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大人にも古着という選択肢

気温の上昇が始まると気持ちが上がるワンピースが欲しくなる。できればリネン素材で、洗濯は自宅でできるほうがいい。
昨年はGANNI(ガニー)の明るい色のプリーツのワンピースと、CFCL(シーエフシーエル)の袖口が壺のように膨らんでいるカフタンワンピースを買い足した。GANNIはコペンハーゲン発のブランドで、クールでスタイリッシュな服作りと多様なモデルを起用したSNSマーケティングでカルト的な人気を集めていて、CFCLはイッセイミヤケにいたデザイナーが独立して立体的なニットの服作りが特徴の日本の新進気鋭ブランドだ。個性的なシルエットの服が多くミニマルなデザインでパッチポケットなどの装飾が極力削ぎ落とされている。哲学的な服作りにファンも多い。
共通しているのはどちらのブランドも環境に配慮した服作りをブランドの大きな軸に据えており、気持ちの良いお買い物ができるところが気に入っている。

今年もなにかワンピースが欲しいなと思っていたのだけど、これというものと出会わずにいた。そんなある日、近所を自転車で走っていると、新しい古着屋さんができていることに気がついた。
入ってみると、そのお店はアメカジの古着の扱いはなく、ヨーロッパを中心としたブランドの比較的新しい古着をメンズとレディースの両方を扱っていた。価格帯は古着なのでそのブランドの新品を買うよりずいぶんと安いけれども、ファストファッションよりずっと高いといった感じだ。

私は昔から古着への憧れがあった。おしゃれな男友達はプラダやサンローランなどのラグジュアリーブランドの新品にうまく古着を混ぜて着ていて、しびれるくらいカッコよかったのだ。どういった理由でかはわからないが、経験的に古着の着こなしは相対的に男性のほうが上手い気がする。
私は都内でも比較的古着屋が多い地域に住んでいるのだが、古着屋のイメージが男性向けのアメカジやミリタリーといったものだったので(それはそれで素敵なので好きだけれど)モードな装いが好きな自分の買い物の選択肢にこれまであまり入ってこなかった。
しかしその古着屋さんは、きれいなサンローランのメンズシャツや、スタイリッシュなデザインだけどもいい感じにクタクタになったTシャツなどがきれいに店内に並べられていて、着やすそうなのだ。
そうか、古着にはこうしたカテゴリのお店があるんだなとじっくり観察して、ミリタリーだけどどこか女性らしいの雰囲気のワンピースを購入した。引きずるほど丈が長く、そのため売れなかったというそのワンピースは長身の私にはぴったりだった。誰かのサイズが私にもぴったりってなんだか素敵と思った。

くたくたのリネンが最高

このお店のおかげで、私の貧困な古着屋のイメージは刷新された。ゆとりをもってディスプレイされた店内では、商品のひとつひとつが丁寧に扱われていた。商品は確かに誰かが使用した形跡はあるけれど、大切に扱われてきた服はちゃんとそのような様子がするのだ。なにより、心地よい買い物体験ができたし、購入した後ろめたさが全くない。素晴らしい。

私はファストファッションが台頭してきた頃から、服の購入に心が疲れてしまうようになった。
商品は畳まれず山積みになった店内、乱雑に扱われたことで加速する縫製のほころび、所狭しと詰めて並べられている服。頻繁に行われるセールによって、売り場はさらに状況が悪化する。そのうちファストブランドのサイズ感がわかるようになれば、店舗ではなく通販を使うようになった。誰からもリスペクトされずに消費されていくものは見ていて大変悲しい。加えて、アパレルはとにかく環境負荷が高いことが明らかになって、近年では安い服を買いすぎた人の捨てた服が、途上国の繊維産業を廃れさせている。鬱過ぎる。
私は大人なので配慮のない買い物はできないし、とはいえ服は好きで定期的に欲しくなる、これらの問題を古着は一挙解決することにハッとした。

メルカリなどの個人売買での買い物は玉石混交なので、その中から良いものを選ぶにはスキルが要るように思うし、特に服はそうだと思う。しかし、セレクトショップのように間にバイヤーが入って、きれいにプレスされた商品に仕立て直してくれるような古着屋の存在は、もしかしたら大人世代にはちょうどいいのではないか?と、今更ながら感じている。ちょこちょこ商品が入荷するらしいので、スーパーの帰りにこまめにお店を覗いてみようと思う。


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