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企業はチャットボットをどう使えばよいのか~ビジネスを成功に導く使い方を解説

チャットボットは優れた業務システムであり、企業がこれを導入すれば顧客満足度を高めることも業務を効率化させることも可能です。
しかし企業の経営者は、いくら「チャットボットは高い確率で自社のビジネスを成功に導く」と聞かされても、成功できる理由や使い方を知らないと導入を決断できないものです。
この記事では、チャットボットの使い方を説明したうえで、ビジネスを成功に導く活用法を紹介します。


「チャットボットをビジネスで使う」とは要するになんなのか

チャットボットをビジネスに使う、とはなんなのか――。
例えば、ECを展開している企業なら、自社の既存のECサイトにチャットボットを埋め込めば、ビジネスで使っているといえます。チャットボットは後付けできます。
チャットボットは人間の質問に答えてくれるロボットなので、ECサイトにチャットボットが設定されていれば、ECサイトを閲覧している顧客はチャットボットに質問して情報を得ることができます。
この使い方は応用がきき、例えば企業の総務部が、従業員の質問に答えるチャットボットを導入すれば、総務部の担当者の従業員対応業務が減ります。
そのほか営業にもマーケティングにも使うことができますが、この点は後段で解説します。

チャットボットの設定手順

チャットボットを既存のサイトに埋め込むことを、設定する、といいます。
チャットボットの設定手順をみていきましょう。

チャットボットをどこに埋め込むか

チャットボットは企業のECサイトやコーポレート・サイトなどのWebサイトに設定するほかにも、SNSにも埋め込むことができます。
顧客やファンとのコミュニケーションをSNSで取っている企業にはSNSチャットボットは有益でしょう。
さらにSlackやTeamsといったビジネス・チャット・ツールにチャットボットを設定することもできます。ビジネス・チャット・ツールは例えば、プロジェクト・チーム内のメンバーどうしの情報交換に使われます。ここにチャットボットが埋め込まれていると、メンバーの質問に対して、リーダーに代わってチャットボットが回答できるようになります。

チャットボットをどう埋め込むか

「Webサイト+チャットボット」でも「SNS+チャットボット」でも「ビジネス・チャット・ツール+チャットボット」でも2つのシステムを合体させる必要があり、これがチャットボットの設定作業(埋め込み作業)になります。
チャットボットは自社開発もできますが、多くの企業はチャットボット・システムをシステム開発会社(ベンダー)から購入します。

まず「Webサイト+チャットボット」の設定ですが、ベンダーが提供するチャットボット・システムのコードを、Webサイトのコード(HTMLソースコード)に貼り付けるだけで完了します。

「SNS+チャットボット」ではAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)という技術を使います。APIはシステム、ソフトウェア、Webサイトなどをつなぐツールです。
SNSを運営している企業はAPIを提供していて、これを使って自社アカウントのSNSに自社のチャットボットを設定します。
「ビジネス・チャット・ツール+チャットボット」でもやはり、ビジネス・チャット・ツールを運営する会社がAPIを提供しているのでこれを使います。

設定方法を説明しましたが、ベンダーの担当者なら簡単に終わらせることができます。実は、チャットボットを導入する企業にとってより重要なことは、1)チャットボットにさせることを決めることと、2)チャットボットの使い方です。一つずつ解説していきます。

チャットボットにさせることを決めて選定する

チャットボットはとても便利なものですが、そうはいってもツールにすぎません。企業が高度で高価なチャットボットを導入しても、それを使いこなせなければビジネスを成功させることはできないでしょう。
チャットボットを導入する前に、「これに何をさせるのか」「どの業務を自動化したいのか」「生産性をどの程度上げたいのか」といったことを決める必要があります。これらが決まると自社に適したチャットボットを選ぶことができます。

「何をさせるのか」「何を自動化したいのか」「生産性をどの程度上げるのか」

企業がチャットボットを導入するときは、プロジェクト・チームをつくり「チャットボットに何をさせるのか」「どの業務を自動化したいのか」「生産性をどの程度上げたいのか」の3点を決めましょう。
チャットボットは次のことができます。

■チャットボットができること■
●顧客からの問い合わせに回答する(カスタマーサポート支援)
●従業員からの問い合わせに回答する(従業員対応支援)
●商品・サービスの説明
●24時間365日稼働
●商品・サービスの購入や資料請求などのコンバージョンへの誘導
●顧客のニーズを集める

このなかから「何をさせるのか」を選ぶことができます。
また、社内の業務フローにおいてある部署の業務が遅延要因になっていたら、「その業務をチャットボットで自動化できないか」と考えることができます。
さらに、チャットボットによる生産性向上の数値目標を決めておくと、導入成果を正確に測ることができます。生産性向上の数値目標には、作業の短縮時間、担当者の人数、コスト削減額、顧客満足度、コンバージョン率などが使えます。

できるチャットボットを持っているベンダーを選ぶ

企業が「チャットボットに何をさせるのか」を決めると、その業務を遂行できるチャットボットを持っているベンダーを探すことができます。具体的には複数のベンダーに対して「この業務を代行できるチャットボットか」「導入コスト、運用コストはいくらか」といったことを問い合わせることになります。
問い合わせを受けたベンダー各社は、発注企業に対し仕様や価格などを提示するので、そのなかから自社のニーズに合ったチャットボットを選びます。

チャットボットの使い方~担当者目線でケースごとに解説

チャットボットの使い方を紹介します。チャットボットを与えられた担当者がどのようにこれを扱っていけばよいのか、ケースごとに解説します。

カスタマーサポートで使うケース

企業がECサイトやコーポレート・サイトにチャットボットを設定しておけば、顧客や消費者はチャットボットに質問すれば回答を得ることができるので、カスタマーサポート業務が自動化されます。
ただし、チャットボットが回答できるのは事前にプログラミングしておいた回答だけです。AIを搭載したチャットボットならあとから学習したことも回答できますが、それでも学習した範囲でしか答えられません。
そのためカスタマーサポート・チャットボットは、導入後も更新したり学習させたりする必要があります。

また、高性能AIチャットボットでも回答できない質問には、カスタマーサポートの担当者が回答する必要があります。
カスタマーサポート・チャットボットには大抵、担当者を呼ぶ機能があるので、人(担当者)とコンピュータ(チャットボット)が連携することが大切です。

マーケティングのヒント探しに使うケース

企業のコーポレート・サイトのチャットボットに寄せられた消費者の声を分析すると、消費者ニーズをみつけることができます。これはマーケティングのヒントになります。
例えば「御社にこのような商品はありますか」という質問は、質問者のニーズとみなすことができます。
もちろん人でも消費者の質問からニーズを拾うことはできますが、チャットボットを使えばコンピュータを使って効率良く、かつ確実に、かつ大量にニーズを割り出すことができます。
消費者の声はカスタマーサポートのチャットボットにも寄せられるので、マーケティングの担当者とカスタマーサポートの担当者が協力することでマーケティング効果が高まるでしょう。

コンバージョン率を高めるときに使うケース

商品・サービスの購入や資料請求などのコンバージョンの率を高めることは、売上増に直結します。ECサイトだけでもコンバージョン率を高めるツールですが、これにチャットボットを埋め込むとコンバージョン率向上効果が強化されます。
この方法は簡単で、チャットボットが質問者に回答するとき、商品・サービスの購入を促したり、資料請求の方法を説明したりするように設定すればよいだけです。例えば、消費者がA商品について質問をしたら、チャットボットがA商品の説明をしたあとにB商品をアピールするようにプログラミングしておくのです。

従業員からの問い合わせの回答に使うケース

総務部や経理部、人事部などは従業員からの問い合わせが多い部署です。これらの部署がチャットボットを導入すれば、自動で従業員からの質問に回答することができます。
従業員からの問い合わせは、有給休暇の申請の仕方や年末調整の仕方、出張費の精算、給料の額、福利厚生の利用方法などの定型のものが多いので、チャットボットが活躍しやすいでしょう。
チャットボットに想定されるQ&Aを入力するだけで済みます。
また、チャットボットに寄せられた質問を分析すると、多くの従業員が困っていることがわかり業務改善につなげることができます。

営業担当者のサポートに使うケース

メーカーの営業担当者のなかには、取引先の担当者から高度な技術的なことを尋ねられて困ってしまう人もいるでしょう。このとき営業担当者は、自社の開発担当者に尋ね、取引先の担当者に回答することになります。
自社製品の詳細な情報を盛り込んだチャットボットがあれば、営業担当者は取引先で自身のスマホでチャットボットにアクセスするだけで、高度な技術的な質問に答えることができます。
また公開できる範囲の自社製品情報を盛り込んだチャットボットをつくれば、取引先の担当者に自分で調べてもらうことができ、営業担当者の作業が減ります。

さまざまな業界・企業での活用事例~こうして生産性を上げた

チャットボットの質問に答える機能は、さまざまなビジネス・シーンで応用できます。
業界・企業のチャットボットの活用事例を紹介します。
きっと「うちの会社ならこんなことにチャットボットを使えそうだ」と想像できるでしょう。

スペックが増えて質問が複雑化したパソコン・メーカーの事例

フルオーダーメイドのパソコンを製造・販売しているA社の売りは、価格に応じてさまざまなスペック(仕様)のパソコンをつくれることです。顧客は自身が必要とするスペックを高め、不要なスペックを削除できるので、コストパフォーマンスが高いパソコンを買うことができます。
ところがスペックの種類や程度が増えすぎたため、顧客の高度かつ複雑な質問に回答できる人が少なくなってしまいました。スペックと価格に納得して購入する人が多いので、カスタマーサポート体制の拡充が急がれました。
そこでA社はパソコンのスペックを解説するチャットボットを導入。「○○シリーズのビデオメモリの容量を増やす方法」や「□□シリーズのステータスLEDの動作について」といったマニアックな質問に回答できるように設定したところ、チャットボットでの疑問解決数を半年で6倍にすることができました。

生活消耗品EC企業はECサイトの使い方を教える

ECのB社は、コスメ、食品、スナック、水、酒類、洗剤、キッチン用品、サプリメントなどありとあらゆる生活消耗品を取り扱っています。そのためB社のECサイトは商品情報があふれ注文しづらいという欠点がありました。
そこでB社はECサイトの使い方を説明するチャットボットを導入しました。
質問は、注文方法、配送方法、キャンセル方法、領収書などのカテゴリーごとに受け付けています。さらにフリーワードでも検索できるようにして、例えばチャットボットに「商品について知りたい」と入力すると、「商品を探したい」「商品の購入について」「商品の返品について」「お買い得な商品を知りたい」といった質問カテゴリーが現れます。「お買い得な商品を知りたい」を選択すると「希望商品のカテゴリーを選び、おすすめ順、売れている順、レビュー点数の高い順で表示させてください」といった回答が表示されます。

ネット生命保険はチャットボットと保険プランナーのダブル対応

ネット生命保険会社のC社は、LINEとフェイスブックの公式アカウントにチャットボットを設定しました。生命保険を検討している人がチャットボットに生年月日や保険金額、保険期間、保障内容、保険料を伝えるだけで見積もりができ、条件に合った保険の種類とその保険料がわかります。質問者がさらに質問したい場合は、チャットボットから人の保険プランナーに切り替わります。
利用者は保険料はすでに判明しているので、保険プランナーに気になる点だけを尋ねれば知りたいことを知ることができます。
C社の保険プランナーは、チャットボット経由で質問者の希望や予算がわかっているので、その情報に基づいて適切な商品(保険)をすすめることができます。つまり保険を検討している人のニーズを確実にとらえたうえで営業活動ができ、そのうえさらに効率化できるわけです。

1日200件の新入生からの問い合わせの回答に成功した事例

D大学の学生課は毎年入学式直後に、新入生からの問い合わせ対応に忙殺されていました。単位の取り方から始まって、奨学金の申請方法や就職活動サポートの内容、さらに大学が関与しないサークルの加入方法まで、質問は多岐にわたります。よくある質問とその回答は、リアルでのオリエンテーションで説明したり大学の公式サイトに掲載したりしているのですが、新入生たちはそれらをあまりチェックしないのです。
そこでD大学はチャットボットを導入し、大学生活の質問に回答できるようにしました。キーワードを入力するだけで回答が得られるようにしたり、学生課に来た新入生にチャットボットの利用をすすめたりしたことで、チャットボットは1日最大200件の質問に回答するまでになりました。学生課の窓口に新入生がドッと押し寄せる春の年中行事は、これでなくなりました。

チャットボットとほかのデジタル・ツールとの連携方法を紹介

チャットボットはほかのデジタル・ツールと連携させることで、さらに威力を発揮します。WebサイトやSNSにチャットボットを埋め込むことも「チャットボット+ほかのデジタル・ツール」という形態のわけですが、ここではWebサイト・SNS以外のデジタル・ツールとの連携を紹介します。
なお、ほかのデジタル・ツールと連携させるときもAPIを使うのは同じです。

営業支援システムと連携すると顧客情報が濃密になる

営業支援システムは、営業担当者に必要情報を知らせるデジタル・ツールです。これとチャットボットを連携させると、顧客情報や見込み客情報が濃密になるでしょう。

営業支援システムには、顧客との商談内容や、顧客企業の担当者が作成した見積書などが登録されています。
また企業に問い合わせをする人やクレームを入れる人は、見込み客(リード)になる可能性があるわけですが、その人たちが個人情報を明かした場合、その情報を営業支援システムのリード機能に登録することができます。
さらに営業支援システムでは、営業活動に使える資料やデータを保管して、営業担当者がいつでもアクセスできるようにしています。
営業担当者が進行中の案件の内容を営業支援システムに登録すると、そのほかの営業担当者がその情報をみて進捗状況を把握できるようになります。

こうした機能を持つ営業支援システムとチャットボットを連携させると、ある顧客がチャットボットに質問をすると、その情報が営業支援システムのその顧客のデータにも反映されるようになります。これにより営業担当者がその顧客の情報をチェックすると、その顧客が求めるものや困っていることがわかるので次の営業アクションを起こしやすくなります。

コミュニケーション・ツールと連携すると従業員の利用が増える

チャットボットは多くの人に使ってもらわないと効果を出すことができません。そこで従業員たちが普段使っているコミュニケーション・ツールに社内情報チャットボットを設定すると利用拡大を期待できます。

例えば企業の経理部が、従業員向けに社内情報を提供するチャットボットをつくっても、従業員がそのチャットボットを使わないと経理部などへの問い合わせは減りません。
よくある失敗例では、あまり閲覧されていない従業員向けWebサイトに社内情報チャットボットを設定してしまい、チャットボットも利用されなくなる、ということがあります。

従業員たちがSlackやTeamsなどのコミュニケーション・ツールを多用していれば、これらと社内情報チャットボットを連携させると、社内情報チャットボットの利用も増えるでしょう。

チャットボットを使うときの注意点

企業がチャットボットを使うときの注意点を紹介します。生産性をより高めるためのコツになります。

チャットボットは「育てるもの」と理解する

チャットボットは、チャットボットが有している情報しか回答できません。そこでチャットボットを「育てる」ことが重要になります。
AIを搭載したチャットボットなら、導入後もAIに新たな情報やデータを与え続けると、AIが学習して答えられる質問が増えます。
非AI型のチャットボットでも、答えられない質問がみつかったら、その質問と答えをチャットボットにインプットすることで回答できるようになります。
これらがチャットボットの育成になります。

利用者に「使いやすい」と思わせる

チャットボットの効果は、利用が増えないと高まりません。利用者が「使いやすい」と感じるチャットボットをつくりましょう。
低性能のチャットボットだと、利用者に「その質問は理解できません」「文章を変えて質問してみてください」と回答することが増えてしまい、使いにくさを感じさせてしまいます。だから「育てる」ことが重要になります。
また、チャットボットの画面のデザインや操作性などのインターフェースも使いやすさに影響しますので、良いものを選んで導入するようにしてください。

個人情報の管理を徹底する

チャットボットの利用データは営業にもマーケティングにも活用できるわけですが、そのデータは個人情報になるので厳重に管理しなければなりません。
データの暗号化、アクセス制限、データの保存期間の設定、セキュリティポリシーの整備は基本行動といえます。

利益を生む情報を獲得する~データ分析やレポート作成を使いこなす

チャットボットのメインの機能は、顧客や従業員などに情報を提供することですが、逆にチャットボットから情報を得ることもできます。
顧客や従業員の質問を分析すれば、その人たちが何を望み、何を望んでいないかがわかります。このような顧客情報や従業員情報は、カスタマーセンターの担当者や総務部や経理部の担当者でも入手できますが、人では集められる情報量が限られますし、分析にも時間がかかります。
しかしチャットボットなら、顧客や従業員の質問をデジタル・データで集めてコンピュータで処理できるので、大量解析も短時間分析も可能です。
高性能のチャットボットには、データ分析機能やレポート作成機能がついていて、質問の分析も有益な知見の抽出も簡単に行えます。
チャットボットの便利機能は企業のビジネスを高度化させます。

まとめに代えて~チャットボットの使い方のよくある質問

チャットボットの使い方と、これをビジネスに活用する方法を解説しました。
本稿の内容を「よくある質問に回答する」形式でまとめます。

Q:なぜチャットボットを使うとビジネスの成功確率が上がるのか。
A:チャットボットは、人の質問にロボットが回答する業務システムです。企業がチャットボットを使えば、従業員の回答業務の量が減るので効率化や生産性の向上が期待できます。
また顧客や消費者はチャットボットから瞬時に知りたい情報を得られるので満足度が向上し、これも売上増、利益増に貢献するでしょう。

Q:企業がチャットボットを使うにはどうすればよいのか。「設定」「埋め込み」とは何か。
A:チャットボットはよくECサイトやコーポレート・サイトに設定されています。チャットボットは後付けでき、既存のWebサイトに設定すること埋め込みといいます。SNSにもチャットボットを埋め込むことができます。

Q:チャットボットをどのように使ったらよいのか。
A:メジャーな使い方は2つあり、1)顧客や消費者の質問に回答させることと、2)従業員に社内情報を伝えること、です。パソコン・メーカーが顧客にスペックを説明するのに使ったり、大学の学生課が新入生に大学生活の送り方を紹介するのに使ったりしています。

Q:なぜチャットボットが営業やマーケティングに使えるのか。
A:チャットボットは顧客や消費者の質問を集めることができます。高性能チャットボットなら集めた質問を分析してレポートにすることができ、顧客や消費者のニーズを知ることができ営業活動やマーケティング活動の資料になります。

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