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香港大学交換留学記(早稲田国教・2021年~2022年)


始めに

初めまして、ちひろと申します。
2021年9月から2022年4月まで、早稲田大学国際教養学部から香港大学に交換留学をしました。ポストデモとコロナ禍という特殊な時期での留学だったため、多くの方が想像するような交換留学とは、少し異なった体験をしました。

2024年9月よりイギリスの修士課程に進学する節目であることや、今年香港に留学する方々からの問い合わせが増えている時期でもあるため、これを機に、私の香港大学での交換留学経験を公開することにしました。

本留学記は、交換留学が終わった数か月後に早稲田大学の留学センターに提出したものです。どなたかの参考になれば幸いです。

授業について

設問 1 - 1 . 授業の様子を教えてください。

まず、授業は基本英語で行われる。(一部の授業は広東語で行われるらしいが、その場合はシラバスに記載されている。)

次に、難易度については、科目履修の際に入門レベルの授業を選択したり上級レベルの授業を選択したりできるので、各自のレベルに応じて調整可能。

人数については、一番少ない授業で10人、多くて30~40人くらい。上級クラスは少人数(10人以下)のものが多かった。

私は、前期は「中国語(マンダリン)」「ジェンダー学」「映画論」「香港文化論」と自身の興味に合わせて幅広く授業を履修した。後期は「中国語(マンダリン)」のほか、中国まわりの内政・外交に関する授業を履修した。授業内容や授業形態は早稲田大学国際教養学部で提供されている授業と大差はないと感じる。

留学先で初めて感じたこととしては、レポート執筆能力とプレゼンスキルにおいては、日本の大学生と比較した場合、現地の生徒の方が圧倒的に長けている、ということ(聞くところによると、中高時代に授業内でプレゼンテーションを行う機会が、日本の中高生よりも多いから、だそう)。そのため、渡航前にpowerpointやgoogle slide等の資料作成スキルを磨いたり、正しい参考文献のつけ方などを知っておきたい。

また、香港では小学校から密度の濃い外国語教育が行われるため、やはり英語力の高い生徒が多数を占める。ただ、現地生徒のみならず留学生においても、様々な言語レベルの学生が在籍している。現地生徒のみならず留学生において英語を母国語としない生徒が多数を占める環境はむしろ、英語が完ぺきではなくても臆することなく発言できるものであったと思う。

ちなみに、日本人留学生の人数については、日本人留学生及び本科生を合わせても、自身が知っている範囲では、大学全体で15人ほどである。(現地育ちの日本人や日本にルーツを持つ学生も多数いる為、正確な数の把握は難しい)

※ 科目登録は先着順である。また、登録期間内であれば変更は可能である。
であるので、登録期間の前にシラバスを参考にしながら授業履修の計画を練り、早めに履修希望科目を申請することをおすすめする。
※ 履修科目の50%が香港大学における自身の所属学部のものである必要がある。(ex. 筆者はFacluty of Artsに所属していたので、Facluty of Artsの授業を2つ、その他学部の授業を2つ履修した。)
※ コロナの感染状況次第では、オンライン授業に切り替わる可能性あり。(筆者は前期が対面、後期がオンライン授業であった)

設問 1 - 2 . 履修した科目名を全て教えてください。

<前期>
GEND1001 Introduction to Gender Studies
CLIT3025 Asia on global screens
CCGL9002 Hong Kong Culture in the Context of Globalization
CHIN9503 Chinese as a foreign language III
<後期>
POLI3059 China and the world
SOCI2077 Media, culture and communication in contemporary China
PHIL1034 Ethics and politics, East and West: an introduction to philosophy
CHIN9503 Chinese as a foreign language III

設問 1 - 3 . 一番興味深かった科目名を教えてください。

CLIT3025 Asia on global screens

設問 1 - 4 . その理由を教えてください。

アジア映画を考察する授業で、最終的には、自分で選んだ作品の映画批評を執筆した。

Capstone科目(※)であると知らずに履修してしまい、最初の数週間はその難易度に苦しんだ。しかし、上級演習であるため8人ほどしか履修者がおらず、むしろその点が良かった。
(※)Capstone 科目  - 最終学年が主に履修する上級科目群

毎週の授業では「火垂るの墓」や「パラサイト」といったアジア映画を、様々な角度から考察していった。(ex. 歴史的背景や撮影技法、言語・視覚など表現技法)

最終的には“ Seoul Searching (2015)” という、アメリカ生まれで韓国のルーツを持つ子供たちが参加したとあるサマーキャンプを題材にした映画に関して、サードカルチャーキッズをテーマにレポートを執筆した。

このクラスの素敵な点は、少人数授業であったことに加え、Dr. Aron という教授が親身に相談に乗ってくれる方であったため、毎回のディスカッションに対して毎向きに取り組めた。また、彼はランチに連れて行ってくれたり、留学後も積極的にメールにて連絡をくれたりするほど素敵な教授だったため、彼の授業はとてもおすすめできる。

※後記:Dr. Aronは既にHKUを退職しており、2024年時点で同講座は開講されていない。

授業<以外>について

設問 2 - 1 . 授業<以外>の生活の様子を教えてください(課外活動など)。

香港は寮文化が強く、各寮には日本でいうサークルに該当するsocietyが多数存在する。ただ、寮のsocietyの多くは広東語で行われるため、日本人留学生を始めとした広東語を話さない留学生には門戸を開いていないことが多々。

しかし、大学のsocietyは英語で行われるものもちらほらあるので、コミュニティづくりに入るのもおすすめ。(筆者は、Astreasというパフォーマンスsocietyに所属していた。周りの留学生は、キリスト教系のコミュニティであるlife groupや、book clubに属している留学生がちらほらいた)

他にも、留学生は留学生同士の密なコミュニティが存在したため(欧米系の留学生にその傾向が強かったのだが)留学生⇔香港人学生との交流は、盛んではないと感じた。要因は様々考えられると思う(GPAを重視する香港大生VS人生の夏休み感覚な留学生 / 言語の壁 / 現地の寮に住む留学生は少数派なため、そもそも接点がクラス外にあまり存在しない等)早稲田大学でも同様の現象は発生しているので、香港大学に限った話ではないが、現地学生との交流を持ちたい、留学生との交流を持ちたい、等の希望がもしあるならば、彼らが属しているコミュニティに、自主的に出向いていく必要があると感じる。

学生生活/Student life

設問 3 - 1 . キャンパスの環境、施設、学生支援サービスなどについて教えてください。

生徒数は早稲田の5分の3ほどで、キャンパスも早稲田の本キャンと文キャンを合わせたくらいの敷地面積。しかし、高層階な建物が多いため、見晴らしは良かった。(2022年-2023年時点では、全体で36,000人以上の学生が在籍し、約半数が大学院生だそう)

ジムや図書館等の設備のほか、Chi Wahというほぼ24時間開放されている学習ラウンジがあるため、大学の設備は非常に充実しているといえる。

学食も早稲田と同じくらいの価格帯で食べれるのと、学内に学割が利くStarbucksがあるのが嬉しい。

難点を挙げるとしたら、キャンパスが入り組んでおり、わけのわからないところに通路がある。

滞在先/Where you stay

設問 4 - 1 . 滞在先の形態を教えてください(寮(3人部屋)、ホームステイ など)。

① 前期はStudent Flatという大学の提携レジデンスに滞在していた。女性のexchange studentのみ入居可能。寝る部屋は3人で、ほかにも寝室があり、シャワー・トイレ・キッチン・リビングが共有であった。
内訳はデンマーク3、アメリカ1、フランス1、パラグアイ1、日本1(自身)であった。
② 後期はJockey Club Student Village 3 という大学の寮群の1つである、Shun Hing Collegeに滞在していた。

設問 4 - 2 . 滞在先の様子について教えてください(周辺環境、治安、大学へのアクセス、設備、他の学生の様子など)。

① 全体的に Student flatはつくりが古く、7人で住むには狭かったが、住人が女性の留学生のみで構成されているため、留学生同士のコミュニティに入りやすい。また、寮のルールが適応されないので、若干治外法権的な雰囲気はあるものの、フラットメイト次第ではとても楽しい留学生活が送れる。
ただ、デメリットとしては、現地の学生と仲良くなるには向いていないという点と、寮のイベント等には参加できないという点と、場所が若干辺鄙な場所にある、大学から出ているローカルなバス(mini-bus)に乗る必要がある為、最初の数日は苦労する点が挙げられる。

自身は幸いにもフラットメイトに恵まれ、彼女らに20歳の誕生日を祝ってもらったことは、良い思い出として記憶に残っている。

② Village 3 は留学生・現地学生から人気な寮で、full-timeの学生が入居するには高めのGPAや寮への貢献度等が必要になる。ただ、寮内のダイバーシティ担保の観点から、留学生を在籍させたがる傾向にあるので、留学生は比較的入りやすいと、現地の学生から聞いたことがある。

申請時には1人部屋か2人部屋かを一応選べるが、1人部屋は人気なため希望が通りにくい。筆者は、パラグアイ人のfull time studentと同室であったが、部屋のスペースが2人部屋だと広いため、ストレスなく過ごせた。

フロアには約15人ほど住んでおり、階ごとに男女分かれている。シャワー・トイレ・リビング・キッチンは共用。フロアによって雰囲気が異なり、フロアメイトが親密な階もあれば、そうでない階もあるそう。

Student Flatと同様、ルームメイトとの相性にもよるが、静かな環境が好きであれば、こちらの方がおすすめである。

※ 基本的に前期・後期で寮は変えられない。自身は、元々第一希望がJockey Club Student Village 3であったが、希望が通らなかったため、student flatに住んでいる間はwaiting listに載っている扱いであった。
※香港はアパートの家賃が世界でもかなり高い部類に入る為、寮の希望申請が来たら早めに申請することをおすすめする。大学の寮及び提携レジデンスも漏れてしまった留学生の友人の一部は、Facebookよりルームシェアをする相手を見つけ、寮費が高額にならない工夫をしていた。

その他/Other

設問 5 - 1 . 参加プログラムのお勧めのポイントを教えてください。

香港大学は世界ランキングで30位以内に位置するほど優秀な大学であるため、レベルの高い学生とともに学ぶことができる。(2025年度版のQS世界大学ランキングでは17位)

また、留学先というとやはり欧米が主流だが、中華圏ながら英国統治時代の面影を色濃く残す、アジアと西洋が混ざり合った文化圏である香港に留学するのも私的には、面白い体験であると感じる。

言語面では、まず大学内では英語が必ずと言っていいほど通じるため、中国語・広東語ができなくても最低限の英語力があれば生活には困らない。ローカルなスーパーや屋台に行くと広東語しか通じない場合があるが、そうゆう時でも身振り手振りで何とかなるのと、近くの人が大抵助けてくれるので何とかなる。

生活スタイルも日本と似ているので、香港のみならずアジア圏の留学は筆者の経験からも、かなりおすすめしたい。

設問 5 - 2 . 留学を通じて得た成果を教えてください(主に学習面。もしあれば精神面、生活面も)

学習面:授業に関しては、国際教養学部にいたときと同じくらいの熱量で取り組めたと思う。成果としては、HSK4級を帰国後に取得できた。(渡航前はHSK2級)難しさを強いて言うならば、昨今の香港を取り巻く政治情勢的に本来自身が深く追求したかった2019年のデモ関連の話は授業ではほぼ扱われず、ディスカッションでも中国本土の生徒と香港の生徒で緊張感があったため、常に発言内容に配慮をしていた。だが、むしろそのような緊張感を肌で感じられる環境に身を置けたことが、国際情勢を理解する上での大きな糧になったと感じる。

精神面:留学中数回はホームシックになったが、時差が1時間であるため気軽に日本にいる友人や家族に連絡ができ、すぐにリカバリーを図れたと感じる。

生活面:香港はかなり親日な場所であるため、日本の商品が街中にわんさかある。そのため、生活する上で困ったことはとくにはなく、中華はおいしいため、満足のいく食生活を送れた。日本よりも温暖な気候であるため、暖かい場所が好きな自身にとっては好都合だった。

設問 5 - 3 . 成功談・失敗談・辛かったこと・楽しかったことなど、後輩の参考になりそうなエピソードがあれば教えてください。

日本人商工会議所の学生チームとしての活動が自身にとって、香港の留学生活をより実りのあるものにするのに大きく貢献した。

活動内容としては、香港大学・香港中文大学・香港理工大学に在籍している日本人の本科生及び留学生がそれぞれ3~4人で構成されるチームに分かれ、香港を取り巻くビジネスについて考察する。

全体で5つのテーマがあり、自身は「国安法がビジネスにどのような影響を与えているか」について研究を重ねた。

活動の面白い点としては、商社や金融、報道や食品など様々な業界で仕事をされている人と直接お話ができ、その際に業界ごとで香港の見え方に共通項だったり違いだったりがあることを発見できることである。

商工会での活動は、多角的に香港を見ることを可能にしてくれた。また、香港いる日本人の学生との交流もできるので、もし機会があれば非常におすすめである。

また、早大生であれば稲門会、慶應生であれば三田会があるので、もし早慶の方であれば、活用してもても良いかもしれない。(筆者は、稲門会が毎年開催しているトラムパーティーに参加した際、現地で働いている方と繋がることができたのは、今後のキャリアプランを考える上で、有益であったと感じる。余談だが、現地で働いている日本人の方は、金融系が多いと感じた。)

設問 5 - 4 . 現地で生活していくうえで後輩の参考になりそうなヒント・TIPS・注意事項などがあれば教えてください。

① 香港は学生であると交通費が半額である。ひいては、Octopus Card という交通ICカードの学生版を早めに申請することをお勧めする(通常、渡航後に大学から案内がくる)
② 香港は確かに温暖な気候だが、冬に関しては日本よりも暖房の設備が整っていない場所が多く、寒い。また、秋でも冷え込む日があるため、日本から厚手のジャンパーを1枚ほど持っていけると安心。
③ ローカルの学生や中国本土の学生に、迂闊にデモの話をしないことをお勧めする。ある程度仲良くなってからだと話してくれる場合も多いが、彼らにとってもリスクのある話なため最初からは避けたい。

終わりに

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

もし、追加で何かお聞きしたいことなどありましたら、以下のアドレスにご連絡いただければと思います。

kawachihiro5032@gmail.com
linkedin

また、私の留学体験について、過去に早稲田大学の留学アドバイザーからインタビューを受けました。同時期に香港城市大学に留学した同期の話も記載されていますので、ぜひご参照ください。


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