小さなことだけれども。
見知らぬ人に救われた日。
それは、きっと日常のほんの些細なできごとだ。
でもそれが救いになる日だってある。
……………
仕事の帰り、コンタクト用品を買うためにドラッグストアへ寄った。いつも忘れてしまうから今日は忘れないぞ、と無駄に意気込む。
用品を抱え、空いているレジを選んで並ぶ。50代ほどの男性薬剤師が、レジの対応をしてくれた。
その会計で、いつも通りクレジットカードを差し出す。受け取った男性薬剤師が、二度ほどカードをレジに通しても決済が完了しない。
首をやや傾げながら、クレジットカードを再度レジに通す男性薬剤師。少しずつ不安になってくる私。
「あ…!」
男性薬剤師が気づいた。
どうやら、磁気がないところを何度もレジに通していたらしい。だから決済が完了するどころか、何も反応しなかったのだ。
それがわかったときの彼の表情が、面白くて。
すごく申し訳なさそうで、ちょっと恥ずかしそうな、ちょっと照れているような。そんな苦笑いを浮かべていた。
カード決済の不安から解放されたのもあり、彼のその表情に、思わずくすくすと笑ってしまった。
「いや〜、すみませんでした…」
「いえいえ、大丈夫です!」
……………
今日の私はきっと、難しい顔をしていただろう。
だからふと笑えたことと、この会話だけで、何だか気持ちが楽になった。
もう前を向いて進んでいる。大丈夫。
見知らぬ人に救われた日。
それは、日常のほんの些細なできごとだ。3日も経てば、きっともう忘れてしまうほどの。
でもそれが救いになる日だってある。
だからその"些細なできごと"で、私も誰かを一ミリでも救えるようになりたいな。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 あなたにとって、幸せな、素敵なことがありますように!