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独身最後の日

8年前の4月30日は、私が最後の独身を謳歌した日であった。
とはいえ、病院の都合で有給を使い切ってしまっていたので、独身最後の日は、普通に仕事をしていた。

新しい人に仕事は引き継いだあとだったため、ひたすら発行した書類を封入していた記憶がある。簡単な仕事をしていれば良かったので、気持ちは翌日からの新生活に半分くらい移っていたかもしれない。

勤め先が東京だったので、昼ごはんはオシャレなカフェやレストランでランチをするのが普通の人の日常だった。しかし、私はコンビニで幕の内弁当を買い、地下の食堂で食べることにしていた。結婚式もあるので、節約しようと思ったのだ。
その日のランチが何だったかは、忘れてしまった。

夕礼で簡単に挨拶して、贈答品用のおせんべいを置いてきた。
「おせんべつのおせんべい」という、自分なりの洒落だったが、多分誰も気づいていないだろう。

家に帰ると、両親が「小樽ワイン」と刺身を用意して待っていてくれた。(当時も抗精神病薬を飲んでいたので、本当はお酒はダメなのだが…。)
小樽ワインは、母とよく北海道旅行に行っていた時に買っていた、美味しいワイン。刺身は私の好物だ。
まだ元気だった両親と三人でほろ酔いになり、その日は静かに終わった。

特別な事は何もしなかったが、私らしい「独身最後の日」だったと思う。

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