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【続報】iOS 18の新機能がメールマーケティングに与える影響と対策

こんにちは、クリエイティブコンサルタントの林です。
今回はマーケターの関心が高いiOS 18が普及することでのマーケティングへの影響について再度取り上げたいと思います。
※前回の記事はこちら

(ソースの前提)
これからご紹介するものは弊社USチームがiPhone15/16 Pro MaxにてApple Intelligenceを搭載したiOS 18.1・iOS 18.2のデベロッパーベータ版を実際に2か月間使用した際のレポート結果になります。

iOS 18.1が10/28にリリースされ、Appleメールアプリには「カテゴリータブ」や「Apple Intelligence」といった新機能が加わりました。これにより、メールマーケティングの戦略に大きな影響を与える可能性があります。本記事では、これらの新機能がメールの開封率やエンゲージメントに与える影響をデータをもとに解説し、効果的な対応策をご紹介します。


iOS 18の注目ポイント

iOS 18の普及状況と日本での展開スケジュール

まずは日本でのiOS バージョン毎のシェア比率を見てみましょう。
11/15時点でiOS18.0のシェアは14.29%*と、iOS17.6の43.82%と比べて決して高くはありませんが来年以降は早々にシェアが逆転することが予想されるため、早めの対策を行いたいところです。

*iOS18.0は10月に比べて低下していますが、iOS18.1がリリースされたことによる影響と推測され、実際のiOS18シリーズの合算シェアはこれより高いと考えられます。

statcounterより引用

一方、日本でApple Intelligenceが利用できるのは2025年4月以降と発表がありました。Apple Intelligenceの展開はOSのバージョンとは異なる点に注意しましょう。また、現状日本でもiPhoneを英語設定にすると利用可能なようです。気になる方は一足先に検証してみるのはいかがでしょうか。

“ Apple Intelligenceは、迅速に対応言語を増やしています。12月に、オーストラリア、カナダ、アイルランド、ニュージーランド、南アフリカ、英国で英語のローカライズに対応します。4月には、ソフトウェアアップデートにより対応言語を拡張し、1年間でさらに多くの言語に対応します。日本語、中国語、英語(インド)、英語(シンガポール)、フランス語、ドイツ語、イタリア語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語などの言語に対応する予定です。”

Apple - Newsroom

メールマーケティングに影響の大きい2つの注目機能

メールマーケティングで特に注目が必要な2つの新機能について概要をまとめます。

・Apple Intelligence
メールを自動分類し、件名やプレヘッダーを基に要約を生成する機能です。受信トレイで要約が表示されるため、件名やプレヘッダーの内容がこれまで以上に重要になります。

・カテゴリータブ
iOS18.2(2024年12月リリース予定)からメールが「Primary(重要)」「Transactions(取引)」「Updates(アップデート)」「Promotions(プロモーション)」に自動分類されます。この機能はiOS18.2にアップデートされたすべてのiPhoneに適用されるため、Apple Intelligenceより先んじて対応をする必要があります。

追記:
12/12にiOS18.2がリリースされましたが、日本語設定の状態ではカテゴリータブ機能は適用されないことを確認しました。そのため、2025年4月以降のApple Intelligence日本語版のリリースに合わせて適用になる可能性があります。

分類のロジックについてはAppleメールによるもので、配信側があまり調整できないと思っておいた方が良いでしょう。(セールのお知らせや特別なクーポン・オファーなどは何度検証してもPromotionsタブに分類されたようです)

2つの注目機能の詳細、検証結果、対応策

Apple Intelligence

概要:

受信ボックスのキャプチャ

こちらは要約機能を使っている受信トレイのキャプチャです。TOが件名でその下に1~2行の要約が表示されています。
Apple Intelligenceは、件名やプレヘッダーを基に受信トレイで要約を生成します。この要約は、メールの内容を簡潔に伝える役割を果たしますが、意図した内容と異なる場合もあるため注意が必要です。

検証結果:

  • 件名とプレヘッダー>メッセージ全体の優先順位でApple Intelligenceに解釈される

  • プレヘッダーがない場合、「購読解除」や「ブラウザで表示」など無関係な要約が生成される可能性がある

  • 画像内のテキストやALTのテキストは要約の対象外となっている

対応策:

  • 件名とプレヘッダーを短く、具体的にする(例:今だけ!20%OFFの特別セール)

  • プレヘッダーに具体的なオファーや緊急性を明記する

  • メールの最上部に重要な情報をテキスト形式で配置する

カテゴリータブ

概要:

カテゴリータブとカテゴリータブに関するキャプチャ

キャプチャにある通り、メールを「Primary(重要)」「Transactions(取引)」「Updates(アップデート)」「Promotions(プロモーション)」のカテゴリーに分類するタブ機能が実装されます。①Primaryタブ②Primary以外のタブで表示方法が大きく異なるため、2つに分けて解説していきます。

🔶検証結果①Primaryタブについて

Primaryタブのキャプチャ
  • Primaryタブは、日時・時間が重要なトピック(フライト、交通機関、カレンダーの招待など)のメールが割り振られる

  • 受信時刻の降順にリスト表示される(今までのメールと同じ表示方法)

  • セールなどのプロモーションメールがこのタブに分類されている例は現状1つもない

  • Apple Intelligenceの機能をONにしているユーザーは件名と要約が表示され、機能をOFFにしているユーザーは件名とプレヘッダーが表示される

🔶対応策①Primaryタブについて

  • Apple Intelligenceの機能設定に関わらずプレヘッダーは重要になってくるため、必ず設定する

対応策と言ってもPrimaryタブは予約確認や承認が必要なものなど、緊急性・日時が重要になるシステマチックなメールが対象となるため、あまりできることはありません。

🔷検証結果②Primary以外のタブについて

Promotionsタブのキャプチャ
  • 送信者名が表示され、その下に最新の件名が箇条書きで2つ表示されるリスト・スレッド形式になる(自動的にメールが送信者でグループ化されるようになる)

  • プレヘッダーや要約は表示されず、件名はその送信者から受信した直近のメール2件の件名が表示される

  • さらにメールの表示が「NEW MESSAGES」「OLDER MESSAGES」の2つのセクションで分かれて表示される

  • 送信者をタップするとメールが開くのではなく、メールのファーストビューがカードのように並ぶ画面に遷移する

  • そのカードの中から「See More」をタップするとメールの本文が開かれる

  • まとめると、メール本文が表示されるまでに2つのステップ(送信者の選択、メールの選択)が増えることになる

🔷対応策②Primary以外のタブについて

  • NEW MESSAGESセクションに表示するため、ユーザーのメール確認時間に併せて配信する(STO*機能の活用)

    • ※STO(Send Time Optimization): 機械学習を用いた送信時間最適化

  • BIMIを導入し、認知度と信頼性を向上させる

  • 件名をより魅力的に、緊急性のあるものはしっかり明記するなど工夫する

  • 「See More」をタップされるよう魅力的なファーストビューを常に意識する

開封率に関する課題

新機能による開封率低下の懸念

Apple Intelligenceやカテゴリータブの影響で、特に「Promotions」タブに分類されるメールの開封率が低下する可能性があります。これには以下のような理由が考えられます。

  • Primaryタブが優先される
    多くのユーザーが「Primary」タブをメインで確認するため、他のタブに分類されたメールが見逃される可能性があります。

  • Promotionsタブ内での分割表示
    Promotionsタブではメールが「NEW MESSAGES(新着メッセージ)」と「OLDER MESSAGES(以前のメッセージ)」に分けて表示され、埋もれてしまうリスクがあります。

  • 表示される情報の制限
    リスト表示では件名しか表示されず、クリエイティブな内容やプレヘッダーが見えないため、目を引く要素が制限されます。

さらに、新しいカテゴリータブにユーザーが慣れるまでに時間がかかることも、開封率の低下につながる可能性があります。

ポジティブなポイントも存在

一方で、この変化は悲観するだけではありません。Promotionsタブの導入により、ショッピングに関心の高いユーザーとのエンゲージメントを強化するチャンスが生まれます。必要なときに必要な情報を届けられる環境が整うため、以下のような工夫が求められます。

  • 明確で簡潔な件名を設定し、内容を的確に伝える

  • ユーザーにとって魅力的なプロモーションを作り、購買意欲を刺激する

これらを意識することで、Promotionsタブの特性を活かしながら、より良いコミュニケーションの実現・エンゲージメントの向上を目指すことができるでしょう。

開封率に関する対応策

  • 件名の工夫:ユーザーの興味を引く短く魅力的な件名を設定しましょう。具体的で簡潔な表現がポイントです。

  • 配信時刻の最適化:ユーザーがメールを確認しやすい時間帯に配信することで、開封率を向上させます。可能であれば、パーソナライズされた送信タイミング(STO機能など)を活用しましょう。

  • 開封後の行動を促すクリエイティブ設計:メール本文のデザインや内容は、ユーザーが次のアクションを起こしやすい構成を心がけましょう。シンプルで視覚的にわかりやすいレイアウトを活用すると効果的です。

まとめと次のステップ

要約機能と開封率を意識すると以下3点は特に重要となってきそうです。

  • 件名:短く、インパクトのある表現が求められます

  • プレヘッダー:要約時に参照されるため、明確かつ具体的な内容を記載することが求められます

  • 配信時間:ユーザーのアクティブな時間帯によって開封率が大きく変わってくるため、STOの機能を活用し一人一人に合った配信時間が求められます

今回ご紹介した内容は、Appleメールにおける新機能に関する検証結果ですが、こうしたAI活用の流れは他のメールサービスにも広がる可能性があります。特に、Gmailなどが同様の機能を実装する可能性も十分に考えられるため、今のうちから新機能への対応を検討し、次世代のメールマーケティング戦略を構築することが重要です。

また、開封率に関する課題で述べた通り、この変化は決してネガティブな側面だけではありません。新機能を活用することで、ユーザーが必要なタイミングで必要な情報を受け取れるようになり、より効果的なコミュニケーションが可能になります。この新しい環境に適応することで、メールマーケティングの可能性をさらに広げることができるでしょう。

変化の波に乗り遅れないためにも、ぜひ弊社と一緒に新機能の検証を進め、未来のマーケティング戦略を共に描いていきましょう。


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