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初心者のための天文講座~天体について その7 太陽系外縁天体~

ここは初心者の方に向けてお話をしています。
中には細かいところの説明を省いたりしているところが多々あります。
そこのところご了承ください。

前回は彗星についてお話ししました。天体についてのお話もいよいよ最後です。
それではここまでをおさらいしてみましょう。

天体とは、「宇宙空間に存在する天然の物体」のこと。
そして天体は恒星・惑星・準惑星・小惑星・衛星・彗星・外縁天体などに分類されている。
恒星とは、自らが光やエネルギーを放つ巨大なガスの塊で、夜空で輝く星々や太陽が恒星の一つ。
惑星とは、恒星を公転する岩石・ガス・氷などの天体のこと。
準惑星とは、太陽の周囲を公転し、惑星と衛星以外で球形を保っていられる大きさの天体のこと。
小惑星とは、他の天体に比べるとごくごく小さくて不定形な天体だが数は膨大に存在。ほとんどは火星と木星の間に存在してるが、たまに惑星の軌道周辺にいたり、大きく楕円軌道を取ったりしていたりする。
衛星とは、惑星などの周りを周回する岩石や氷でできた天体。ひとつの惑星にひとつではなく、持たない惑星もあれば何十個も存在していることもある。
彗星とは、主に氷や塵などでできており、その氷や塵・ガスなどの構成成分を大きく放出し、尾を形成する太陽系内の小さな天体の事です。
楕円軌道により太陽に近づいたあと、大きく太陽から離れるのが特徴。

おさらいも長くなってきました。それでは最後のお題、外縁天体についてお話していきましょう。

・外縁天体とは

一般的には太陽系外縁天体と呼ぶこの天体とは、惑星の中で一番太陽から遠いところを周回している海王星の外側で太陽の周りを公転している天体の総称です。
2006年に定義された言葉なので、比較的新しい用語となっています。
英語では "trans-Neptunian object"と言い、直訳した海王星以遠天体と呼ぶこともあります。
惑星から外された準惑星の冥王星も太陽系外縁天体の一つになりました。
外縁天体は主にふたつのグループに分けられます。ひとつはエッジワース・カイパーベルト。もうひとつは散乱円盤天体です。

・エッジワース・カイパーベルトとは

1930年の冥王星の発見後、海王星軌道の外側(太陽系を平面上に捉えて円とみなした外側の縁の領域)には、多数の小天体が分布しているという仮説を1943年にエッジワースという天文学者が、1957年にカイパーという天文学者が唱えました。このころはまだ想像だけで、そこにこういった天体が存在するといった確証のないものでした。
天体の生成が海王星軌道でピタリと止まってしまうのはおかしいから小天体が存在しているはずだ、ということですね。
この仮説は1980年代まではほぼ議論されることもなかったようですね。
それが仮説として再浮上してきたのはコンピュータを使ったシミュレーションを行ったことで、彗星の起源がこの領域にありそうだという事が示唆されてきたからでした。

そして運命の時が来ました。
1992年8月30日。冥王星とその衛星であるカロンの発見以降、海王星の外側で初めて天体が発見されました。この瞬間、仮説は仮説ではなくなり、太陽系外縁天体が事実上生まれました。(定義となったのは先にお話しした通り2006年です)
初めて発見された天体は「アルビオン」。この名前は2018年につけられたもので、当時は「1992 QB1」と符号が付けられました。

この発見以降、エッジワース・カイパーベルトにて発見された天体は数千個を超えるものとなっており、直径が100kmを超えるものだけでも10万個以上存在するのでは、と言われています。

2006年に制定された定義では、「太陽系の海王星軌道 (太陽から約30天文単位) より外側からおよそ 50天文単位までの黄道面付近にある、天体が密集した穴の空いた円盤状の領域」となっています。
噛み砕いてみましょう。
「海王星の通り道がある約30天文単位(太陽から地球間の約30倍の距離)から外側へ約50天文単位(太陽から地球間の約50倍の距離)の間にある、地球から見た太陽の通り道付近にある、天体がたくさん集まったドーナツのような形の領域」
書いててよくわかりません。ごくごく簡単に言うと、「海王星の外側にある天体の集まり」でいいと思います。

上記に出てきた「黄道面」とは、地球上から見た太陽の見かけ上の通り道を現した円を「黄道」と言い、その円の面を現したものが「黄道面」です。

エッジワースカイパーベルト

・散乱円盤天体とは

イメージとしては、エッジワース・カイパーベルトの外側に分布する天体の集まりです。
エッジワース・カイパーベルトは公転面がさほど傾いておらず、軌道が比較的安定しているものがほとんどですが、散乱円盤天体は大きく傾いているものが多く、軌道も不安定となっているのが特徴の一つです。
この軌道の乱れはほとんどが海王星によって乱されると考えられています。

散乱円盤天体傾斜

緑の線がエッジワース・カイパーベルトの天体の公転傾斜で、青の線が散乱円盤天体の公転傾斜です。

この散乱円盤天体はどのようにして形成されていったか、どのような特性を持つのかなど、まだまだ謎に包まれています。。

・オールトの雲との関係

彗星のお話の時に出てきた「オールトの雲」のことを覚えているでしょうか。
長周期彗星が太陽から一番遠くになるのが太陽から1万~10万天文単位の距離のものが多いことを発見し、この位置に小天体が多く集まり、彗星が生まれる領域がある、というもので、いわば彗星の生誕地と考えられる領域です。リンクを貼っておきます。
初心者のための天文講座~天体について その6 彗星~
オールトの雲があると考えられる領域は太陽から1万天文単位から10万天文単位の間と考えられています。となると、エッジワース・カイパーベルトがあり、その外側に散乱円盤天体があり、さらにその外側にあるのではないか、ということなのですが、これはあくまで仮説であり推測されたもので、実際のこの想定領域で彗星の元となるような天体は発見されていません。

・太陽系外縁天体の探査

太陽系外縁天体を対象にした探査は、現在のところNASAが行っているニューホライズンズのみです。
2016年に打ち上げられ、2015年に冥王星に接近・観測を行い、2019年にエッジワース・カイパーベルトにある天体「アロコス」に接近・観測を行いました。

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・まとめ

なかなか馴染みのない言葉が飛び交う太陽系外縁天体のお話、どうだったでしょうか。
それでは簡潔にまとめてみます。

太陽系外縁天体とは、海王星よりも遠い距離で太陽の周りを公転する天体の総称で、エッジワース・カイパーベルトと散乱円盤天体と呼ばれるふたつの領域に分けられる。

以上で長い長い天体の分類のお話が終わりました。この分類の中に含まれるお話は最低限の物しかしていません。細かいものはまだまだ存在します。
いずれ機会があれば触れることもあるかもしれませんね。

それでは次回からは太陽系の恒星・惑星にひとつずつスポットを当てて掘り下げていこうと思っています。
まだ何も構成されていないため、もしかしたら次週はお休みさせていただくかもしれません。
それでは、再来週、できれば来週にお会いしましょう。

寒波により、各地に被害が出ています。被害に合われた方々にお見舞い申し上げます。
くれぐれも体調を崩さぬよう、ご自愛くださいませ。

ここまでご覧いただきありがとうございます。
ぜひ次回もよろしくお願いします。

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