初恋の話

インパルス、好きだったなあ。
じんわり笑える。板倉が好き。板倉みたいになりたかった時期もある。
相方の堤下も好き。どっちかって言うとこれは芸風というよりゲイ風の話。

恥ずかしくて買えんかった「男写」が出たの2005年か。当時欲しかったな。
でもまあ、2000円はすんなり出せん金額だ。まだ中(まだ中学生)だよ。
セクシー風の表紙も相まって、親に見られたくないという気持ちもあるし。

現代を生きる少年たちほど、はっきり自分が”こう”だという認識もまだできなかった。
今でこそ受け入れられはじめて、普通みたいな面で歩いて良いんですよって雰囲気は徐々に作らている(多分)が、とにかく当時は4回転半くらいひねくれていた。中二病界の羽生結弦だ。そんなキラキラしてないけど。

とは言え、自覚したのはもっと後だ。ただよく考えたら当時からそうだったと後で認識した。
何にせよ、少年時代は「好奇心でちょっとおかしかっただけ」という言い訳も通ずるし、実際、女子が無理とかそのレベルの問題は無かったし、何しろそれが普通じゃないという認識だけはあったことや、もっと大人になれば早くわかるとさえ思っていた。不思議と。

何より大人になりたい欲求はあった。
ネットでは性別も年齢も嘘をついて、等身大以上のスケールを簡単に感じられる居場所づくりに勤しんでいた。
ネトゲや掲示板、チャットに入り浸り、「頭がイイ」憧れが強かったこと、大人と交流する事で、自分は大人だと認識したかった。
おかげでご迷惑おかけしました。当時の兄さん姉さん、そして同世代の人たちとは交流はないが、みんないい人達だった。

少し逸れたが、俺は自分がひねくれていることを自覚しつつも、それは好奇心が引き金になった違和感だと認識していた。

同時期、いや、もっと前にもあやふやな好きという気持ちはあった。
当時にして思えば十分マセガキだったし、女子とも付き合うことはあった。
ただ、あんまりこう、ときめかなかったんだよな。
むしろ一方的に好きだった子がいて、その子にも興味はあった。しかし漠然と何で好きなのかわからなくなってた。そういうもんか。

この時に恐らく自身より大きいものに惹かれる現象が起きている。これは発育が良いこともあるが、先にある「大人っぽい」憧れが顕著に感じられたからだ。
むしろ「大人コンプレックス」と言った方が正しいか。自分がいかに子供っぽいかを思い知らされる感覚が嫌だった。

また第二次性徴による発毛云々も、自分は発育が遅いんじゃないかという不安も併せて他者がどうなっているか気になった。
見せるものでもないし見られるものでもない。そういうものがより一層興味を湧き立てた。

もちろん自分も成長に併せて変化はしていたのだけど、差が生まれているのも確か。
同時に、自分がそういう風にはなれないということの悔しさもあったのかも。

この頃にはっきりしたものが無いのも仕方ないが、「情」を一緒くたに扱っている節があり、好きという気持ちがはっきり自覚できていない。
好奇心の側面が強かったように感じているが、実際、そこに感情のようなものがなかったかというと、ないとは言い切れないだろう。

そういう好奇心はある種の奇行やその前後にある劣情による倒錯もあったが、それについては別の話に。

自覚を得た初めての恋は、コミケに行こうという話からだった。
彼は小中の同級生で、高校は全く別。
更に言えば、そこまで仲が良い関係でもないと思っていたし、オタクだとも思っていなかった。
意外な関係というのもあり、最初は少し困惑したが、それからは不定期に遊ぶ仲になった。
なにより彼は先の興味の対象でもあったからだ。

俺とは違うユニークさを持ち合わせて、明るいキャラだし、はっきり言って真逆さがあった。
真面目かどうかでいったら不真面目さが目立つし、どちらかと言えばいじられキャラ。
でもだからこそ好きだった。これはまだ友達として。

そして、コミケ会場。初めての東京。自分の意志で向かったのは初めてだ。
彼は少しばかり場慣れしてる感覚があり、おどおどと人混みに怯える俺の手を引いてくれた時があった。
その時、きらきらと、まるで女子が感じるような気持ちだろうとも思った、男らしいがあって、そこに惹かれた。
本当にただそれだけだったが、知らない土地で、守られるようになると体の中に眠っていた乙女心が芽生えてしまった。

コミケでは目的の本をお互い購入し、その後はふわふわとしながら帰った。
この時の目的の本は、おそらく当時師事していた絵描きさんの本と、当時から今に至るまで神絵師の本である。体よくBLと言っていた気がするがバチバチにである。気づいていたのか、自分から言っていたかわからない。寧ろ向こうも何を買っていたか知らないし、そこはお互い踏み込まないようにしていたか…。

兎角、そんな関係で、それから一緒にゲーセンに行くなり、なんなり、二宮和也としていた。
違法なので大声では言えないが、彼の乗る原チャの後ろに跨って、お腹に手を回すときのドキドキはあの時のピークだった。

この恋は最初から叶わないのを知っていたし、俺もそれを伝えるのを良しとは思っていなかったので伝える事は無いまま、いつの間にか疎遠になった。
なんなら、泣きながら恋愛相談した気もするし、ゲイについてどう思う?というような質問もした気がする。どうとかはなかったが、知り合いにいるし、俺はモテそうって言われた、みたいな話をしたらしい。ふざけんな。

唯一、いや、本当に何も無くてよかったと思うが、彼が家で寝こけている際の無防備さに思わず深入りしたくなった日もあったが、その時は別の友人も居て明らかに無理だったので茶化して笑った。切ない。

そもそもインパルスからなんでここまで飛躍したんだ?
という問いに対してはそう、彼、ちょっと堤下に似てるんだよね…。

つまり板倉になりたかったっていうのは、そういうことだったのかも。

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