんなにも広く、こんなにも無慈悲であることを、私は忘れてしまうのだろう。



与えられたものを、返せるだろうか。


今になってもまだ、こんなにも臆病な私は、それでも今、この足で立っている。



この広い世界に。

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