見出し画像

言葉にできるは武器になる -言葉にできないのは考えていないのと同じ-


目次
はじめに
なぜ言葉にできないのか?
人が動く言葉の型 5選
言葉を生み出すための7つの心構え


はじめに

 自分にとって「すごく重要なこと」だったり、「つい先日深く考えた」ということであってもとっさに聞かれると言葉にできない、ということがありませんか?
 わたしはとても多いです。頭の中が急にからっぽになって思考が停止する感覚です。
 これが起こる原因は話すことをサボってきたからだろうなという自負があります。いつ頃からか、わたしは物事を段階的に説明することや、自身が体験したことを人に話すということを辞めていた気がします。
 なに?それどういうこと?と聞かれてもはぐらかしたり、人の話しを聞くようにすることで自分が話さなくてもいい状況を作っていました。
 この行動の根底には、わたしの周りにはいつもおもしろくて明るくて、一緒にいて楽しい友人たちがいてくれたからかなと思っています。「わたしの話なんて誰も興味がない」「周りの友達みたいにおもしろく話すことなんてできない」と思っていました。
 しかし、最近わたしの話やわたしに対して興味を持って、質問してくれる人が多いことに気が付きました。もしかしたら前からそうだったけれども、気づいていなかっただけかもしれません。そういった人たちに対して「ちゃんと言葉を返したい」と思うことが多くなったため、この記事を執筆させていただきます。

 本書はコピーライターで有名な梅田悟司さんが執筆されています。
「世界は誰かの仕事でできている」「バイトするならタウンワーク」を作った人だとお伝えすれば一気に身近に感じることができるのではないでしょうか。
 
 本記事では、言葉にできない原因と、強い言葉を生み出す方法や手法についてお伝えしていきます。


なぜ言葉にできないのか?

1 「言葉は思考の上澄みに過ぎない」

自身の中で把握、理解、できていないものは言葉にできるわけがありません。
 あなたが、言葉にしたいと思っていることについて、本当に全てをわかっていますか?ぼんやりとした部分がないか、考えてみてください。

 言葉には大きく2つの種類があります。1つ目は、日常からわたしたちが発している外に向かっている言葉。もう1つは自らの中に絶えず溢れ続けている内なる言葉です。

 多くの人は、この外側の言葉だけを鍛えたいと思っていることがほとんどです。しかしこれは、テニスの練習をせずに試合に勝つ方法を教えてほしいと言っているのと同じことです。まず言葉を発する練習となる内なる言葉を鍛えなければ当然、試合にはなりません。
 自分が発する言葉は自分が考えていることそのもの。つまり、言葉にするためには「内なる言葉で思考を深め、外に向かう言葉に変換する」流れがあることを意識する必要があります。内なる言葉に目を向け、その解像度を上げるクセをつけていきましょう。 
 内なる言葉はもともとぼんやりとしたものです。意識しなければ向こうからはっきりと形づくられることはありません。「嬉しい」「楽しい」「悲しい」などは解像度が最低ラインですが、もっと詳細に、もっとあなたらしい感情がそこにはあったはずです。 
 自身の感情=内なる言葉が発された時は、それだけで終わりにせず、感情の根源へと踏み込んでいくことを大切していきましょう。 自身の感情=内なる言葉が発された時は、それだけで終わりにせず、感情の根源へと踏み込んでいくことを大切していきましょう。
 気持ちをはっきりと認識できた時、言葉は自然と強くなります。

2 「考えているようで思い出しているだけ」

 頭の中は、過去の様々な出来事や気持ちを覚えている記憶域と、新しい物事を考える思考域の2つに分かれています。
 考えるという行為は、本来思考域を使うものですが、考えが堂々巡りしているときは、意識は記憶域の中を浮遊しています。記憶を思い出す作業をしているだけでは当然、考え自体を進めることは難しいでしょう。
 考えを進めるためには、言葉を書き出し、記憶域にあるものを全て外にだしてしまう必要があります。

 就活活動のとき誰もがやるであろう自己分析を思い出してみてください。。
 「なんの仕事につきたいのだろう?」「どうしてその仕事が良いのだろう?」と様々考えたと思います。これは、大学時代や20年と少しの自身の経験を思い出している典型的に考記憶域しか使っていないパターンです。電車の中でぼんやり考えていても、堂々巡りになり中々前に進むことができなかったのではないでしょうか。
 ここから本腰いれて考えようとしたとき、自己分析ノートなるものを作ったはずです。ノートに書き出すことで記憶域にあるものを吐き出し、思考域を使うことができるようになったのですね。

内なる言葉を捉え、観察し、認識する。
 認識した「内なる言葉」を逃さず、そのままにせず解像度をあげることが考えを進めるために、日常的な訓練として認識していきましょう。


3 「人を動かす」から「人が動く」へ

 ブログやTwitterの普及により、個人が文書を発信することは多くなりました。よく筆者にも「人を動かす文章を書くにはどうすればいいか」という質問がきます。
 前提として、そもそも、言葉によって人を動かすなんてことはできません。わたしたちにできるのは「人が動きたくなる」ようにしたり「自ら進んで動いてしまう」状況を作ることのみです。
 人が動きたくなる瞬間とは、心を動かされたとき。つまり、共感や感動など感情が湧き上がったときです。

 「星の王子様」で有名なサン・テグジュペリも「人を動かす」ことと「人が動きたくなる」違いをよくわかっていました。彼の言葉にこんなものがあります。

「舟を造りたいのなら、男どもを森に集めたり。仕事を割り振って命令したりうる必要はない。代わりに、広大で無限な海の存在を説けばいい。」

 務めているベンチャー企業が安月給でも、長い労働時間でも目を輝かせながら働くことができるのは、「実現したい想い」があるからでしょう。
 加えて、その想いを事業部長が誰よりも熱く語っていたとしたら、この人のためにもう1件案件の受注を頑張りたい、という気持ちになるのではないでしょうか。

 つまり、本当の意味で人に動いてもらいたい、と思っているならば口先だけの言葉をいくらならべてもだめです。
 伝える側の人が本当に伝えたい、切実な想いこそ相手に伝わるものなのです。

人が動く言葉の型 5選


 相手に思いを伝えるにはまず、思いをさらけ出す必要があります。ここでは思いをより強く伝えるために有効な型を例を交えながら、5つご紹介します。

1 たとえる 比喩・擬人

 坂本龍馬が放った、「今一度日本を選択致し候」という言葉。
これは「日本を新しくしたい」ということですが「洗濯」という言葉を用いることで、「今まであったものを失くす」という意味や「きれいさっぱり一掃する」といった意味が想像でき、理解を深めることに成功しています。

 さらに、この「例える」という手法は自分の得意分野と合わせて使うことで、より深みをもたせることが可能です。

「みんな子どものときは妖怪です。」

 これは、ゲゲゲの鬼太郎をかいた水木さんだからこそユーモアを感じることができる構言葉ではないでしょうか。
 自分の周りにある言葉は思ったよりも人によって違うものです。
 大学生なら、単位、レポート。わたしのようなIT企業勤務をしている人ならSlack、KPI、リモートワーク。家族ならば、キッチン、お風呂、買い物などです。
 自分では当たり前と思っている言葉のコミュティは他の人と全く違う場合も少なくりません。日常的に自身が使っている言葉を意識し、収集してみましょう。

2 繰り返す(反復)

 この繰り返しには大きく2つの方法があります。
 ひとつは同じ言葉を単純に繰り返し、人々の印象に残す方法。もうひとつは同じ言い回しや単語を、効果的に繰り返すことでリズムをつくり理解を促す方法です。
 前者はスピーチやCMなどでよく使用されることが多く、偉人たちのスピーチでは必ずといっていいほど繰り返しが使われいます。
 後者でわかりやすい例では宮沢賢治の「雨ニモマケズ」が挙げられます。

「雨ニモマケズ。風ニモマケズ。」

 普通であれば「雨にも風にも負けず。」とした方が端的な表現であるように感じられます。しかし、同じ型を繰り返すことで、力強く溢れ出す思いを受け取ることができたのではないでしょうか。

「絶対は絶対にない。」 織田信長
「誰かがやるはずだった。自分がその誰かになりたかった。」 カール・ルイス

言葉を重ねることで、力強さが加わり、理解の深さは全く違うものとなることがわかります。

3 ギャップをつくる(対句)

 対句は、2つの異なる意味の言葉を並べることで、強さや意味の幅を演出することが可能になります。

「負けるが勝ち。」

 聞き馴染みのある慣用句ですが、「負ける」の逆の意味をもつ「勝ち」を並べることで驚きとともに、新しい意味を生み出すことに成功しています。

 対句はネガティブとポジティブを並べ、ネガティブを前半にポジティブを後半に持ってくることで、後半のポジティブを際立たせる役割をしてくれます。

 「あなたに協力してほしい」とお願いするとき、この型を使うと、

「あなた以外にはまかせられない、どうしてもあなたに協力してほしい。」

となります。これも先程と同じ、前半に否定、ネガティブを持ってきて、後半にポジティブな肯定、願いを持ってきている手法です。多くの人は、対句を使った表現のほうが「そこまでいうなら協力してあげようかな」という気持ちになりますよね。

4 言い切る(断定)

 「断定すること」は一見、簡単そうに見えますが、日常生活においてもできる人は少ないものです。人は無意識の内に断定を避け、そうではない可能性を残しておくような言い方をしてしまいます。

「我が巨人軍は、永久に不滅です。」 長嶋茂雄

 これはプロ野球選手だった長島茂雄氏が幻影木を引退する際に発した言葉ですね。実際、プロ野球は企業によって運営されていますし、人間だっていつまで生き長らえていられるかはわかりません。
 しかし、このように可能性がゼロではないことを理解しながらも、断言することによって示される明確な未来に人は心が動かされるものです。

5 感じる言葉を使う(呼びかけ)(誇張・擬態)

 ここでの「感じる」は「聞き耳をもってもらう」と解釈した上で、2つの方法をご紹介します。

 1つ目は、相手に「自分に向けて言ってくれている」と強く認識してもらうことで、聞く耳を持ってもらう方法です。

「少年よ、大志を抱け。」 ウィリアム・スミス・クラーク

 北海道開拓の父とも言われたクラーク博士が残した明言です。
 この言葉は、北海道大学の前進である、札幌農学校に務めたクラーク博士が学校を去るとき、学生たちに述べた言葉だと伝えられています。そのため、聞き手が若者であることに間違いはありません。しかし、改めて少年と言われることで「いかに自分たちが若く、これからの未来を担っていくのか」という含みまでもを感じられる言葉となっています。
 このように呼びかけを使うことで、聞き手をはっとさせることができます。

 2つ目は、気になる言葉をワンポイントで使う手法です。

「気持ちいい、ちょー気持ちいい」 北島康介

2004年のアテネ五輪で北島康介選手が金メダルを獲得した際の発言ですね。
 この「ちょー」という言葉は、固めのインタビュー回答をするスポーツ選手が多い中では気になりますよね。さらに、オリンピックという公式の場であるからこそ「ちょー」という砕けた言葉が映えています。

 言葉を書くとき、人はどうしても身構えてしまします。力が入ってかたい文章になると、その人らしさをだすことは難しくなりますよね。
 文章を書くことは、自分の思いを形にしていく作業であるため、気付かないうちに利己的になってしまうことも多いです。
 このような状態を回避するためには語りかけるように、読んでくれている相手を意識してかくことが有効的です。語りかけるように書こうとすると、どのようにすれば相手は共感してくれるか、最後まで読んでくれるのかに自然と意識を向けることができるようになります。話し言葉でも不思議がないくらいの粒度で、文章を書くとより臨場感のある言葉が生まれやすいでしょう。

 わたしもこのような要約記事を書き始めた最初の頃は、自分の文章力のトレーニングのために書いていました。そのため、読み手になんの語りかけもなく、非常につまらない文章だったと思います。
 現在は、これをどんな人に読んでほしいのか、わたしが「勉強になった」「明日から実践してみよう」と思った感情を同じ粒度で感じてくれる人もいるのではないか、と考えはじめるようになりました。そういった人たちにとって役立てばいいな、と考え始めたくらいから内容が少しずる変わってきた気がしています。

 さて、次の章からは、言葉のプロが実践する「もう一歩先」へ行くために「言葉を生み出す心構え」をご紹介致します。

言葉を生み出すための5つの心構え

1 たった1人に伝わればいい

 より多くの人に伝えようとすればするほど、内容はぼんやりとしてしまって「誰にも伝わりません」。
 理由は簡単で、大衆的な人などいないからです。
 もしこの記事を読んでくれている人がいたとして、その人は「noteを見ていて」「言葉にできるは武器になるに興味を持って」「わたしの記事を読んでくれた」人となります。これは全く平均で一般的な人でもなんでもありません。
 わたしからはどんな人が読んでくれているのか、その人は何歳で、どんな仕事をしていて、どんなことにこの記事を活かそうとしてくれているのかは当然わかりません。
 だからといって、わたしが「勉強になった」と思った具体的な内容を記事に書かず、差し障りない内容ばかりを書いていたら、誰にも何も伝わりはしないでしょう。

 できるだけ多くの人に読んでほしいと思っていても、文書を書く時は「誰かに向けて」言葉を紡ぐ必要があります。
 女性ならば妻なのか、姉なのか、親しい友人なのか。より具体的に「1人」に伝えようとし、どう思うだろうか?と反応を予測してみます。その反応がよりよい方へと繰り返すことが心を揺さぶる文章と成長していくのです。
 以下の「あなたに伝えたいことがある」は生み出した文章が、伝えるべき相手に伝わるかどうかのチェックの工程でぜひ使ってみてください。

あなたに:     伝えるべき相手は明確か
伝えたいことがある:心から湧き出てくる思い、本心であるか
ある:       断言しきれる内容か


2 常套句を減らす

 小学生の頃、食レポ競争をさせるテレビ番組を見ていました。3人のアナウンサーがエビチリを食べて食レポをし、誰が一番印象に残る食レポをできるか、という内容のものです。
食レポの印象を残すという観点で、ルールの一つに「プリプリ」という言葉を使ってはいけないというものがありました。が、こういったルールは当人たちには秘密です。結果。そのアナウンサーの内3人が3人ともエビをたべた瞬間「大きくてプリプリですね!」と言ったのです。
これが常套句と言われるものです。3人ともぷりぷりでいいのであれば、あなたが感じたことは誰が表現しても一緒になりませんか?ね?
それよりも「このエビはとても大ぶりですね1噛んだ瞬間に水々しさで弾けるようです。」と言ったほうがらしさは伝わるはずです。
 つまり、無意識の内に使っている常套句を排除し、あなたの言葉で表現した言葉でなければ強い気持ちは伝わりにくいのです。

3 動詞にこだわる

 動詞は文章の印象だけでなく発している言葉の本気度を決めてしまう力を持っています。

 例えば、「私はこの道を全速力で走った」という文章の例を見てみましょう。

最初は修飾語を変化させる例から。

「私はこの道を汗だくで走った」
「私はこの道をがむしゃらに走った」
「私はこの道を胸をばくばくさせながら走った」

このように修飾語を変えることで文章の勢いや雰囲気を変えることも可能です。しかし、「汗だく」や「ばくばくさせながら」は先程出てきた常套句としての決り文句の一種であり、意味が大きく変化したとは言いづらいでしょう。

さて、次は本題の動詞を変えてみます。

「私はこの道を疾走した」
「「私はこの道をひた走った」
「私はこの道をかっ飛ばした」

さあ、大きく意味が変わったと感じませんか?
 「全速力ではしった」と書かれているより全力で走ったんだろうな、と感じることさえできたのではないでしょうか。
 修飾語でひねくりまわすのではなく、動詞をいくつか並べてみるクセをつけてみましょう。


4 新しい文脈をつくる

 「〇〇って△△だ。」という文をつくることを命名法といいいます。
 言葉とは、時代や環境とともに日々変化していくものです。辞書にはのっていない新たな使われ方がされることが当たり前となっています。

「生徒って、実は、先生なんだ。」

 この言葉は、生徒に対してあたらしい価値を生み出すことに成功していますね。元来の「生徒は先生の言うことをきくものだ」という考えから「先生が生徒から学ぶこともある」と考えることで生徒への態度を変えることができるかもしれません。さらに。先生に対しては「大人は大人らしくしていなければいけない」という堅苦しさからの開放にもつながります。

 命名法には、人の気持ちや感じ方を大きく変える力があります。

 例えばスティーブ・ジョブズは自分たちエンジニアのことを「アーティスト」とよびいかに繊細で美意識にあふれる仕事をしているかを説いています。
こういった言葉を投げかけられた技術者は勇気づけられ、自らの仕事に誇りを持つことができるようになったに違いありません。
 また、ディズニーランドではスタッフのことをキャストと呼びます。これもディズニーランドと言う舞台の中で演者の1人である、ということを意識してもらう効果があり、仕事の意義を感じることができる要素になっているでしょう。


5 似て非なる言葉を区別する

 文章を単純化することは誰にとってもわかりやすい文章になります。一方で、単純化しすぎてしまうと「どこかで聞いたことがある文章」「なんのおもしろみもない文章」になってしまうことに留意しましょう。

 人間の感性は、大きな柱がいくつも立っているようなものではなく、柱から複数に伸びる細かいヒダがいかに多いか、で決まってきます。このヒダを増やす方法は、近い意味の言葉を同化せず、違いを見出すことにあります。

 以下に本書に掲載されていたものを列挙します。ぜひみなさんも、一緒にこの類似の言葉の意味が正確に説明できるか、考えながら読み勧めてみてください。

・知識と知恵

知識は知っている状態を差し、知恵は自分のものとして使えるものを差す。知識を頭に入れるだけでなく、身体を動かしながら実践することにこそ意味がある。

・問題と課題

問題は既に起きてしまった状態であり、課題はその問題を引き起こし続ける本当の原因である。問題に目を奪われることなく、課題を探る必要がある。

・解消と解決

解消はマイナスをゼロにするものであり、解決はマイナスをプラスに変換するものである。問題解消と課題解決は同じように見えるが、全く違うものであると心得る。

・文句と意見
文句は否定でしかなく、意見は前進するきっかけになる。この両者の違いは、言葉を発している側の問題だけではなく、受け取る側によりものでもある。

このように自分が気にあった言葉をメモして残しておくと、大切にしている価値観がわかる。
価値観がわかってくるようになればなるほど、自分らしさや自分が伝えたい言葉が自然と見えるようになってくるでしょう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?