日直日誌〜モモレンジャー編〜

皆さんは「日直日誌」を覚えていますか?
日直だけが書くことを許される、特別なノートです。
僕は学生時分から馬並みの承認欲求を持っていたので、日直日誌でいかに個性を出せるか、試行錯誤していた記憶があります。

そこでふと、さまざまな業種の日直日誌を想像してみたらどうだろう?と思い立ちました。
今回は、戦隊ヒーローの紅一点・モモレンジャーの日直日誌を覗いてみたいと思います。

1月25日(月)晴れ

【時間割】
1限 準備
2限 戦闘
3限 片付け・撤収
4限 関係各所への挨拶回り
(給食)
5限 集金
6限 ミーティング

1限 準備

緑が遅刻してきた。
ウチの戦隊では3回遅刻をするとアジト内全部を一人で掃除する決まりになっているが、緑は今年度もう8回目。しかし持ち前の愛嬌でか知らないが、免除されている。
そろそろボスにちゃんと話に行こうと思う。

機材をクルマに積んでいる最中、青が私の荷物を持ってくれた。どうやら私に好意を抱いてくれているらしい。
でも言えない。こないだの戦闘の打ち上げで赤と良い雰囲気になり、そういう感じになったなんて。
女一人の職場は女の煩わしさとは無縁だが、誰にも相談できないというデメリットがある。
いかん、戦闘に集中しなくては。注意力が散漫なまま戦闘に臨めば平気でケガをする。

2限 戦闘

怪獣は時間通りに地球へやってきた。
このへんの話は省く。プロレスを想像してもらえるとありがたい。
ごくごく薄めの予定調和は存在しているが、あくまで真剣勝負というテイ。それを口には出さないという暗黙の了解のもと、私たちは成り立っている。
今日の怪獣は、女の私にも容赦なく攻撃してきた。たぶんまだキャリアが浅い。
ベテランの怪獣は女性隊員には手加減してくれる。かといって全く攻撃しないわけではない。全員が平等にピンチっぽい感じを演出してくれつつ、最後に必殺技でやられてくれる。
どんな世界にも、その道のプロというのは存在する。

3限 片付け・撤収

戦闘で使った機材は、全てのパーツを回収するまでは帰れない。飛行機の整備士たちがネジ一本無いだけで徹夜で探すのと一緒だ。
機材は精密機械であり、損壊のたびに修理している。パーツも特殊なものばかりで、失くすと高くつく。まして買い換えるとなると高級外車では利かないぐらいの値段である。
なのでこの時間は皆びっくりするほど喋らない。
緑が片付けているフリをしてタバコ休憩に行ったのを見た。絶対ボスにバラしてやる。

4限 関係各所への挨拶回り

戦闘場所をお借りした地域の皆さんへの挨拶回り。眠くてほとんど記憶にない。

(給食)

今日の献立はカレー。黄色がはしゃいでいて、仕事に真面目な人だなと思った。

5限 集金

戦隊ヒーローがどのように資金繰りをしているのかというと、国民からの集金である。
テレビがあり、私たちの戦闘を観られる環境にある家は「治安維持料」を毎月振り込む義務がある。
未納の家には、私たちが直接押しかけて納入を促す。
ハッキリ言って地獄の時間だ。
「お前らがいなくても地球は平和だ」「怪獣とのプロレスで金を巻き上げる詐欺集団め」。
そんな罵声を浴び続ける。これがツラくて辞めていった隊員もたくさんいる。地球の平和を守るのは決して容易なことではない。

6限 ミーティング

戦闘のVTRを観ながら、今日一日の反省。
それぞれの人間性は、この時間でよく分かる。赤は積極的に意見を飛ばしていた。本当に尊敬できる。
青はどちらかと言うと調整役。正義感で突っ走りがちな赤のブレーキをしつつ、皆との調和を図る。
緑はずっと居眠りしていた。殺そうと思う。
黄色はムードメーカーで、議論が紛糾しそうな場面でカラッと笑いを取ってくれる。一番相談に乗ってほしいタイプ。
私はそんな男たちにグイグイ引っ張ってもらう。他の戦隊では女性が赤レンジャーになったり、時代の変化を感じる。でも私にそんな度量は無いし、せめてこの中では可憐な女でいたい。
どんなに遅くても17時には解散する。残業がないのがこの仕事の唯一の利点。18時には帰宅して、韓国ドラマを観ながら大好きな焼酎を飲む。土日は休みだし、手当も充実している。
まだまだ辞められそうにない。

以上、モモレンジャーの日直日誌でした。
だいぶ赤裸々に書いてくれましたが、次の日直が読むことを忘れているのでしょうか?

(完)

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