【短編】融雪歌
シャッ...シャッ...。
乾いた音を響かせながら、夜の路地を歩く。
今日はやけに風も強く、冷たい。
なんだか寂しげな夜だった。
ジャッジャッ...。
街に響く足音がわずかに変わった。
ふと足元を見ると、ビルと電柱の間に
小さな雪の塊がいる。
ニュースを騒がせた大雪から1週間。
町はすっかり全てを忘れて、
近所でしぶとく残っていた雪も
3日後には消えていた。
こいつは日の当たらない中、
様々な人に邪険にされ、
じりじりと溶けながらも生き続けていた。
きっとこの雪も何日か後には、消えている。
それをきっとみんなわかっていた。
その場にしゃがみ込む。
手のひらほどの黒く染まった雪を半分に割ると、
まだ白く、汚れていない雪がおずおずと現れた。
その美しい雪を一掬いすると、そっと口に含む。
喉をゆっくりと降りていくのを感じると
その場を後にした。
了
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