見出し画像

【完全理解】チャットボットには3種類ある~うちの会社の課題を解決するのはどれだ

企業はチャットボットを、顧客対応にも社内業務の効率化にも使うことができます。ただ1つのチャットボットですべての仕事をこなせるわけではなく、チャットボットによってできることが変わってきます。
そうです、チャットボットには種類があるんです。
チャットボットの種類には大きくシナリオ型、辞書型、AI型の3つがあります。この記事では、それぞれのチャットボットができることや、仕組みや導入する利点、課題などを解説します。
チャットボットの導入を考えている企業の担当者は「うちの会社の課題を解決するのはどれだ」という視点で3種類のなかから選んでみてください。


チャットボットの「シナリオ」「辞書」「AI」の3種類でできること

チャットボットのシナリオ型、辞書型、AI型は、それぞれ仕組みが異なるわけですが、その点は後段で解説します。
先に企業の担当者の最大の関心事である、3種類のチャットボットができることをみていきましょう。

なおコンピュータの能力はシナリオ型<辞書型<AI型の順で高くなります。下記でできることを紹介するわけですが、シナリオ型ができることは辞書型とAI型でもできて、辞書型ができることはAI型でもできる、と理解してください。

シナリオ型チャットボットのできること

シナリオ型チャットボットは、事前に用意しておいたシナリオとおりのことができます。つまり想定していた質問に想定とおりの回答を提示することしかできないのですが、この定型業務をこなす機能だけで十分な場合もあります。

製品・サービスの説明
シナリオ型チャットボットは、製品やサービスの説明ができます。
企業はカスタマーサポートの一環として消費者や顧客に対して自社製品・サービスを説明していると思いますが、その仕事をシナリオ型チャットボットが代行します。
カスタマーサポート業務チャットボットは、例えば企業のWebサイトに設定することができます。消費者が企業のWebサイトを開き、そこに搭載されているチャットボットにアクセスすると、チャットボットが「説明を受けたい製品は次のうちどれですか」と選択肢を示します。消費者が尋ねたい製品を選択すると、チャットボットがその製品を解説する文章を提示します。

ホテルや飲食店の予約
シナリオ型チャットボットは、ホテルや飲食店などの予約業務ができます。予約や予約変更、キャンセルの受け付けは、申し込み者に「いつ予約しますか」「変更しますか」「キャンセルしますか」といったように質問の選択肢を提示して回答を提示できるので、定型とおりに仕事を進めることができるため、シナリオ型チャットボットで十分といえます。

情報提供
シナリオ型チャットボットは、情報提供ができます。
企業は多くの公開可能情報を持ち、消費者や顧客などは、企業が持つ情報を求めています。商品やサービスの内容、在庫状況、企業の事業内容、上場企業であれば有価証券報告書の内容などは公開可能情報です。
公開できる情報を提供するだけなので定型業務であるため、シナリオ型チャットボットで対応できます。

辞書型チャットボットのできること

辞書型チャットボットは辞書のようなものを持っていて、その情報の範囲内で回答できます。シナリオも辞書もあらかじめチャットボットに登録しておく情報という点では同じですが、情報量は辞書のほうが圧倒的に多くなります。
また、シナリオ型チャットボットは、チャットボット側が利用者に質問の選択肢を与えて「どれについて知りたいですか」と問うのに対し、辞書型チャットボットは利用者がフリーワード(適当な言葉)で質問できるのでよりチャット(おしゃべり)に近い形になるでしょう。

FAQ(Q&A)
辞書型チャットボットは、FAQ(Q&A)に対応できます。
企業が公開可能な情報を大量に保有していると、消費者や顧客がどの情報を求めているのか予想するのが困難になります。そのようなときFAQ用の辞書型チャットボットを導入すれば、質問者は知りたい情報のキーワードをチャットボットに入力するだけで求める回答を入手できるわけです。
辞書型チャットボットは入力されたキーワードから、質問者が求める答えを「推測」して辞書のなかから回答を探します。ただ辞書型チャットボットはAIを搭載しているわけではないので、厳密には推測していません。プログラムにしたがって動いているだけなので「疑似的な推測」といえるでしょう。

ニュースの提供
辞書型チャットボットは、ニュースの提供ができます。
マスコミ企業だけでなく、一般の事業会社のなかにもさまざまなニュースを提供しているところがあります。辞書型チャットボットを使えば、利用者が求めるニュースを提供できます。
利用者がニュース・チャットボット(辞書型)に知りたいニュースのキーワードを入力すると、チャットボットがキーワードに関連したニュースを探してくれます。辞書型チャットボットは「疑似的な推測」ができるので、利用者が入力したキーワードから、その利用者が関心を持っているニュースを当てることができるわけです。

AI型チャットボットのできること

AI型チャットボットはAIという革命的なコンピュータ技術を搭載しているので、かなり複雑な仕事をこなすことができます。

複雑な顧客対応ができる
AI型チャットボットは、複雑な顧客対応ができます。
消費者や顧客はときに、企業が想定していないことを問い合わせてきます。例えば生活用品メーカーに「御社の歯磨き粉は靴磨きに使えますか」と質問するかもしれません。AI型チャットボットならこのようなとき、「当社の歯磨き粉を靴磨きに使っている事例はあるようですが当社では推奨していません。靴の材質によっては傷がつく恐れがあります」といったように答えるでしょう。
企業が想定していない質問の答えはシナリオにも辞書にも掲載できないので、シナリオ型や辞書型のチャットボットでは複雑な顧客対応ができません。
しかしAI型チャットボットなら回答を生成できるので複雑な顧客対応ができます。

質問者の感情を分析したうえでの対応
AI型チャットボットは、質問者の感情を分析したうえで対応できます。
AI型チャットボットのなかには、質問者が入力した質問文から質問者の感情を分析できるものがあります。消費者が企業に問い合わせをするとき、純粋に知りたくて質問する場合と、怒って質問してくる場合があります。感情を分析できるAI型チャットボットなら、純粋な質問には自分(=AI型チャットボット)が答えて、怒りの質問は人のオペレーターに回すことができます

自動発注
AI型チャットボットは、小売店で自動発注ができます。
小売業企業がAI型チャットボットを導入すれば、商品や材料の発注を任せることができます。
小売店では、商品の在庫が少ないと販売機会を失い、在庫が多いと保管コストが増すので、常に適量を発注しなければなりません。しかし適量は季節や曜日、天候によって変わってくるので、発注業務は難しい仕事の1つに数えられています。
AI型チャットボットなら、過去の販売データや在庫データ、気象データなどから適量を割り出すことができるので、足りなくなることも余ることもありません。
さらにAI型チャットボットと発注システムを連動させれば、人がAI型チャットボットに指示を出すだけで自動で発注できるようになります。

シナリオ型チャットボットの基礎的理解

シナリオ型、辞書型、AI型の各チャットボットの得意な仕事が理解できたところで、ここからは3つのチャットボットの仕組みなどを解説します。
まずはシナリオ型チャットボットから説明します。

シナリオ型チャットボットの仕組み

一度AI型チャットボットを利用してしまうと、シナリオ型チャットボットの機能に物足りなさを感じるかもしれませんが、それでもそれなりに高度なコンピュータ技術が使われています。
シナリオ型チャットボットを開発するときはまず、会話フローを設計します。この作業はアナログで行われ、担当者たちが「このタイプの顧客はこのような質問をするはずだ」「それにこう答えよう」といったように想定質問と想定回答をつくっていくのです。
また質問者の質問は一般的に「層」状態になっているので、これにも対応させます。例えば、化粧品について知りたい、という質問の下には、ファンデーションについて知りたい、という質問があり、その下には、有効成分の種類を知りたい、や、有効成分の量を知りたい、や、アレルギー反応を引き起こすかどうか知りたい、といった質問があります。
層状態の質問と回答を整理する必要があるので、シナリオ型チャットボットでもそれなりに高度なコンピュータ技術が必要になるわけです。

シナリオ型チャットボットの利点

シナリオ型チャットボットのコンピュータの性能レベルは3種類のなかで最下位ですが、よくある質問に素早く回答する点では、辞書型やAI型より優れていることがあります。
また、シナリオ(つまり質問と回答)が固定されているので、ブレのない顧客サポートができます。
また、シナリオ型チャットボットの導入コストは3種類のなかで最安なので、これで企業の課題を解決できるのであれば第1選択肢にしてもよいでしょう。

シナリオ型チャットボットの課題

シナリオ型チャットボットの課題は柔軟性に欠けるところです。質問者がファンデーションの有効成分の量を知りたい場合、シナリオ型チャットボットが最初に提示する化粧品の選択肢のなかからファンデーションを選び、ファンデーション関連項目のなかから有効成分を選び、有効成分の種類を選び、有効成分情報のなかから量を選ばなければなりません。
辞書型チャットボットやAI型チャットボットになら「このファンデーションのこの有効成分の量を教えて」と入力するだけで回答が得られるでしょう。
さらに、企業が新たな質問についてシナリオ型チャットボットに回答させたい場合、質問と回答を登録する必要があります。新製品を次々開発している企業には手間がかかります。

辞書型チャットボットの基礎的理解

続いて辞書型チャットボットの仕組みなどを紹介します。

辞書型チャットボットの仕組み

辞書型チャットボットは、質問者が入力したフリーワードから質問者が求める答えを「推測」して適切な回答を提示するわけですが、この作業をAIを使わず一般的なプログラミングだけで行っています。
辞書型チャットボットは、フリーワードから重要なワードを検出して、重要なワードに紐づけられた情報(回答)を辞書のなかから探して提示しています。
また辞書型チャットボットは、類似のキーワードにも対応できるように設計されています。例えば、自動車は車やクルマ、四輪、エンジン車などと言い換えられることがありますが、辞書型チャットボットは質問文のなかに「四輪」と書いてあれば「自動車」について回答できます。
さらに辞書型チャットボットは、質問者の質問に対して回答がみつからなかったら回答できないと伝えたり、「質問文を変えてみてください」と要請したりすることができます。

辞書型チャットボットの利点と課題

辞書型チャットボットのコンピュータの性能は、シナリオ型のコンピュータとAI型のコンピュータの中間に位置するので、利点と課題も中間的なものになります。
つまり、辞書型チャットボットは、シナリオ型チャットボットにできないことができる利点がありますが、AI型チャットボットができることができないという課題があります。

したがって、企業がシナリオ型チャットボットを導入したものの十分な効果が得られないとき、辞書型チャットボットにリニューアルすれば効果が得られるかもしれません。しかし、シナリオ型から辞書型にステップアップするくらいなら、一気にAI型チャットボットを導入したほうがよいと判断することもできます。
チャットボット活用をそれほど広げないのであれば辞書型でも十分かもしれませんが、業務の効率化を進めるためにチャットボットの利用を拡大する計画があればAI型を選択したほうがよいでしょう。

AI型チャットボットの基礎的理解

AI型チャットボットの最大の特徴は、ほとんど人対人と変わらない会話ができることです。AI型チャットボットを利用すると「まるで人と会話しているよう」と感じると思いますが、それはAIが、人が文章を理解するように文章を解析・分析・判断しているからです。

AI型チャットボットの仕組み

質問者が文章で質問をすると、AI型チャットボットは、文章のトークン化と意味解釈と文法解析を行います。文章のトークン化とは、文章を最小単位に切りわけることです。例えば「切りわけることです」をトークン化すると「切る、わける、こと、です」となります。ここで「切り」を「切る」に変えていますが、これをレマティゼーションといい、英語なら例えばisをbeに変えます。
AI型チャットボットが文章をトークン化するのは、最小単位の単語の意味を解釈したり、文法から全体の意味を割り出したりするためです。
意味解釈と文法解析が終わると、AI型チャットボットは質問者が情報を求めているのか、説明を求めているのか、要約を求めているのかを判断します。
続いてAI型チャットボットは自身が保有する情報(知識ベース)から回答に必要な情報・知識を引き出します。
知識ベースから引き出した情報・知識を使って文章をつくり、回答として質問者に提示して業務完了です。
文章をつくることを、AIの領域では「生成する」といいます。

AI型チャットボットの利点

企業が顧客対応や社内業務の効率化にAI型チャットボットを使う利点は、顧客満足度と従業員満足度が格段に向上することです。
AIには学習機能があるので、教師役になる担当者がAI型チャットボットに情報を教えれば処理できる仕事が増えていきます。また、回答の正答率も高くなっていきます。
また、チャットボットによる回答数を増やす場合、シナリオ型や辞書型は人が情報を登録していかなければなりませんが、AI型チャットボットなら教師役が教えるだけで回答数が増えていきます。その過程は例えば、コールセンターの新人オペレーターが仕事を続けているうちにベテラン・オペレーターに成長していくのと同じです。

AI型チャットボットの課題

企業がAI型チャットボットを導入することの課題は、学習に手間と時間がかかることです。しかし人材育成の手間と時間のコストを考えると、AIは忘れることも退職することもないのでそのコストは割安といえます。
またAI型チャットボットの導入費用は、シナリオ型や辞書型のチャットボットより高額になるはずです。しかしこちらも、AI型チャットボットは業務パフォーマンスが高いので、短期間で投下コストを回収できるでしょう。
ただしAIは進化途上のコンピュータ技術なので、一口にAI型チャットボットといっても開発したシステム開発会社によって性能や機能はまちまちです。優秀なAI型チャットボットを探せるかどうかが課題になります。

チャットボットの選び方

企業の担当者がチャットボットの種類による性能や機能の違いを把握できたら、いよいよ自社に合ったチャットボットを選んでいきます。
チャットボットは業務支援ツールなので、費用対効果を見極める必要があります。企業の担当者は複数のチャットボットを調べて、導入費と省力化・省人化の金銭的価値を比較するとよいでしょう。

自社の課題を明確にする~チャットボットにさせる仕事を確定させる

チャットボットは種類によってできることとできないことが異なるので、これを導入する企業は、チャットボットにさせる仕事を確定させる必要があります。
企業の担当者は「この仕事を代行できるチャットボットを探す」と意識してシステム開発会社に問い合わせたほうがよいでしょう。そのためには、自社の課題を洗い出す必要があります。
例えば、多くの顧客がカスタマーサポートセンターの対応に不満を抱いている場合、製品やサービスの説明ができるチャットボットを導入することで、高い費用対効果を得ることができます。

費用対効果を考慮してシナリオ型、辞書型、AI型を選ぶ

シナリオ型チャットボットは、業務パフォーマンスは高くないがコスト安。
AI型チャットボットは、業務パフォーマンスは高いがコスト高。
辞書型チャットボットは2つの中間。
3種類のチャットボットにはこのような特徴があるので、費用(=コスト)対効果(=パフォーマンス)を考慮して選ぶ必要があります。
簡単な仕事をさせるのに高額なAI型チャットボットを選ぶ必要はありませんし、難しい仕事が山積みなのに安価なシナリオ型チャットボットを購入してしまうと導入メリットが得られません。

「育てる」ことまで考える

AI型チャットボットは、導入してから次第に賢くなっていくので、導入当初は期待とおりのパフォーマンスを発揮しないかもしれません。AI型チャットボットを導入するときは、AIの教育体制も構築しておきましょう。
教育とは具体的には、導入する企業がAIの教師役となる担当者を決めAIに学習させることを指します。その担当者がAIに精通していなければ、AI型チャットボットを販売しているシステム開発会社にサポートしてもらう必要があります。したがってチャットボットを選定するときはサポート体制までチェックするようにしましょう。
シナリオ型や辞書型のチャットボットでも、新製品・サービスをつくったり新しい情報が発生したりしたらそれをチャットボットに登録する必要があるので「育てる」ことは必要になります。

チャットボットの選び方については、別記事「チャットボットの正しい選び方〜導入する企業が押さえるべき3つのポイント」で詳しく書いていますので、ご興味があればそちらの記事もお読みいただければと思います。

まとめ~3種類を比較しながらもAI型には特に注目を

シナリオ型、辞書型、AI型の3種類のチャットボットはこの順に進化して性能も上がってきたわけですが、3世代とも現役です。古いものが新しいものに置き換わるシステムもありますが、チャットボットはそうなっていません。それは低性能のチャットボットでも人の代わりになって、なおかつ低価格でコスパに優れるからです。
ただカセットテープやワープロ、ガラケーのように、一時的に共存することができても新しい製品との間に圧倒的な性能の差ができてしまうと衰退してしまいます。AIは今、驚異的なスピードで進化しているので、チャットボットでも低価格・高性能のAI型が現れるかもしれません。そうなるとAI型チャットボットが圧倒的に有利になります。
これからチャットボットを導入しようと考えている企業は、3種類のチャットボットの費用対効果を比較しつつも、AI型チャットボットには特に注意したほうがよいでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?