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『世界遺産ビジネス(木曽功)』感想

こんにちは、チェ・ブンブンです。

図書館で世界遺産関係の資料を集めている中で、木曽功『世界遺産ビジネス』を見つけた。ユネスコの日本政府代表部特命全権大使に就任したことのある著者が世界遺産登録に関する苦労や戦略、葛藤について語ったもの。机上ではなく、ナマの実践的な話が聞けると思い読んだら、非常に興味深かった。

世界遺産は、ブランドとして認知された結果、毎年膨大な申請が世界各国から世界遺産委員会に寄せられる。登録条件が厳しいので、ストーリーを組み立てて、戦略的に交渉する必要がある。そのため、世界遺産委員会は表面上は政治的軋轢による登録や多数決を嫌う傾向があるが、ロビー活動がものを言う場所となってしまっている。これは、ICOMOSやIUCNといった専門機関から「情報照会」と判断が下っても、逆転で登録してしまうケースが増えることにも繋がってしまっている。

また、ICOMOSの年間予算が5000万円しかないため組織の腐敗が起こる可能性も示唆しており、ある国ではICOMOSの職員を五つ星ホテルに宿泊させ登録を有意に進めようとしたケースもあるらしい。

近年、増加する世界遺産登録申請。まだ世界遺産を保有していない国や少ない国を優遇するために、先進国は他国に譲る必要があるが、そうも言っていられない事情についても語られる。アメリカがユネスコを脱退していこう、分担金を最も多く支払っているのは日本だという。分担金を多く払っているにもかかわらず、世界遺産登録数を増やすよう働きかけないのはこれはこれで非難の的となってしまうのだ。佐渡金山や国宝5城の登録に力を入れているのは、こうした政治的背景が関わっているのである。

世界遺産検定マイスターにおいて、前回は富士山に登山鉄道を敷く件について問われた。正解のアプローチは、明らかに無理筋ではあるがネガティブ要素を抑えて、プラスに転換する案を潤沢に盛り込むことだろう。それができていなかったので落ちたと推察できる。これを踏まえて模擬作文に取り掛かることとしよう。

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