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舞台『組曲虐殺』(2019)を観劇して《2》

この文章は、『組曲虐殺』のキャスト・神野三鈴さんのファンが、『組曲虐殺』(2019)の開幕前、公演中、閉幕後に感じていたこと、考えていたことを忘れないために、記録しておくものです。

ほぼ自分用ですが、観劇された方とまたこの作品についての想いを共有できれば幸いです。

※全3回

舞台『組曲虐殺』(2019)

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《2》公演期間中のこと

10月6日天王洲銀河劇場から始まり、福岡、大阪、松本、富山と地方公演が行われ、12月1日の名古屋にて大千穐楽となりました。
10月12日の2公演、台風19号の影響で中止となってしまいましたが、それも含めた41公演、本当に本当におつかれさまでした。

本当にいろいろなことを考えた約2ヶ月のこと、ほんの一部を記録します。


《2-1》初日

10月16日。

久しぶりのモノレールにドキドキしつつ(ちょっとこわい)、初めての銀河劇場へ。

まず、たっくさんの公演祝いのお花たちに胸が高鳴りました。

組曲虐殺神野さん宛のお花

💐映画『37セカンズ』スタッフ

💐TBSテレビドラマ制作部スタッフ(『せいせいするほど、愛してる』、『小さな巨人』、『ブラックペアン』等)

💐キムラ緑子さん(映画『駆込み女と駆出し男』、映画『日本のいちばん長い日』)

💐永野さん(映画『MANRIKI』)

💐松平健さん(ドラマ『せいせいするほど、愛してる』)

💐音月桂さん(舞台『オレステイア』)

💐斎藤工さん(映画『blank13』、映画『TATAMI』、映画『MANRIKI』)

💐河瀨直美さん(映画『光』、映画『VISION』※小曽根さんが音楽担当)

・・・右下はわたし。てへ。


組曲虐殺公演初日

初日は、最前列の端っこ。

あぁこれがかの有名な(?)銀河劇場の見切れですか〜!…なんて言っている余裕などあるはずもなく、とにっかく緊張していました。

今から、あの、組曲虐殺を、観るんだ…

どの作品でも、初日は会場の空気も自分自身も、独特な緊張感と高揚感に満ちているものですが、こんなガチガチになるのは初めてでした。

公演期間中の相棒として購入したグッズのガーゼハンカチも、開演前から強く握りしめていたので、とてもさっきおろしたばかりとは思えないようなものになっていました…



カーテンコールの喝采を、忘れることができません。

さまざまな感情の拍手が入り乱れていたように感じました。

ひとつひとつ、共有していく。共有はいつしか共鳴になっていく…話の流れ、笑いどころ、泣きどころがわかっている人も多くいたはずの初日…改めて、ひとつひとつを大切に共有し、生まれ育まれた先の一体感…本当に感動的でした。

わたしはといえば、本編でもまあ泣いて泣いて泣き倒したのに、カテコでのキャストのみなさんの表情で、もっともっとこみ上げてしまい…もうぐっちゃぐちゃ(ガーゼハンカチも)。涙ってこんなに重かったっけ?

家で映像を繰り返し繰り返し見ることより、やっぱり1回の観劇だ!これから天王洲アイルへの通勤(語弊がある)がんばるぞ!と決意を新たにした初日でした。


《2-2》観劇記録

組曲虐殺チケット

●天王洲銀河劇場(東京)
10月6日(日)マチネ  1階A列 上手側
10月10日(火)マチネ 2階BOX7
10月14日(月・祝)マチネ 1階I列 下手側
10月19日(土)ソワレ 1階C列 下手側
10月20日(日)マチネ 2階BOX3
10月26日(土)マチネ 1階G列 上手側
10月26日(土)ソワレ 1階C列 センター
10月27日(日)マチネ 1階C列 センター

●オーバード・ホール(富山)
11月22日(金)ソワレ 1階C列 センター

●御園座(名古屋)
12月1日(日)マチネ 1階A列 センター

持っていたチケットは12公演分。台風で2公演中止のため、10公演の観劇となりました。

神野さんファンクラブゆっくりでご手配いただいたのは4公演分。
あとはコツコツと増やしました。

お譲りいただいたチケットの中には、井上芳雄さんのファンクラブ専用のピクチャーチケットが。
半券返却不要とのことでしたので、ありがたく頂戴しました。
いいなぁピクチケ。羨ましい。デジチケも増えてきたけど、やっぱり残るのいいですよね、ただの紙切れだとしても。

地方の民なので、まあがんばりましたいろんな意味で。
当然、もっと観たい気持ちはありましたが、これが今のわたしの気力、体力、財力の限界でした。

回数重ねることが最善とは思っていませんが(1回の観劇で人生が変わることもある。あった。)、前回書いた通り、今作はできる限り通いたかったし、何度も観て考えたかったので、後悔はありません。


《2-3》スペシャルトークショー

10月10日マチネ公演後、スペシャルトークショーが行われました。

組曲虐殺スペシャルトークショー

印象に残ったお話をまとめました。わたしなりの解釈が含まれた文章となっていることをご了承ください。

※席順(下手側より)

こまつ座・井上麻矢さん(司会)、小曽根さん、神野さん、高畑さん、井上芳雄さん

★井上芳雄さん
・多喜二さんは享年29。初演時は自分も30歳で年齢も近かった。今年、自分は40歳になったけど、あの時代の29歳は、現代の40歳くらいの感じだから、歳を重ねてこの役を演じるのは良いことかも。

・小曽根さんのピアノは毎回違って、ピアノの音を頼りにすると全然違う曲!?と思うこともある。ピアノと会話している。

・「体ぜんたいでぶつかって書きましたか」…この台詞に支えられてきた10年。初演のときは必死で、全力でやってます!という感じだったが、今回は、演出の栗山さんと「力だけの話じゃない、すべてをオープンにしてさらけ出すことも、”体ぜんたいでぶつかる”ということじゃないか」と話した。


★神野三鈴さん
・初演のメンバーは同志のようなかけがえない存在、そこに今年、萌音さん、土屋さんが加わってくれた。

・キャスト、スタッフ、観客がこんなに1つになれる作品はあまりない。

・台詞が、7年前の再演のときよりリアルに感じる。今の話をしているような気がする。

・『パブロフの犬』が好き、歌ってみたい。

・「体ぜんたいでぶつかって書きましたか」…この台詞をいつも自分に問うている。明日死んでもいいように生きているか?と。


★高畑淳子さん(※当日急きょご参加)
・ピアノの音を聴けば音は取れるよ、と小曽根さんにアドバイスもらったが難しい…。

・曲は全部好き。

・若い頃「井上作品に出たい!」と思っていた。

・雲や木みたいな野放図な役者になりたい。


★小曽根真さん
・井上先生の台本の朗読に、そのままメロディーをつけたようなイメージ。

・キャストはみんな謙虚。毎回舞台袖で「今日も出来るかなぁ…」と言っている。

・ピアノの即興の部分は、キャストのその日の演技やセリフの最後の声からインスピレーションを受けて弾いている。

・いくらいい芝居をしても、それを観て感じ取ってくれる観客の感性がないと成立しない。井上作品は、「自分の感性を大切にして」というメッセージが込められていると思う。


言葉のひとつひとつが、本編の続き、台詞のようで美しかったです。

心からこの作品を愛して、体ぜんたいで演じて、届けてくださっていることがひしひしと伝わってきて、本当に嬉しかったですし、感謝の気持ちでいっぱいでした。

そして、小曽根さん・神野さんご夫妻の貴重な公式ツーショットに、密かに大興奮だったことを、しっかりと記録しておかねば。

同じ想いで表現の道を歩み、表現者同志として高め合い、本当にらぶらぶなおふたり…わたしの永遠の憧れです。


《2-4》ふじ子さんの"かけがえのない光景”

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作品については、いろいろな考えが頭をめぐりました。

語るポイントが多すぎる作品なので、やはりわたしは、神野さんが演じた伊藤ふじ子さんに絞って記録をしておきます。

2幕の終盤、多喜二、チマ、瀧子、ふじ子、山本、古橋が、それぞれの"かけがえのない光景”について、ぽつりぽつりと語るシーン。
その中で、ふじ子さんの話は、他のみんなと比べると(比べるものでもないのだけれど)、ちょっとだけパンチに欠けるのかな、なんてことを思っていました。

でも、誰よりも強さを感じる…はて、これはなんなんだろうな、と。


観劇を重ねる中で、「ふじ子さんは、真っ当な表現活動ができる世を、誰よりも望んでいる人なんだ」という、わたしなりの着地点を得ました。

自分の信じる仲間と共に創る作品で、ちゃんと台詞が言える、役を生きられる、自分の表現を発信できること。

そして何より、小林多喜二の言葉が、世の人々に、きちんと届くこと。

わたしにも、だいすきで信じている人たちとその表現、自分自身の表現したいものがあって、それらなしでは生きていけない。それが脅かされる世の中なんて、とても考えられない…

そう思ったら、ふじ子さんの”かけがえのない光景”と、独白の最後「もう許せないと思いました」の強さが理解できたし、心から共感しました。

ふじ子先輩、やっぱりかっこいいです。
そして、その強さを魅せてくれる神野さんも、やっぱりかっこいいです。


《2-5》愛情と共感

神野さんがかっこよく、そして、共感度が高かった役で、ひとつ思い出話。

わたしが神野三鈴さんのファンになったのは、舞台『カッコーの巣の上で』、神野さんは、あのこわ〜い婦長のラチェッド役でした。

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なぜ神野さんが気になったかというと、ストーリー的には敵のはずのラチェッド婦長に、めちゃくちゃ共感しちゃったから、です。

カッコーも複数回観劇したのですが、最初はもう、あの婦長こわいし感情振り切れてるしロボットか…くらいに思ってたのに、観る度に、婦長への共感度が高まっていったことを覚えています。

婦長も婦長なりの考えと想いと立場と正義があって、それを全うしてるだけだよな…それってすごいかっこいいし、よく見るとめちゃくちゃ人間味溢れてるし、ちゃんと、ひとりの女性じゃん…!

その気づきを得られたのは、神野さんがそのようにラチェッドを解釈し、深い愛をもって演じてくださったからだと、わたしは思っています。


ふじ子さんも、ストーリー的には敵…とまでは行かなくても、やっぱり大半の人の目には、多喜二さんと瀧ちゃんの仲を割って入る人、と映ってしまう…最初は。

でもきっと、ストーリーが進めば進むほど、ふじ子さんのことも応援したくなっていくはず。

そういう脚本だから、と言ってしまうこともできますし、その要素も十分にあるとは思いますが、やっぱり、神野さんが伊藤ふじ子という役に対して、深い愛情と強い共感をベースに表現してくださっているということも、ふじ子さんを好きになれる大きな理由だと、わたしは思います。

改めて、神野さんの演じるふじ子さんをこの目で観ることができて、本当に本当に、幸せでした。


最後はもう神野さんだいすきnoteになっちゃいました。満足です。

次で最後、これからのことを記録します。それではまた。

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