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ステップ/重松清 を読んで

久しぶりに重松さんの本を読みました。

娘が1歳半の時に、妻が亡くなってしまった男性の子育てと人間関係についての話です。
母子家庭は割と多くおりますが、父子家庭はそんなに多くはない印象。

重松さんの作品は、なんでもないありふれた人々が出てくる作品が多く
どこにでも居そうな人。それが、とてもリアルに描かれています。
自分の近くに存在しているような、そんな気さえする重松さんの描く人たち。時には重いテーマで、時には誰しもが体験するような出来事で色々な思いをさせてくれる作家さんです。
それでいて、とても読みやすい文体。

ステップに出てくる娘も義理の両親も、本当にどこにでも居そうな人です。
娘と息子を持つ義理の両親は、娘を亡くしてしまい、息子も結婚はしているものの、なかなか子供が授からず不妊治療をしています。原因は奥さんの方にあるみたいで、奥さんの方がうつ病になってしまったり。
そのため亡くなった娘の子供が、二人の唯一の孫で猫かわいがりをしています。
それをありがたいと思いつつも、少し重いとも感じる主人公。
いつか再婚した時に、義理の両親との付き合い方をどうすればいいのかと不安を感じる日々。

義理の両親と、義理の兄、その辺の話が中心になっていて、自分の方の両親の話も読みたかったなぁと少し思いました。

成長する娘との距離感、嬉しさと悲しさ。
成長するとともに出てくる母親の死に対する娘の言葉。
その年齢ごとに現れる、女性とのかかわり方。
男性ならではの仕事との付き合い方。
そのどれもが、それぞれの心情を丁寧に描いていて
この家族を知っているような気になります。

最後の章では、義理の父親が亡くなる寸前の描写なのですが
主人公もある女性と再婚をし、義理の両親にも会ってもらって祝福されます。
ポロポロと涙が出てきました。

大切な人を亡くした、それぞれの家族が、寂しさは消えないけれど
それでもゆっくり前に進んでいく。
そんな、とてもいい物語でした。


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