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【南大沢土木構造物めぐり】No.46 京王堀之内駅の北側を歩く

前回の探索で、京王堀之内駅の南側をめぐりました。南側は、主に「新住宅市街地開発事業」(新住事業)で作られた、新しいニュータウンの町を開発したエリアですが、今回は北側のエリアを紹介します。

(前回の探索)

【今昔マップで見る堀之内】
地図で昔の堀之内地区と今を比較してみましょう。京王堀之内駅の北側の大栗川は、蛇行していた流路が直線化され、東西に野猿街道と多摩ニュータウン通りが通るようになりました。南北を結ぶ道路については、100年前の地図にある道は、野猿街道の北側については、現在もほぼそのままの形で残されており、数少ない開発前の面影を残す地区となっています。川の上流の蛇行の具合や、谷戸にあるため池も、100年前の地図にも記載があります。そういった開発前の場所と、新しく造成されて建設された宅地とがともに存在するエリアであるといえるでしょう。

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まずは、京王堀之内駅の北口から探索開始。駅前は、よくある郊外の駅という感じです。街灯がちょっと変わった形をしているのがアクセントといえるでしょう。

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駅から歩いてすぐのところに、南八幡宮という神社があります。駅前の整然とした新しい街に、古い神社が出現する形です。神社自体は鳥居等は「平成3年」に建立されたようで、区画整理事業の進展とともに出来上がったものと思われますが、その隣の「秋葉大権現」と書かれた石は、江戸時代に建立されたようで、昔の神社を移築したなどの歴史があるのかもしれません。

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神社の一角に「八王子都市計画 由木中央地区 地区計画」という看板が立っています。この地図だけではスケール感がよくわかりませんが、合計200ha(合計20万m2)にも及ぶ、区画整理事業範囲を示している地図です。緑色の地区の左側は、南大沢の清水入谷戸付近に当たります。この地区は、多摩ニュータウンの整備に合わせて区画整理に加え、河川や道路の改修が進められました。

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区画整理事業で作られたニュータウン内の町は、街路は整然としていますが、新住市街地のエリアとは異なり、個人の住宅なども多く建っています。土地を買い取って全体的に開発した新住市街地は、大規模な団地等が主に立地し、区画整理事業の区域は、ニュータウン以外の街並み同様、古くからの建物も含めて残っていることもあるので、開発手法によって街並みが大きく異なっているのです。
多摩ニュータウン通りや、大栗川を超えるあたりは、すっかり都市化が進み、八王子の多摩ニュータウンでも屈指の交通量の多いスポットではないかと思います。このあたりにあまり「ニュータウンらしさ」を感じないのは、土地区画整理事業によって整備された地区だからといっても過言ではないでしょう。

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では、野猿街道の北側、寺沢地区に向かって足を進めてみましょう。幹線道路はトンネルで丘をくぐりますが、歩いて丘の上にある、「北八幡神社」を訪ねます。

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トンネルの上にある北八幡神社は、平成になってから作られたトンネル工事に合わせて移築されたようですが、灯篭などには江戸時代のものもみられ、古くからの神社を大切にしながら守ってきていることがわかります。近代的な住宅街の中にも、古くからの信仰が受け継がれています。

次に、トンネルの北側、いざ寺沢地区へ。直線の道路は、先ほど地図で説明した100年前からの道路です。道端には、道祖神や馬頭観音のような石仏が見られます。ニュータウンの近傍とは思えないようなのどかな風景です。酪農を営んでいる方もおり、古くからの生活が続いています。

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地区を横切る都道。ここだけは雰囲気が違う気がします。車で都道を走りすぎるだけだと味わえない風景が、歩いていると見えてきます。

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古い地図で「北寺沢」と書かれた地区へ。昔ながらの川が流れています。川というよりは、「農業排水路」といったほうがふさわしいかもしれません。水田を潤した水の余水が流れる水路の役割を、川が担っているようです。このあたりの谷戸を流れる川は、おそらくどこも「自然のままの小川」というよりは、田畑が整備されていたので、近代からは「農業排水路」としての役割を大体どこでも担っていたのではないでしょうか。

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大きな送電鉄塔が立っています。この送電鉄塔の持ち主は、なんと「JR東日本」。首都圏の鉄道の電力需要を賄うライフラインが、この堀之内の昔ながらの農村に立っているとは、少し驚きです。
丘を越える坂道。農村風景とともに、非常に味わい深いものがあります。車では通行するのも困難な細い山道。これが今も現役で残っている貴重な農村が、堀之内の北側には広がっています。

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寺沢里山公園も、こんな農村の中にある素敵な公園です。農業公園のような佇まいに、集会場のような管理棟があり、訪れる人を楽しませてくれます。

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そのすぐ隣にある古いお寺。灯篭や石仏は、どれも貴重な古くから大切にされてきたものばかり。しばらく訪問していると、ここが多摩ニュータウンの区域内や隣接する地区であることを忘れさせてくれます。

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里山公園の谷戸の上流には、体験田のような場所もあり、地域で大切に守られている様子です。

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里山公園の裏側は、東山の新しい住宅地。ここも、広い敷地に建つ住宅と、広い公園が共存する場所。

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住宅地の公園の裏側には、愛宕神社があります。古くからの信仰の場を守りつつ、周囲を住宅として開発したようです。神社の険しい参道と住民の歩道が共存している姿が印象的です。

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さいごに、この地区の隠れた主役、寺沢川を紹介します。上流側は古くからの農業排水路の役割を果たす水路ですが、中流は新しい道路などを施工する際に暗渠化されたようです。野猿街道付近で再び地上に出てきます。

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コンクリートで固められた都市河川のような水路となり、大栗川に合流する形になります。

【終わりに】
今回は、堀之内の北側部分を紹介しました。大栗川や多摩ニュータウン通り・野猿街道沿いの地区は、区画整理事業により出来上がった町で、普通の都会に近い様相に変わってきている状況です。その北側は、もともと新住市街地事業で開発されようとした地域であり、一部宅地化が進んだ地区もありますが、昔ながらの農村風景を色濃く残した地区もあります。古くからの信仰心などを大切にし、今も昔ながらの営みを続ける人と、宅地化された新しい街に移り住む人が、美しい里山や都市景観に癒されながら、一方で交通量の多い幹線道路に面するという、非常に不思議な場所だと思います。前回紹介した南欧風の個性的な街である南口も、京王堀之内駅の近くなので、駅から徒歩圏内にこんなに様々な風景が見られる地域というのも、珍しいのではないかと思います。古くからの農村風景の残る街と、新しい街との違いなどを歩いて感じてみてはいかがでしょうか。

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