見出し画像

憩いの場

大阪の田舎だけで展開している喫茶店のチェーン店の珈琲が大好きな父は、ほぼ毎週末の朝、自分がいきたいわけでなく、小学生の私にモーニングを食べさせてやるという理由を作って、通っていました。

子供なので珈琲の味などわかるわけもなく、ミックスジュースやレスカ(レモンスカッシュ)やオスカ(オレンジスカッシュ)やクリソ(クリームソーダ)を注文していたと思います。

また、例の板のプレートに鉄板をのせ、湯気が立ち上るナポリタンが大好物でした。
上に生卵をのせる」か、「薄焼き卵を一番底に敷く」かの選択では、「薄焼き卵」派でした。

昭和の喫茶店が刷り込みによって大好きになっている自分に気がついたのは、社会人になって時間調整に入ることが多くなった頃です。

大阪出張では朝食に充実したモーニングセット、地方ではランチでラーメン・チャーハンセットがあることに驚いたりと、出張先での喫茶店巡りが楽しみでした。

家の近くには、昭和な喫茶店が2軒あり、週一ペースでお世話になっています。
コロナ前は、地元の高齢者が少数たむろしているぐらいで、この客数でよく商売が成り立っているなぁと珈琲を飲みながら感心したり、のんびり日頃読まないスポーツ紙を眺めたり、一人時間を楽しんでいました。

そう、「楽しんでいました」、過去形なんです。

ある日、地域を紹介するテレビ番組が放送されたらしいです。
2軒のうち、ひとつが昭和レトロを楽しめるお店として番組内で紹介されたようです。
それを知らずに訪れると、見たこともない若い人達で充満していました。
スマホやカメラでバシャバシャ写真を撮り、撮った写真を見せあいながらキャッキャッとざわついています。

オーナーも、戸惑いながらも、一獲千金のチャンスとみたのか、回転率の悪い常連客には見向きもせず、「満席なんで」の一言で終了。

元々上から目線の方でしたがね。

もう1軒のお店に向かいます。

レトロな重いドアを引くと、でかいベルの少し低めのカランカランがお出迎え。さて、どこに座るかなぁ。

えっ!満席…

中にいるマスター(このお店ではオーナーではなく、マスターと呼ばれている)と目があって、床に置かれた荷物を障害物競走のように避けながら飛んできた。

「ごめんね、〇〇が満員だからって、ネットで「近くの喫茶店」って探したら、ここが出てくるみたいで。」

「そうですかぁ。またきます。」

あ、あ、おじさんの憩いの場が無くなってしまった。

ドトールに行くか、スタバに行くか…

このお店から徒歩5分以内で移動できるお店は、この二店舗しかありません。

ドトールは席が狭くて、よっぽど暇な時間帯で無ければ、落ち着けません。じっと本を読んでいる人を見かけたことがありますが、私には強靭な集中力がなく無理です。

では、スタバはどうでしょう。
実は、入ったことがありません。
テレビ番組で見たことがありますが、注文がなんだか呪文のようで、スムーズに注文する自信がありません。私にはハードルが高すぎます。
外から覗いても、若い人達ばかりで、おじさんが紛れ込む余地がなさそうです。

少し足を延ばして、ギリギリ徒歩圏内にカフェと呼ばれているところが2軒あります。

1軒は、狭いですが落ち着いたお店で、店主が女性の為か、いつも若い女性で満席です。ここにおじさんが一人いる絵を想像するだけでヤバいです。

最後の1軒は、超おしゃれな自転車を扱っているお店で、大きなガラスの壁で仕切られた、カウンターだけがあるお店です。自転車好きの交流の場なんでしょう。まったく興味のない私が入ってよい場所とは思えません。

おじさんが一人まったりと珈琲を楽しんで、時間を過ごせる場所って、こんなに無いんだと改めて実感しました。

ならば!自分で店を開くか!

おいおい、自分の店を自分の憩いの場にしてどうする…

と、一人ノリ突っ込みをしながら帰宅したとさ。。。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?