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STANが来た日-170cmの彼女と白米の思い出-

日本人にとって、やはり白米の安心感たるや否や。それはもう自明の理なのだと思う。おそらく私たちは遺伝子レベルで米を欲している、と言っても過言ではないはず。日常生活と切っても切り離せない尊い米を前に、ふと思い出したことがある。

それは私の大切な友人Sとの思い出。
Sとは中学時代からご縁があり、今でも付き合いのある私の数少ない友人の1人。

彼女は背が高く、恐らく170cmくらい。あまり物怖じしない性格で、初対面のキリッとしたクールな雰囲気が印象的だった。後から分かったことは彼女がかなりの人見知りだったということ。そんな訳で初日は挨拶程度だったが、一度仲良くなればなんのその、彼女は私たちの大ムードメーカーとなった。(どんな言い方?)
そして何より、彼女は白米が大好物だった。

仲良くなりたての時によくする平凡な会話の中に「好きな食べ物は?」があると思う。私も例に漏れず、彼女に質問した。大抵、中学生の答えるそれは「焼き肉」だとか「お寿司」だとか、好物の範囲というものはそれなりに決まっていると思う。思ってた。

けれど彼女は間髪入れずに「白米」と答えた。「は、白米…!」私は一瞬、戸惑った。初めて返ってきた答えだったから。確かに美味しいし、確かに毎日食べたい。けれどまさか白米とは。オムライスや海鮮丼、牛丼やカレー、調味された丼ものが数ある中で、白米と即答した彼女。その飾らない魅力に不意をつかれすぎて、あまり正確には覚えていないが、確か私は笑ってしまったと思う。その彼女の真っ直ぐさが愛おしかった。笑

彼女は牛乳も好きだった。「牛乳で米食える。」と宣言した彼女に、絶妙な愛着を覚えたのはもう10年も前のこと。彼女のそういう、良い意味で、そして色んな意味で許容値の高いところが大好きだ。(この話をすると昔の話だと彼女は嫌がるのだけれど。ごめんね。)

もちろん人格的にも、おおらかで常にネタが落ちていないかを探している笑いにストイックなところが最高だ。なんてことを書いていたら彼女からDMが来たもんだから、なんてタイムリーなのか。友だちって本当にいいものだよねと思う。(謎のタイミング)

ここまでSの話をして、何が言いたかったかと言うと、私は今年引っ越しをした。そして新しい炊飯器を買った。銘柄は象印のSTANというもの。
新品の炊飯器を目の前にしたとに、彼女が真っ直ぐな瞳で「白米」と答えた姿を思い出したのだ。


ここで少しだけ、うちのSTAN自慢を書いちゃおうと思う。いきなりだけど書く。
STANはとにかく見た目がかっこいい。かっこいいから、もう一回言っちゃう、見た目がかっこいい。笑

既存の炊飯器のようなアールは無く、スタイリッシュで適度に角のあるデザイン。蓋部分もフラットで、マット加工なのも良い味を醸し出している。表記なども無駄な記載は無く、かといってお洒落すぎて使いにくい!ということもない良い塩梅のデザインだ。
という訳でかなりの人気らしく、在庫がある時に出会えればラッキーくらいな品物だったよう。私は特に調べもせずたまたま量販店で出会い、一目惚れで購入した。

問題はここからだった。
帰宅し、意気揚々と米を研いだ。いざ使うぞ!とお釜を投入して、スイッチを押した時だった。

ゴォオオオオオオオ…

焦った。何の地響き?と耳を疑った。
でもそれは地響きでは無かった。ただ、STANが大轟音で鳴いていたのだった。

え、こんなにスタイリッシュなのに、こんな音デカいの?と思うと同時に笑けてきた。いや、笑った。

そのスマートな見た目とちぐはぐな大轟音に、何故だか愛おしさを感じてしまった私は、ちょっぴり疲れていたのかもしれない。笑

もっと言うと今や、このゴォオオオオオオオのタイミングがクセになってしまった。
炊飯スイッチを押すと、はたまた見た目とかけ離れたチャーミングな「きらきら星」が流れ始め、「お空の星よ♪」が終わって一拍置いたあたりで、小気味よくゴォオオオオオオオの大轟音が鳴り響く。そしてこれは炊飯が終わるまで続く。愛を込めて言う、うるさい。笑

ただ、ハイテクっぽく見えてローテクのような、気が利いているのにちょっとズレているような、そんなお茶目なSTANが私は大好きだ。

いつか友人のSが、私の自宅に遊びに来た時には存分に白米を堪能してもらおうと思う。もちろん、大轟音をかき鳴らすSTANで炊いた自慢の白米をたんまりと。

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