家族の都合と医者の都合
11月7日 一度はじめた治療はやめられない、と医者から断言される。
分かっていたことだった。意識があるうちは点滴を続け、意識がなくなったらやめる。というのが私の考えだったが、医師には有り得ないと一蹴された。
「私たちは一度始めた医療行為を止めることは、できません。」
「それは、この状況では安楽死と同じかもしれないし、もしくは殺人と同じかもしれないから。」
「私たちは人を救うために医者になったんです。一度命を延ばして、もう満足したから点滴をやめて命を故意に無くすなど、できません。意識のあるなしに関係なく、患者は生きているんです。」
一つ一つの言葉が重くのしかかった。この主治医を持って、父親は幸せ者だと思った。そして、私たちも。
点滴をはじめたら、亡くなるまでずっと続ける。どんどん痩せていく父親を見るのはつらいだろう。だが、痛みを伴う鼻の栄養チューブや、胃瘻はしないことで、やはり家族の意見は一致した。また、痩せて骨のような体になり自然に亡くなるより先に、肺炎や感染症で亡くなるケースの方が圧倒的に多いという。
来週火曜に、もう一度主治医と父親の最期について話し合う。この日中に方針を決められなければ。父親はまだ意識がある。この時間を無駄にはできない。
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