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父とちゃつみ

私は父がとても苦手
今は嫌いではないけど好きでもない

母は18歳の時に父と結婚した
とても可愛い田舎娘の母とやたらもてていた父
母が20歳の時にちゃつみが生まれた

父はとても外ずらがよく、我が家には知らぬおじさんやお兄さんがやたら来て飲んでいた。
突然連れてくるので、母がてんてこまいしていたの覚えています。
酔っ払った大人の頭をパシンと叩きながら「きらーい」など言う私を、大人はとても面白がっていました。
ホントに嫌いなのに…父の友達が憎らしく、母の味方でいたい幼稚園児だった。

父と近所の喫茶店に行くと行きつけのスナックのお姉さんや、どこぞかのママさんが声をかけてきて同席する羽目にはまり、香水の匂いプンプンするお化粧クサイ女とミックスジュースを飲んだ。
くさババア(香水臭い)は帰り際にお小遣いを握らせてくれました…
お小遣いは返しはしなかったけど母が可哀想で仕方なかった。

母は父のそんなところをあまり気にしてはいない風に装っていたけど、ある日7つ離れた小さな弟をつれて実家に帰ってしまった。
私を置いて…
小学生の私は父に激怒し、泣き叫びながら父の腹を叩いた。
この日から父のことが苦手から嫌いに変わった。

大人になって母にこの事件を改めて聞いたら、浮気への不信感だったらしい。
まだ若い母、モテてる父の無神経さに怒りが増したらしい…
その話を聞きながら、ずっと隠していた喫茶店のくさババアが頭をよぎった。
そして私をなぜ置いていったのか
とても聞くのが怖かったけど聞いてみた
その理由は…
ちゃつみのこと忘れてたから
電車でちゃつみを置いてきたと気づいたらしい
え?どーいうこと?

父がなぜモテるのか
男前なのもあるんだけど、とにかく優しいから。
何か悩んでると聞けば駆けつけて朝まで話を聞いていたり、やってくる人をもてなし、決して裕福でもないのに人のために行動し尽くす父。
母の心境は、あーこのお金でちゃつみに服買ってやれたのに…など家族のために使いたい気持ちでいっぱいだったと話してくれた。

自分勝手でわがままで好き勝手して母を苦しめるだけの存在。
別れてしまえばいいと提案したこともあった。

母からしたら父は可哀想な人らしい
まだ小さいうちに両親が離婚し、父の実母は出稼ぎに出るため、親戚に預けられ暮らしていた。
ご飯食べる時だけ母屋に行き、遠慮しながら暮らしていたことや、ご飯のおかわりはできなかったこと、買って欲しいものも言えずひたすら我慢しかしてこず育ってきたこと。
家族と暮らしてこなかったので、家族というものがどんなものか分からないことを自分の事のように辛そうに話す母がいた。
母にはそんな父が可哀想でほっとけないらしい。
こうなると私にはよく分からないけど、父はそれなりに母に対して優しかったりいいところもあるんだろうと思うことにした。
夫婦のことは分からない。

私は相変わらず苦手な父との距離が埋まらないけど、孫ができて少しは会話するようになった。
孫を溺愛し風邪ひくといけないとドライヤーで髪を乾かしてる姿を見たり、何でも1番いいところを食べさせたり、可愛いパジャマを着たらいい夢見れるとフリフリのパジャマを買ってきたり、孫のためせっせと動く父。
私の知らない一面を見ることが増えた。
小さな頃の娘もジィジが大好きで、一緒に野球を応援したり、魚釣りに行ったり、とにかくジィジと遊んでた。
19歳になった孫にも、変わらず孫一筋。

久しぶりに会ってもやっぱり上手くいかない父と娘だけど、もう少しあと少し優しい気持ちで接することができるように、いつどうなるか分からない父に真っ直ぐありがとうを言えるように、変わらなくちゃと駅の改札口で思いっきり手を振る父に、また来る~ありがとうと言えた。

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