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相模川の新旧ツインブリッジを探訪する ~相模原市緑区・小倉橋と新小倉橋~

いつもの八王子市・南大沢から少し飛び出して、土木遺産である、相模川に架かる小倉橋と新小倉橋を探訪してきました。目的は、「土木学会選奨土木遺産」に選ばれたこの橋を題材に、土木学会のwebマガジンである、「From DOBOKU」へ原稿を書くための取材でした。From DOBOKUの投稿内容は、下記にリンクを貼ったので、そちらをご覧ください。その原稿では書ききれないほど、この場所には魅力的なスポットがたくさんあるので、それを紹介したいと思います。

小倉橋と新小倉橋は、相模原市緑区(平成の大合併の前は城山町だった地区)の相模川に架かる橋です。相模川は、丘陵地をかなり深く浸食し、50mくらいある河岸段丘を形成しています。少し上流には「城山ダム」もあるところですが、最近では市街化が進み、右岸側の段丘上は大型ショッピングセンターが建ち並び、左岸側には圏央道の相模原ICが完成し、市街地にダムがあるような雰囲気になってきています。

平成になってから完成した「新小倉橋」は、河岸段丘の上部をダイナミックに一跨ぎする橋で、道路交通は大半がこの橋に移りましたが、「小倉橋」は河岸段丘の底部に架けられた橋で、これも地元住民にとっては必要不可欠な橋であるため、現在は両方の橋が供用され続け、「ツインブリッジ」のようになっている橋です。古くから津久井方面への道は、この経路を通っており、架橋前から渡船があったりと、趣のある場所です。そういう場所を歩きたいと思います。

【小倉橋付近の新旧比較】

今昔マップから、新旧この地域の新旧比較をしてみましょう。20世紀初頭には、まだ小倉橋は無く、河岸段丘を昇降して、川を渡船で渡る形だったと思われます。昭和に入り、小倉橋が建設されました。戦後になると、その上流に「城山ダム」と「谷ヶ原浄水場」が建設され、平成になってから、「新小倉橋」ができるように進化してきました。最近の地図で、市街地を示す赤色の区域が広がっていることを確認できるでしょう。では、実際の小倉橋周辺を歩いてみます。

最初に歩いたのは、向原地区。段丘崖の端部に家が建ち並びます。大木があることからも、古くからの住宅地であると想像されます。石垣の石も、相模川から取れた石を使っているのでしょうか。

旧城山町のマンホール。小倉橋と舟運が書かれています。地元の人にとっては橋は地域の宝だったのでしょうね。

段丘崖を下る旧道を発見しました。この道を降りてみます。

見事なくらいのつづら折りの坂道。今も多少通行があるのか、道としてはそれなりに整備されています。

露頭する段丘崖。たまに玉石が出現しています。

険しい坂道を降りて、現役の車道にやってきました。

車道は、段丘崖を滝のように流れる小さな川の谷筋にできています。谷にアーチ橋を見つけました。この車道の旧道のようです。今は道路としては使われておらず、工事現場のヤードになっていました。

橋には、「久保澤橋」と記載されていました。小倉橋ができた頃には架かっていたのかもしれません。工事は、導水施設の工事のようです。この地区には、明治時代から横浜の近代化を支えた、「横浜水道」の施設が今も現役であります。

車道から外れて、急勾配の歩道がありました。昔はこの道がメインルートだったのでしょうか。

急勾配の歩道から垣間見える小倉橋。美しい風景です。

小倉橋。本当に優雅なアーチ橋です。

川のほとりに古びた監視塔が建っていました。舟運のための施設でしょうか。

川には今も船が浮かんでいます。川べりに釣り船屋さんがあり、今も川の恵みを享受することができます。

橋の上から眺めた小倉橋。途中でしか離合できない狭い橋です。

対岸の道路も、同じく段丘崖を登っていきます。石積みの石が鮮やかです。

小倉神社という神社がありました。小倉神社にある石碑が印象的だったのでご紹介します。

地元の名士、田野倉仙蔵翁をたたえる石碑です。明治時代にこの地で活躍した人のようです。農業や舟運などの発展を支えた人を讃えているようです。

小倉橋については、2010年2月号の土木学会誌に記載されています。(記事は土木学会員のみ参照可能です。)

今度は新小倉橋を探訪します。新小倉橋の下部から。新小倉橋は、2004年に開通したアーチ橋です。詳細は下記の報文に記載されています。

【新小倉橋】
発注者:神奈川県津久井土木事務所
橋長:193m、アーチスパン:150m、幅員:22.5m
施工:大成・住友・相模土建JV
工期:1995年12月~2000年3月

まずは真下から眺めたところ。非常にダイナミックです。

新小倉橋は、片側2車線の道路橋です。奥に見える高架橋が圏央道で、相模原ICのすぐ近くになります。

歩道からの小倉橋や相模川の眺め、最高です。少し張り出した位置から眺めることもできます。

【終わりに】
相模川に架かる「小倉橋」と「新小倉橋」。風光明媚な舟運で栄えた面影を今に残し、素晴らしいデザインの新旧ツインブリッジが共演する姿は必見です。土木遺産を楽しむにはおすすめの場所だと思います。


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