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『接吻』他/クリムト(ベルヴェデーレ宮殿)inウィーン

クリムトの有名すぎる『接吻』がウィーンにあるのにまだ見に行っていなかったことが、今の私には信じられない。

クリスマスが終わった1月の平日でも人に囲まれていたので、斜め横から撮影。夏は人垣ができていたのではないだろうか。

私は版画みたいな技法が使われていると思っていて、勝手に小さいサイズだと思っていた。が、しかし実物はかなり迫力のある大きさだった。隣に写り込んでいるドアのサイズと比べるとかなり大きいとわかってもらえると思う。金色の部分はちゃんと金箔のようで、浮き彫りのように見える部分はまるで金継ぎのようだった。この絵の前で絵と同じようにキスをして写真を撮っているカップルまでいた。周りの人だかりも気にぜず堂々とやってのけていて、逆にすがすがしいくらいだった。絵の話に戻ると、この絵の女性は少し恥ずかしそうな表情をしていると初めてわかった。この絵は上から下へ見ていくと、キスしているカップル→金箔&金継ぎパッチワーク→野花の絨毯と続いていて、かなり盛りだくさんにギッシリ詰め込まれているのに、うるさいとも思わないしとかお互いに邪魔しておらず見事な一体感に感動しかない。クリムトの美意識がこの緻密な世界観を作り上げていて私たちもその中に入ってしまう。対面する絵というより取り込まれる絵だと思う。帰ってきてから地球の歩き方を読んでいたら、ウィーン市内のクリムトの自宅には浮世絵のコレクションがあったとのこと。いろんなモチーフが織りこまれたこの『接吻』は、色鮮やかな着物を眺めているような感覚にも確かに近い。

そして私が1番好きになったのは、『フリッツァ・リートラーの肖像』というこの絵。

金色と銀色が共存。

女性の背面にあるオレンジ色の壁にポツポツとある、銀色の小さな四角。近づいてみたら銀色の下に青色がチラッと見えた。専門知識はないのでよくわからないが、この下色というべき青色のおかげで、銀色が銀色になっている。そして絵の左側には縦に金色が走っているのに、銀色と上手く馴染んでいる。ためしに指を縦にしてこの金色の箇所を隠して絵を見たら物足りない感じがしたし、銀色がグレーのように見えてしまう。この金色は銀色のためにあるんだと私はそう感じた。

そして個人の所蔵で期間限定で展示されていた『アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 II』。

春が一気にやってくる。

またまたこの絵も着物のように緻密な作りになっている。女性の左には仏像、そして右側には馬がいる。クリムトの絵はぱっと見では気づかない細かな仕掛けがある。クリムトの作品はゴールドがよく使われている印象があるが、この絵の眩しさはスミレや桜を一気に連れてくるようでクリムトのイメージがいい意味で覆された。

それにしても1月のウィーンは寒すぎる。ニットキャップを被らないと脳がやられてしまう。ニットキャップ、革のブーツ、手袋は忘れてはいけない。私はなぜかマフラーを忘れてしまい、ウィーン市内であわてて買い求めた。防寒対策は念入りに!

ベルヴェデーレ宮殿の内部が美術館になっている