2022年9月観て良かったYouTube動画
こんばんは、チェ・ブンブンです。
9月に視聴してよかったYouTube動画を紹介します。
1.【3.0お披露目】にじフェス舞台女優の進化した表現力📺【物述有栖】【にじさんじ】(物述有栖)
にじさんじ所属のバーチャルライバーである物述有栖さんの3.0お披露目配信。表情の手数が増え、怒り顔と泣き顔ができるようになった。配信で使う機会が少なそうなエフェクトであるが、それを追加したことで表現の幅を広げているところが興味深い。物理的世界とは異なり、特定の挙動を行うことで、涙を出せたりするので、今後の映像界に影響を及ぼす画期的な機能であると思う。
さて、本配信で改めて感じたのは、VTuberの配信はアニメの鑑賞体験とは異なるインタラクティブなものだということだ。視聴者との掛け合いで物語が紡がれる。これは元々、物述有栖さんが得意としていたことだが、その物語る力の瞬発力には驚かされる。
泣き顔での表現練習として、「あいうえお」を詠唱する場面がある。「う」と「お」の音を発する時、彼女の口は△となるのだが、視聴者がその様子に反応して「おにぎり」の絵文字を送る。すると、
「おにぎり?有栖のお口がおにぎりだっていうの?おいしそうってこと?うぁーーー食べちゃやだー」
と反応する。一回性の会話が生まれる。この掛け合いに感動した。
他にも、幼き姿の彼女がぬいぐるみを買って欲しいとねだるパフォーマンス等観応え抜群の2時間であった。
2.【ひぐらしのなく頃に】圭一vsレナ(まるで実写)2~コメント有り~(タンクトップ小隊)
顔にモザイクを入れ、遊戯王のモノマネをする集団タンクトップ小隊は9月に新作「電撃に特化したデュエル!【新】遊戯vs.十代(まるで実写GX)」を発表した。タンクトップ小隊は、狭い空間ながらも決定的瞬間を収めるのに長けており、本動画も中々電撃ルーレットの穴に指が入らないアクションや、電撃ボールを使ったアクション、バトルドームのCM再現といった面白い世界を魅せてくれた。
今回、過去動画を漁っていたら、「ひぐらしのなく頃に」のモノマネをしながら気配斬りする動画に行き着いた。これが映画的な運動の快感に満ちた作品であった。サイコパスなレナに気配斬りを仕掛けられる圭一は警察・大石の助けを呼ぶ。すると彼が助けに現れる。しかし、瞬殺されてしまう。
増援が2人現れ、再戦となるが、仲間が綺麗にフレームアウトしていき、またしても斬られてしまう。次から次へと個性的な仲間が参戦し、銃弾まで飛び交う戦場。惨劇の中で、新たなる戦いの構図が生まれ、思わぬ形で圭一は斬られる。
大人が教室内で、学生時代を思い出したかのように暴れる動画ではあるが、群れの的確な動かし方、そして快感はジョン・フォード『静かなる男』のクライマックスを彷彿とさせるものがありました。
3.【#バ美ラインを探せ】Vtuber20名が協力!一流Vtuberなら女の子からのLINEを見極められる説 /ガッチマン/舞元啓介/でびでび・でびる/神楽めあ/夕刻ロベル【因幡はねる / あにまーれ】(因幡はねる)
因幡はねるさんはバラエティ番組に近い、個性的な人たちをまとめるのに長けた方だと思っているのだが、この「バ美ラインを探せ」は鳥肌が立つ程にレベルの高い企画だった。
VTuberから提供された「病気の彼氏へのLINE」などといったお題に沿った文章を表示する。それが男か女かを当てる。中には兎鞠まりといったバ美肉(女性の肉体を宿したVTuber)がいる。指定されたバ美肉VTuberのLINEを見破ることが本企画のメインとなっている。
声も肉体もない、文章。誰が書いたかはともかく、男か女かわからないのでは?と思う。それは参加者も同様であり、最初は社築さんのLINEを女だと思うみたいなミスがあるのだが、段々と傾向と対策が練られていき、終盤になると視聴者ですら誰が書いている文章かが分かるようになる。
文体がいかに個性を反映したものかがよく分かる配信となっており面白かった。
4.陣内智則【コント デレステ】アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ(陣内智則)
YouTube動画で成功しているお笑い芸人としてよくガーリィレコードを紹介しているが、陣内智則さんも注目すべきである。彼は、エンタの神様時代に、映像にツッコむコントというスタイルを確立させた。しかし、セットが大掛かりになるデメリットがあった。テレビ番組や劇場の予算や制約の影響を受けやすいスタイルである。
しかし、YouTubeに進出して、彼のスタイルはより一層磨かれたといえる。昔のネタを2020年代版として単にリメイクするのではなく、視聴者のコメントを拾い構成していったり、映像クリエイターの方を紹介したりと、舞台/裏方/観客の壁を取り払っていった。VTuber等の配信が普及していき、語り手とリスナーのインタラクティブなコミュニケーションが重要視される時代を読み、順応していく陣内智則さんの精神、歳を重ねトーク回しする立場になってもなおネタを作り続ける精神には尊敬しかないのだが、その中で注目の動画が音楽ゲーム「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」、通称:デレステのネタである。
本作は、ヴジョーPさんが「こんなデレステはいやだ!」と陣内智則のネタ風に紹介したYouTube動画が元となっている。勝手に、デレステと陣内智則をネタ化している様子を、「本当はダメなんだけれど...」と語りつつ、この方の欲望を正式に叶えるのだ。バンダイナムコエンターテイメントから許可を取り、ヴジョーPさんのネタを取り入れコントを作り上げた。これは画期的な出来事といえよう。
5.ういしぐトーク(しぐれうい)
ゆるふわな語りが特徴的なイラストレーターでありVTuberのしぐれういさんがタートル・トークの真似をするこの配信は、見かけとは裏腹にスリリングなものである。
しぐれういさんが視聴者から質問を募る。手(ヒレ)を挙げたものに、質問権を渡すのだが、権利を渡してから質問が届くまでに時間がかかる。その間を会話で繋がないといけない。だが、彼女のトークは途切れることはない。助け舟が中々来ないアクシデントもありながら、飄々と会話を続ける彼女。よくスペースで会話がてんてこ舞いになる私にとって参考になる配信であった。
6.〜お礼〜(砂田アトム)
cinemas PLUSさんにて深田晃司監督の『LOVE LIFE』評を寄稿するにあたって、ろう者俳優の砂田アトムさんのYouTubeチャンネルを観たのだが、これが衝撃的であった。
彼の動画は、音が一切ない。手話だけで雑談をしている。字幕もないので手話を知らない聴者からすると何を言っているのかは分からない。ただ、感情豊かに、そして饒舌に楽しそうに語る彼の姿が映し出されるのだ。
これは、ろう者から見た聴者に対する渇望を聴者側が擬似体験できるものとなっている。普段、聴者は発せられる音から意味を感じ取り、音で返す。それを自然にやることで対話が成立する。しかし、意味を知るための要素にアクセスできないと、意味に対する渇望が生まれる。
ろう者が日本映画に字幕を入れて欲しいと願うのは何故か?理解しているようで理解していない世界を知るきっかけとなる動画であった。
7.【兎鞠まり】おじさん(?)襲来!?女の子より可愛い!童貞確認NG…?#まりたま 対談バトル!!【犬山たまき】(犬山たまき)
因幡はねるさんの桃鉄動画で兎鞠まりさんを知った。最初は、「可愛い声しているVTuber」だなと思っていたのだが、コラボ配信でよく彼女が「おじさん」と言われているのに気づいた。どこが、おじさんなんだろう?言動も女性っぽいしなと思うこと1ヶ月、彼女がバ美肉VTuberだと知り衝撃を受けた。最初は全く信じられなかった。他者へのスタイリッシュな煽り方や相槌の打ち方があまりにも女性だったから。
犬山たまきさんとの対談を聴いてみると、「メタバース進化論」でも言及されている独特な文化圏としてのバ美肉を知ることができた。男性が女性の肉体を纏うバーチャル美少女受肉ことバ美肉。海外のメタバースユーザーの間では、ジェンダーの問題を抱えている者が本来の肉体を得るために使うことが多いそうなのだが、兎鞠まりさんは別にジェンダーの問題はなく、面白そうだからやってみたと語る。そして、男女で見るより、兎鞠まりは兎鞠まりでみてほしいと語る。これはVTuberやメタバース論を語る上で重要な言及と言える。
我々は生まれた時から、肉体や声帯を与えられ、周囲は意識的/無意識的かは関係なく、五感で得られる情報に支配されながら反応する。アバターを使うことは、与えられたものに対する眼差しから逃れる行為であり、すなわち内面の自己を純粋な形で他者に伝える行為である。だから男女といったジェンダーの壁をこえて可愛い存在である兎鞠まりとして認知することを推奨しているのだ。
この配信では、難解な概念であるバ美肉について対話しながら掘り下げていく。そこからは問題も浮上する。「バ美肉」という言葉が普及してしまっているが、語感が強すぎるから積極的に使いたいと思わないという指摘は私も同意する。バーチャルYouTuberがYouTuberだけの存在でなくなり、VTuberとなっていった過程同様、バ美肉も違った言葉に置き換わるべきだと感じた。
8.オータムロングナイトザツダン(名取さな)
自分がVTuberを追い始めたのは、VTuberが映画業界にも進出するだろうという予感によるものだったが、まさか推しが映画のコメントを出すとは思いもよらなかった。『夏へのトンネル、さよならの出口』の映画コメントに個人勢VTuber名取さなさんが寄稿していたのだ。これについては映画評で言及したのでそちらを参考してほしい。
さて、名取さなさんの雑談配信は空中曲芸のような面白さがあり、大好きなのだが、9月はGoogleのセキュリティ認証話がツボであった。よく、画像が提示され、その中から車を選択するみたいなタスクがユーザーに課せられる。しかし、微妙にフレームに引っかかった車を車として見做せるかはユーザーにとってストレスの種である。名取さなさんは、捲し立てるような語りでツッコミを入れ、自分が人間であることを証明するにはどのような動きをすればいいのかを視聴者と一緒に考える。
やがて、この配信をAIが聴いていたら真似されてしまうと焦り始める。『ブレードランナー2049』みたいに、AIが人間の行為を真似し続けた果てにあるのは、人間から人間味が失われた世界なのではと予見させる言及に満ちた配信であった。
9.高校に侵入してパソコン室から勝手にゲーム配信者になるシムズ4(のばまん)
最近はゲームの案件に忙しい印象がある「のばまん」さんですが、シミュレーションゲーム動画を出している時のイキイキとした姿をみると安心する。9月に発表したシムズ4動画では、お馴染み「です男」が超絶狭い部屋と学校を行き来しながらゲーム配信者として成功しようとする姿が収められている。
学校では授業に侵入したり、生徒のご飯を盗みながら、トイレに行く時間も惜しんで配信する。この姿を通じて、配信者の異常性を暴露していく、のばまんさんらしい皮肉が込められている。なお、本作で登場するストリーマーです男は、次回作「登校するだけで死ぬ学校を作るシムズ4」にも再登場する。のばまんの世界観の中でキャラクターが交錯する展開は胸熱であった。
10.校長のスピーチを即興でやれば、話が長い理由がわかりました。これはムズい。【ぽこピー × 富士葵】(富士葵)
ぽこピーの企画力は個人勢とは思えぬ壮大さを持っている。しかも、他のVTuberを巻き込んでいくスタイルので毎回発見がある。ぽこピーが富士葵さんとキクノジョーさんと共に、地方の学校を貸し切って寝泊まり動画を交互に出す企画は、青春映画のような甘酸っぱさを感じる。ただ、このメンバーがただノスタルジーを醸して終わるだけの存在でないことは明らかであろう。
我々が学生時代に感じていた校長先生の長いスピーチ。大人になった今やるといかに大変なものだったかが分かる。そんな動画を作りだした。4名がスピーチをするのだが、半分即興で言葉を紡ぐ。言葉と言葉を紡ぐために「間」が生まれていくところがよくわかる。
富士葵さんの入学式の校長の挨拶なのに、退任の挨拶を入れるスピーチが一番面白い。最初こそ、「静かになるまで3分50秒かかりました」と王道の入り方語り始め、四季を語る。風格ある話し方の中に、異様な物語が紡がれていくところに彼女のユーモアを感じた。面白い方だなとソッコーでチャンネル登録しました。
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