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アメリカ文学から感じる「風土」東西南北

ひょんなことから、アメリカ南部を舞台にした小説を立て続けに読むことになり。
「なんだか、似てるなぁ~」と感じたことがあったので、少し視野を広げて、アメリカ文学から私が感じた「風土性」を東西南北にざっくりわけて記しておこうと思い立ちました。
書き進めるにあたり、自分にとって、なにか新しい発見があるかもしれません(笑)

■南部 ~追憶~

まず、南部。

読んだ本は、Tカポーティ―の日本語で翻訳されてる全ての作品
フラナリーオコーナーのすべての作品
Tウイリアムズの「ガラスの動物園」「欲望と言う名の電車」「薔薇の刺青」
そして、今読んでいるのが、Wフォークナーの「八月の光」。

キーワードは「追憶」かなと思いました。

なぜなのでしょうね、彼らの小説に「追憶」が色濃く宿っているのは?
わかりません。
そして、エミリーディッキンソン(←この人は東部)がどこかで書いてた
「思い出はすべて薄桃色」という言葉が彼らの作品すべてに通じるような気がします。

■東部 ~他者理解~
強い印象を受けたのがサリンジャー、アーウィン・ショー。
あ、二人ともユダヤ系でした。ニューヨークで活躍した方たちです。
ニューヨークといえば鮮明にイメージされるのがサリンジャーのすべての作品です。都市生活者というキーワードかもしれません。

また、これは「東部」というより「ユダヤ系」だからかもしれませんが、意外に「家族」の関係が物語の重要なファクターになっていることを感じます。
「ライ麦畑でつかまえて」「ナインストーリーズ」はもちろんですが、「フラニーとゾーイ」そして、「大工よ、屋根の梁を高く揚げよ」なども、大都市・ニューヨークに住んでいる雰囲気をすごく感じます。なかでも「フラニー」の電話のシーン、そして「大工~」のタクシーのシーンは、N.Y.ならではと。
ナインストーリーズ内の短編「笑い男」は主人公がスタッテンアイランドに住んでいる、というところが味噌かなとも思います。東京で言えば二子新地的な(笑)。神奈川ですが。
本来は、東部をニューヨークだけで片付けたくないのですが、サンプルがあまりにも少なく(←つまり私が読んでない)、その少ないサンプルの中で、私は共通性を見出すことはできませんでした。
ご勘弁を。

■中部 ~虚無の真っただ中~
これも茫洋としています。広すぎるからです。
ですので、シカゴあたりを中心に考えるのですが、そうすると結構、後のアメリカの文学に影響を及ぼした重要な作家はいるのです。
なかで、最も気になるのは、ヘミングウェイです。彼は、世界をまたにかけて活動したので、「中部」というと意外な気がする人もいるかもしれませんが、短篇集の主人公「ニック・アダムス」他、彼の初期の作品は、シカゴはじめミシガンなどまぎれもなく中部(五大湖沿岸)が舞台で、その風土性を色濃く感じます。
なかでも、「二つの心臓をもつ大きな川」「殺し屋」「拳闘家」などの名作は、他のエリアでは誕生しなかったのではないでしょうか?
自然というキーワードでしたら南部にも感じるのですが、南部の作家からはついぞ感じられない「水分」を感じるのです。「湿り気」ではなく、DEW(水滴 ※早朝の草原の草の葉についてる滴)な感じ。
それら「中部だからこそ」の味わいを確かめるには、たぶん「似て非なるもの」である、彼の第一次世界大戦でイタリアに滞在したことで生み出された掌編(スケッチ※短篇集作品の間に挿入されています)と比較すると、よりアメリカ中部時代との違いが鮮明になると思います。タッチは極めて似ている(いわゆるハードボイルド)ので、比べ易いのです。

■西部 ~蘇生への望み~
中部がヘミングウェイに限って私がつけたいキーワードが「虚無の真っただ中」または「喪失」であれば、西部は、「虚無からの蘇生」とでも言ったらいいか。
すいません、サンプルが偏っています。
これは、ロスマクドナルドとスタインベックによるところが大きいです。
ロスマクドナルドは、ヘミングウェイと同じハードボイルドであり、かつ、探偵諸説の宿命で、「死」や「犯罪の動機」というネガティブな要素が必ずある小説群ですが、おもしろいのは、主人公のリュウ・アーチャーがまとっている心象風景が「あたり一面真っ暗な夜の湖面でも、ほんのわずかに月の明かりを受けて一瞬輝く漣(さざなみ)の光」を感じさせるといった印象です。漆黒の闇オンリーでないところが、それっぽいのです。かといって、よくある「ほんとはあいついい人だよね~」的な安っぽい感じでは断じてありません。読者の中には気づかない人もいるのではないかと思えるくらい一瞬の漣かなと。
また、スタインベックは「怒りの葡萄」「二十日鼠と人間と」「赤い小馬」などからわりとはっきり「蘇生」が読み取れますね。というか、ダメージからの人間性の回復そのものがテーマのような気がします。ちょっとおもしろいなと思ったのは、「怒りの葡萄」です。オクラホマから西に西にと移動しながらストーリーが進み、西海岸であの有名な人間の希望を感じさせるクライマックスシーンが登場するからなおさら、そんな気がします(笑)。象徴かもしれません。

以上です。今回は「文学」限定でしたが、音楽、映画など各ジャンルでできたら面白いな~。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました

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