大都市へゆく
【大都市】へ行くことになった。理由は暇だから。帰省に使った18きっぷが余ってたから。
始めはただ単にぷらぷらする予定だったのがいろんなところに報告したせいでいろんな予定を詰められてしまった。やれやれだぜ。
JRを使って【大都市】の駅へ着く。ここでもう既に迷う。地名とか建物とかややこしすぎるだろ。なんで駅が4つもあんだよ。待ち合わせの時間まで駅のまわりを練り歩く。資本主義社会へ来たみたいだった。
自動販売機を見かける度にふらふらと吸い寄せられるように歩くせいでどんどん奥の方へと迷い込んでゆく。始めはビルビル境目くらいだったのが徐々に込み入った商店街的な雰囲気に。自販機がいっぱい見られてハッピー。やっぱり都市は密度が違う。【大都市】限定の缶コーヒーもGET!味はオトナなMAXCOFFEE。
同じくヒマしてた奴らと合流。どうして未知の土地で逢う羽目になるのか不思議でならない。
地下鉄に乗って【観光地】へ行こうと言われたが、俺が「JR以外は乗りたくない」と駄々をこねたせいで割と長いわりに楽しくもない道のりをだらだらと歩く羽目に。高級オフィス街だったのか黒い服を着た余裕のありそうな顔の人間がいっぱいいた。この道で寝たら楽しそうだなと思ったのでホームレスはここに来るといいと思った。
【観光地】に着いたら小麦粉をひとくちサイズの丸い型に入れて焼いたものを食べた。熱かったので口が焼かれた。汚くきれいな醜い街だった。(一見ごちゃごちゃして)汚く見えるが(実際は映えるように)きれいにしてあって(その作為性が見えて)醜い街だった。そこも含めていい【観光地】でした。
「せっかくtourismに来てるんだから、もっと楽しそうなこと言いなよ」
「俺はtourismに来たわけではない」
「え?観光に来たんじゃないの?」
「私は観光に来たわけじゃない。見に来たのだ。tourismではなくsurvey。」
「黙らせるよ」
そうして次は【塔】へと向かう。ほんっとうに死ぬほど嫌だったが、予約の時間に遅れると言われたのでしぶしぶJRではなく私鉄に乗る。
【塔】は内部に入るためにはネットでの事前予約が必要みたいだ。知らなかったけど同行者Aの情報と同行者Bがクレカを使えたおかげでたまたま入ることが出来た。
私鉄とモノレールを乗り継ぎ【塔】へ着く。
異様だ。
最寄りの駅からもう明らかに【塔】を見せるための演出になっている。これが50年以上も前からこの地にある。異様だ。
恐らく過去の人類も、そしてこの先未来の人類も決して生み出すことのないであろうデザイン。
入口から入ると【塔】を仰ぎ見る。あんな顔なのに諸手を上げて抱擁してくれる。生まれてからずっとあの顔なのだ。
曲線。腕の曲線。私が歩いて動いて腕を横から見る。アンテナ。顔の断の層。
遠くから、後ろから見上げるせいで大きく正しく見える黒い星。過去を表しているらしい。
予約していたので内部に入らせてもらえる。平日なのでなのか、人は少なめ。
アイデアスケッチと地底の太陽のプロジェクションマッピングを見る。3種とも正面から見ました。
内部へ。どんな風になってるのかなんにも知らずに入ったせいか、完全に油断してたせいか、大したことないだろと思ったせいか、殴られて倒される。初見です。
原初の生物のところが一番好き。大腸虫可愛すぎる。ちゅっちゅ。
腕の内部。ぐわんぐわん。ずっと見てられそう。
中から出て改めて【塔】を見上げる。なにがすごいって、こんなに大きくて大掛かりで緻密で大規模なのに、全くそれを感じさせない点なのだ。こんなにも大きかったらかならずどこかで減衰してしまうところがあるはずなのに全く衰えない。そのまま完成までしてしまったのが本当にすごい。本当すごい。
モノレール駅へと帰る道、あんなに異様に、大きく見えた【塔】がなんだかかわいく、頼もしく思えた。きっと【大都市】から出た後も、この方向を見上げればきっと同じ大きさで見えるはずなのだ。距離も次元も関係ない。そう思わせてくれた。なんだかとっても暖かい。きっと遠赤外線とか出てる。
同行者と別れ、来た駅へと戻る。モノレールを降りてJRへと全力ダッシュ。途中50円自販機とかいうSSRがあってよかった。ラインナップもピカイチ。
インターネットの人とリアルで逢う催し、いわゆるオフ会を敢行。合流、ありえん顔がよかった。写真映りは逆詐欺を意図的に起こしているという疑惑が浮上。この顔でマトモは無理があるだろ。
なんか「インターネットの人とリアルで会える」っていうより、「リアルで会った人がインターネットだった」って感じでした。ほんとに存在してるんだー、みたいな。普段から考えることを半公的半私的空間に放流してるなら、それはもうリアリティだなって。
インターネットってなんだろうね。初めてあった人なのに共通の話題が多すぎて脳がバグりそうになる。そして第一印象と最終印象が寸分のズレもなく一致する。未知なのに既知。初対面なのに知り合い。本邦初公開の情報も多いはずなのに、それが「どっかで読んだ情報」として脳の中で区画整理される感覚。たとえそれが新しい情報でも「どっかで読んだ」として受け入れられてしまう。ぼくはおさけをのみました。
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