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ペーパーレスが本質ではない

ケムファクと申します。
普段はプラントの技術者向けのブログを書いています。

製造現場において未だに紙帳票を利用していることが多々あります。
そんな中、現在はペーパーレスの風潮が強くなっており、導入を進めている方も多いと思われます。
自身の経験も踏まえてペーパーレスの価値について考えてみました。

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単なる紙の削減を超えて

「ペーパーレス=紙で記録している帳票を電子化すること」としてイメージされがちです。その結果、紙を無くすことが目的化される事例も珍しくありません。ただそれだけで済ませてはいけません。

製造現場でよく使われる帳票として、例えば製造記録や点検記録、品質検査記録が挙げられます。
これら帳票のデータは製造にかかった様々な時間、製造条件に対する品質の関連性など重要事項を見るために欠かせない要素です。

国内の電子帳票ツールとしてはi-Reporterが有名です。大塚商会の価格情報では、月々約10万円かかります(クラウド版・10ユーザー・保存容量20GB)。
せっかく投資しているのであれば最大限活用できるような考え方をしなければなりません。

ペーパーレスの真価

ペーパーレスには、紙を無くす以外にも様々な効果があります。
むしろ、ここで挙げる内容の方が本質的な効果です。

  • 作業順序の統制:作業順序を守らないと工程が進まないように統制を強化できます。

  • 実績の自動収集:記録内容がそのまま電子データとして残ります。

  • データの精度向上:電子帳票は入力ミスや漏れを減らし、データの精度を高めます。

  • リアルタイム性の向上:記載内容は連携システムに反映されます。データのリアルタイム性は、迅速な意思決定を可能にします。

  • 改ざん防止:ログの記録や写真により晶析を残せます。アカウントを分けることで誰が記載したのかも記録が残ります。

つまり、投資をする際に「用紙代」や「紙に書く手間」に対する効果金額だけで判断してはいけません。
工程を最適化したり、品質を向上させたりと原価や売上に大きく貢献できます。

なぜ紙にこだわるのか?

年齢関係なく、製造現場で電子帳票を使うのに抵抗を持つ方は一定数いらっしゃいます。

暑さ・寒さ・振動・油汚れ・化学汚染など製造現場の厳しい環境は、デバイスの汚染や故障のリスクを高めます
そのため、安定的に使うために”産業用”と名付けられるような機器が多用されます。つまりタブレットも堅牢なものが選択されがちです。そのような機器は高価なため、結果的に紙が好まれます。
ただ個人的には、デジタル機器は清掃ができるため、汚れたら元に戻せない紙よりも優秀だと考えています。

また人の問題も避けては通れません。年齢や技術への慣れ不慣れによる操作の困難さも、電子帳票の導入において考慮すべき要因です。変化を好まない方も一定数いらっしゃいます。
このような方々には説明・支援により慣れてもらうしかないと思います。むしろスマホも普及した昨今、慣れていない方でも教えたら意外とすぐ使えるようになった経験が多数です。
面白いことに、デジタル化推進で一番役に立ったのは人とのコミュニケーションでした。

最終的に人が記録することから脱却する

ペーパーレス化に伴いタブレットに記入するようなシステムを入れたとします。それでも入力漏れ、ミス、まとめ書きなどの問題が無くなるわけではありません。

最終的には人が介在して記録することを止めるべきです。人的要素を減らすことで、データの一貫性と精度が向上します。それはつまり分析に使うデータの質が向上します。
「データ分析は前処理が8割」と言われるほど、データの質にこだわります。極力ノイズを減らせることが理想的です。

まとめ

ペーパーレス化は単に紙の削減を超え、作業順序の統制、データ精度の向上、リアルタイム性の強化、改ざん防止などの多くのメリットがあります。
導入の際は上記の部分も視野に入れてシステム導入を考えてみてください!

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ブログ「ケムファク」

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